第23話 語るべきことは
「ちょっと防音と、部屋の拡張をしてみたんですけど、狭いので気をつけてください」
泉は慣れた調子で部屋のあかりをつける。目の前に広がっているのは、複数のモニターやパソコンのキーボード、それに見たこともないような機材が所狭しと並んでいた。
確かに、若林の部屋よりは広いが、機械がたくさんありすぎて、部屋が狭く感じる。
「さっさと入るわよ」
おれは、若林に押されるように部屋に入った。
部屋に着くなり、若林が静かに黒装束をむき出しの床におろす。網を取り払い、あらためて後ろ手と両足を縄で縛った。
ずいぶん慣れてるんだな。まるで、いつも人さらいをしているみたいじゃないか。
パソコンなどが載せられているデスクから複数のチョコレート菓子をつかむと、それら全部をおれの手の中に押し付ける。
「よかったら、どうぞ」
「ありがとう。で? なんで武器が、パチンコもメンコも効かなかったんですか?」
手っ取り早く若林に問うも、黒装束の頭巾をはがしている。泉もスマホで黒装束の顔写真を撮って、パソコンに向かってしまった。
「弁慶の力じゃアレは倒せないのよ」
「でも、弁慶の武器をこいつらが使ってるんでしょう?」
若林は女性のように綺麗な顔をしている黒装束の頬を軽く叩いた。
「奪われた武器は、弁慶の父親が作ったものなの。なんとお父様は本物の陰陽師ってわけ」
一本の線につながったような気がして、顔を上げるも、弾んだような泉の声にさえぎられてしまう。
「ビンゴ。彼女は渡辺 アリサ。連続女性失踪事件の被害者ですね」
彼女? おれはゆっくりと黒装束に目を向ける。女性? 確かに小柄だが、体つきは男じゃないか。それなのに。
そこで、泉のスマホが賑やかな音を立てる。
「ああ、弁慶。開いてるから入って」
本当に肉体改造されているというのか?
つづく
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