第12話 ゴミ出し

 翌朝、目がさめると澄子の顔が近くにあった。


「わぁーっ!! なんですか、一体!?」


 おどろいて額がぶつかりあったことよりも、なぜ澄子がここにいるのかおどろいて動悸が激しくなる。ここには、怪異なるものの資料もたくさんあるからだ。


「そろそろ起きないといけない時間でしょ? でも、その前にゴミ出しをお願いしたいなぁー、なんて思って」


 あわててスマホを見るも、それほど時間が過ぎていたわけではなかった。


「わかったよ。着替えるから出て行ってくれる?」

「やぁーん、牛ちゃんのいけずぅー!!」


 どっかにカメラでもしかけたんじゃないのか?


 澄子を部屋から追い払うと、鍵をかけて着替えを済ませた。


 こんなこと、いつまでつづけるつもりなんだ? 正美さえ戻ってきてくれたら、いつでも警察を辞める準備はできている。


 そうして二人で沖縄に行って住み込みで働かせてもらうんだ。もう、こんな喧騒の中にいたくなんてない。


「ねーえー。今日こそ一緒に飲みましょうよー?」


 澄子の鼻にかけた声がドア越しにまとわりつく。おれ、そんなにイケメンだったっけ? それとも澄子はおれになにかをしようとしているか、あるいはもろもろがバレてるか、そのどれかだな。


「悪い。今日も仕事で遅くなるから」

「だってぇー。ゆうべも遅かったんでしょー?」


 この家に間借りさせてもらう際、職業欄には自由業と書いておいた。その方が都合がいいし、馬鹿正直に警察でお勤めしてますなんて書く奴がいるかよ?


 ドアを開けると、澄子はわざわざ胸を強調するようなポーズを取っていた。


「ねーえー、牛ちゃんてゲイ?」


 ……答えにくいなっ。


「あさってなら休みだけど?」


 とりあえず、鼻面にニンジンでもぶら下げておくか。おれの答えに澄子はじゃあ、あさって飲みましょうっ!! とたのもしい返事が返ってきた。


「と、言うことで。行ってきます」


 おれはゆうべまとめておいた資源ごみの袋を手に取り外に出た。なんとなく湿気た空気だった。


 世のイケメンたちはゴミ捨てなんてするのかな? そんな馬鹿げたことを考えながら、慣れた手つきでゴミを捨てた。


 さて、今日は報告会か。忘れ物はないよな?


 つづく

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