第18話 笑顔
なにかがおかしい。記憶が混乱している。とりあえず若林に相談しなくては。
せかす気持ちをよそに、また辰宮と遭遇してしまった。
「おっはよーございます。あれ? 牛丸さん、もしかして二日酔いですか?」
「そうなんだ。あまり質のいい酒じゃなかったみたいで。ただ、口あたりはすごくよかったんだ」
「それで飲んじゃったんですね。そう言えば、連続女性失踪事件にも、外国の酒が関わっているらしくて。もしかして牛丸さん、さらわれたりしてませんよねぇ?」
昨日の記憶はほぼない。朝から酒を飲んで、目覚めたら今日になっていた。本当に宇宙人にでもさらわれたような気持ちになる。なんてったって、怪異なるものの存在を知ってしまったからな。
「冗談やめろよ。それに、守秘義務を忘れるな。簡単におれに情報を教えたりするんじゃない」
「でも、牛丸さん、正美さんのことが心配なんでしょう?」
正美? はて、と顔をしかめる。そんな名前の知り合いなんていないが?
おれがきょとんとしていると、辰宮はおもしろそうに笑った。
「なんで笑う?」
「いいえ。ただ、いや、なんでもありません」
辰宮はそう言うと、エレベーター前に到着した。本音を言うと、今日はエレベーターに乗りたい気分だったが、すぐに階段へ足を向ける。
「じゃ、またな」
「はい。辰宮さんもお元気で」
階段を降りながら、運転手にもらったお菓子を口に入れる。どうやらギリギリ時間に間に合いそうだ。
つづく
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