第22話 怪異なるものと黒装束
おれの放ったパチンコの球は、たしかに怪異なるものの顔に命中はした。だが、靄が一瞬霧散するだけで、どういうわけだかヤツは消えない。
「くっそ」
また、おれへと手を伸ばしてくる怪異に、二発目のパチンコと、メンコを投げつけるも、ぎゃああああとうめき声を上げるだけで、あまり効いていないようだ。
「なんでだよっ!?」
「あたしにまかせて!!」
若林が水鉄砲をお見舞いするも、見当違いな方向に消えた。
まずい。このままだと、またやられてしまう。
「かあああああああああああ」
怪異なるものの咆哮がほとばしる。その手がゆっくりとおれへと伸ばされる。
「くそがぁっ!!」
パチンコもメンコもあたっているのに効果がない。なんでだ? このまま喰われるしかないのか!?
「待ちやがれぃ!!」
妙に甲高い声がした。後方から、小柄な黒装束があらわれて、怪異なるものにヨーヨーを投げつけた。右手にヨーヨー、左手にけん玉を持った黒装束は、手際よくコンボ技を繰り出し、怪異なるものを消滅させてしまった。
「泉ちゃん、出番よぉ!!」
「はい、来たぁっ!!」
泉は怪異なるものがいた場所から離れていた。その手にはムチのようなものが握られている。おそらくなわとびの縄だろう。
泉は、その縄を黒装束に向けて振り払うが、ヨーヨーで避けられてしまう。
だが、今度は水風船を取り出し、黒装束に投げると、破裂した水風船の中から網が出てきてからみつく。
「があっ!?」
獣じみた悲鳴をあげる黒装束だが、逃げられずもがく。だが、そこになんのためらいもなく、若林がスタンガンで黒装束の動きを止めてしまった。
「死んだのか?」
「いいえ。少しの間、眠ってもらっているだけよ」
若林は、その細腕に似合わない豪腕ぶりで、黒装束を担ぎ上げてしまった。いわゆる海賊担ぎ。
「さぁ、獲物は捕らえたわ。さっさと立ち去りましょう」
そう言うと若林の隣の部屋、泉の部屋へと向かうのだった。
つづく
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