第21話 満月の夜 2

「さぁーてぇー。泉ちゃん、今日は一緒に来てくれるんですって」


 いやその、怪異なるものを臨時職員に任せてしまっていいのかな? 保険とかどうなるんだろう?


 なんてことを考えながら、空を見上げる。時間は八時。前回は八時三十分ちょうどくらいだったから、まだ余裕があるかもしれない。


 今日もいやらしいほどの満月が煌々と輝いている。


 港に着くと、泉と合流した。


「今日は、たぶんこの辺りに出るんじゃないっすかね」

「大丈夫なのか? 泉。武器もらってないんだろう?」


 しかも、泉は怪異なるものが見える。だから、攻撃される対象ということになる。


「大丈夫っす。牛丸さんがマトになってくれるっすから」


 おいおい、お前までおれのことをマトとか言うなよぉ。


 前回は武器もなかった。初めての怪異に震えて、怖じけずいて、何もできなかった。


 肩をつかまれた時の衝撃は、今でも忘れられないでいる。


「大丈夫よ、牛丸ちゃん。武器の方から怪異によって行く習性があるから」


 とはいえ。やはり恐怖心がよみがえるし、一発一万円のパチンコの球には正直恐れおののいている。はずしちまったら、メンコを投げてみるか。正直に言うと、どっちも遊んだ経験がないんだ。


「若林さんは、今日も熱湯の入った水鉄砲ですか?」

「そうよ。だから、間違ってあたらないようにしてね」


 まさかとは思うが、一応肝に命じておくか。


 そうして、目の前に前回のような不気味な靄がかかった。ゆらゆらと揺れながら、それは、人の形になってゆく。


「どう? 牛丸ちゃん、出た?」

「はい、目の前に」


 おれはガクガクと情けなく震える膝を奮い立たせて、怪異なるものへとパチンコを向けた。


 つづく

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