第27話 野郎と2人飯(おまけ)



「よお颯流よ。これで一躍有名人だなぁ? あっははははっ〜」


「うるせえな分かってるから黙っててくれよ」


 朝のホームルームでユウキが俺と仲良いことをクラスの皆に暴露してからは休み時間になる度に精神がすり減っていて、やっと昼休みになってくれてようやく一息でつける。


 俺とクロワッサンは今俺と共に2人きりで例の絶景スポットへと向かっている。一緒に昼飯を食う約束をしてるんだが、高校生活では初めての出来事だなこれは。


「お〜確かにこりゃすげえや。山も綺麗に見えるし絶景じゃねーか」


「ああそうだろう? なんせ俺の自慢のダイニングスポットだからな」


「こりゃ1人になってでも食いに来たくなるわけだな」


「クロワッサンもたまにはここで食いに来なよ」


「おうよ、ナゴミと付き合ったら一緒に連れてくるよ」


「げっ、お前小山さんも連れてくるつもりなのかよ」


「当たり前だろ? 一分一秒でも長くイチャイチャしていたいのさ」


 確かに女を絡めとるのが特技のクロワッサンならあり得そうな愛情表現だが、それを目の前で見せつけられなければならない俺のみにもなって欲しいってものだ。


「それじゃあ食うか」


「ああ」


「「頂きます」」


 うん、やっぱり美味いなルナの手作りハム&チーズサンドイッチも……流石我が世界で1番可愛い妹だ。妹の愛情がたっぷりで食べてるだけで幸せな気分になる。


「……俺とナゴミがイチャイチャし始めても、お前とルナのイチャイチャと良い勝負になりそうだな」


「何だよ急に」


「いや別に〜? 随分幸せそうな笑顔だな〜って思ってさ。最高にニヤけてたぜ?」


「……っ」


 ああしまった、また無意識のうちに思いっきり頬を綻ばせていたようだ。


 ただこればかりはルナが可愛すぎるのが犯罪レベルよな……血が繋がっていなかったら共に世界のどこへでも旅立って俺の隣へと無期懲役の刑にしてやりたい程だ。


「まあこればっかりはどうしようもなさそうだな〜? 家で美少女とイチャコラ出来てるのは俺も羨ましい限りだが、それだとちょっと不便だなと俺は思うぜ?」


「不便? 何が?」


「だってルナはお前の血縁関係だからさ、どれだけ仲良くなろうが一線を踏み越えるのはどう足掻いてもタブーなわけだ」


「……これだからエロ動画を見てきて育って来た少年たちは……」


 女とやること成すことが全て性行為に行き着くと考えてやがる……もう少しだけでも内面の方を見てやれる男が増えれば世の女性たちも恋愛しやすくなるだろうな。


「まあまあそう言わないでくれよ、俺がエロ動画の主人公に憧れて女遊びを始めたのもあるけどさ。俺がナゴミに惚れたってのは本当だから」


「ふっ、それは嫌という程に本人にも伝わってるだろうな」


 今日だって朝はナゴミが朝に来て次第話しかけに行ったし、普段の休み時間も隙あらばユウキグループに割り込んでナゴミに執拗にアプローチかけてたからな。


 最初は警戒心MAXだった松本さん……松本も今では小山さんがクロワッサンとくっ付くように乗り気になってるし、呆れるほどの努力の賜物だなこれは。


「ああそうだろうよ。何故なら俺はナゴミを愛してるからな。絶対に来月までには落としてやるものさ、そしたら晴れて夢のイチャラブセ○クスの日々を送れるぜ!」


「結局そこに行き着くんだなお前は」


「当然だろう? 自分の愛する女と思う存分に出来るんだぜ!?」


「そんなに噴射するのが好きなんだったらマーライオンにでも生まれ変われば?」


 あっちは水だが黒沢の場合は立派な精液ポンプになりそうだからな……今この国が抱えている少子化の解決につながるだろう人間兵器に役立てられそうだ。


「おいおい颯流よ、なんでお前はそんなに射精に否定的なんだよ」


「……っ、悪かったな。はあ、今は食事中なんだからまた今度議論しないか?」


「いやもう俺はもう颯流が自分の可能性を潰す様を見せつけられてきたがもういよいよ我慢の限界だ」


「はっ? いやいきなり何のことだよ」


「良いか颯流、女の中でする射精はこの世に男性として産まれて来た最大の喜びの1つなんだよ。そしてそれはG行為なんかよりも遥かに達成感があるものだ……そしてお前は良い加減にそれを知るべきだ」


「そういうものか? だがその主張を通したければそれを証明してくれ。じゃないとそうとは信じられないな」


「いやいやそこは颯流が自力で体験してみせろよ。俺がどれ程に熱弁をしたところでただの知識は何の意味も成さない」


 随分と偉そうに主張してくれるんだな……まあ俺がそれを知らない以上は反論の余地も無いんだが。


「少なくともお前が週一ペースでやってる自慰よりは気持ちいいことは保証してやるよ」


「え……俺、今までお前に俺の◯ナニー事情を教えたことあったっけ? 俺が7日に1回抜いてることは誰にも教えてないはずなんだけどな」


「チッチッチッ、この射精ソムリエの俺にかかれば楽勝で見抜けるものさ」


「お前ってときどきエスパーなんじゃないかって思いたくなる時があるよ」


「まあ根拠を述べると……颯流のような健康的な男子高校生が今までにオ◯ニーしたことがない確率は極端に低いから必ず抜くものだ。だが颯流は中学の頃から成績がトップクラスだし顔のニキビがあまりなく肌が綺麗なことから、物凄い健康的なペースを保っているのがわかる……そしてその基準は週に一回の頻度だ、異論は無いな?」


「ああそうだが……何だか気恥ずかしくなって来たぞ」


「ああそうだろうな。それで週に一回だから溜まった分だけ抜いた時の快感に思わず腰が抜けてしまう程に物凄いのは理解出来るんだが……真実はそうでも無い」


「そうか……?」


「ああ、だから俺の価値観を共有してやるよ」


「仕方ないから聞いてやるよ」


 一体何をいうつもりなんやら。


「皆『何か』に背中を押されてセ◯クス至上主義に足を突っ込むんだ。そして大抵その『何か』は自分の意思じゃない……ましてや他人や環境に支配されて仕方なくだ」


「だからその根本的な原因の『何か』がさっきからエロ動画だっつってんだろ」


 いや俺の話など聞いてないようだな。


「ただし自分で自分の背中を押したやつの見るセックス依存症は別だ。皆その先にある何かを見ている……それは希望かも知れないし、更なる快楽地獄かもしれない。そんなの俺だってまだわからないさ……けどきっとその答えはセ○クスを繰り返した者にしかわからないんだよ」


「カッコいいようで俺には全然響かないな」


「んだよ……さっきのは俺が女遊びに励むときのモットーなのにな」


「俺には一切感慨深く感じられなかったわけだ」


「はあ、そりゃ残念だ。まあ、仮にこっち側の人間になってみたらわかるさ」


「さりげなく俺を快楽地獄へと導くような真似はよせ。それに、それはお前が自分で始めた物語だろ。話の中で俺のような価値観が180度違う人間を入れるのは結構なことだけど、そういったピュアでありたい人達を自分の正義に無理矢理吸収するのは感心しないぞ」


 特にこいつはあの小山さんに惚れてるんだからな。


 中学時代にあった過去でそういった関わりには人一倍敏感になっているはずだから、クロワッサンが先走って自分の欲求をどこまでも押し付けたらこいつの初恋が報われることは無いだろうな。


 ただ俺の方から俺の推測を勝手に話すのは気が引けるからクロワッサンが自分の力で彼女から聞き出す必要があるだろうが、まあその辺は女性経験が豊富なこいつならきっと上手く言ってくれるだろう。


「はっはっは、悪い悪い。そうだったな……ありがとう、参考にするよ」


 そう言って自分のおにぎりを食べていくクロワッサンだから俺もルナの手作りサンドイッチを口の中に入れていく。


 お、こっちのはチーズの味が違うんだな……相変わらず物凄く尽くしてくれる妹だ。


「それで? 颯流、お前木下さんとはどういう関係なんだ?」


「関係って、なに……女性で1番仲良い友達ってだけだ。だいたいあいつはクラスの皆1人1人に話しかけていたってのに、驚きすぎなんだよ……何だよさっきから」


 俺の方を不審な目で見つめてくるからさっきから微妙に落ち着かないんだが。


「『今日も私頑張るからいっぱい教えて』だっけ、あいつが朝に言ってたセリフ……さて質問タイムだ颯流。お前はあいつにナニを教えてんのかね〜?」


「……っ、こんなことに無駄に記憶力を発揮しやがって」


「ハッハッハ、お前に逃げ道は無い。さあさあ早くゲロっちまいなよ」


「言い回しが一々気持ち悪いんだよお前は。はあ……この際は仕方無いか」


 まあクロワッサンなら勝手に広めるような真似をしないと信用出来る奴だし良いか……そう思ってから俺が木下さんに出会った経緯を素直に話した。


「へ〜なるほどな。女子がよりによってブレイクダンスに興味を持つなんて相当な物好きだな」


「だから俺も最初は疑ったさ……女子がするダンスと来たらヒップホップやワックとかがスタンダードだからな」


「俺にダンスの詳しい違いはまだよくわからないけど、気をつけないとな。前々からセシルがブレイクダンスしてる場面を見てても簡単じゃないのはわかるからな」


「そうだな。まあそのための師匠だ俺は」


「俺よりも大変そうだが、頑張れよ」


「当たり前だろ」


 あいつはブレイクダンスの資質があるからな。折角のダイヤモンドが光を反射してピカピカに輝くか、腐り果ててダメになるかの裁量は師匠の俺である比重が大きい。


 俺は必ずユウキを上手いブレイクダンサーに仕立て上げてやる。




【──あとがき──】

読者の皆様へ、ここまで作者の小説を読んで下さり誠にありがとうございます。

今後の話を楽しみにしていた方々には申し訳ありませんが【親父の再婚相手が俺の幼馴染だった】という作品の執筆に集中すると決めたので連載は一旦停止させます。

また連載を再開すると決めたら近況ノートにてお知らせ致します。

宜しければ代わりにこちらの作品をお読みになられて下さい。


https://kakuyomu.jp/works/16816927860804832020


【キャッチコピー】

いけない子ですね人妻に手を出そうだなんて──パパには見せられませんね?


【あらすじ】

「お前に俺が犯せるとでも?」


執拗に俺を狙おうとするお父さんの再婚相手、つまり俺の義母──もとい元幼馴染に悪戯を辞めさせるように言い聞かせる俺。しかし甘えん坊で小悪魔な彼女は、徐々に俺の日常生活を甘い毒で侵す。


「私と不道徳な関係──近親相姦に手を出してみませんか?」


俺──冨永颯流(とみながせしる)は彼女──冨永月愛(とみながるな)の魔の手から逃がれようと粉骨砕身する。何故なら俺には好きな人──木下優希(きのしたゆうき)が居るからだ……だが彼女に対する気持ちは家に居る悪戯好きな元幼馴染に、少しずつ蝕まれていくのだった。


こともあろう事か俺のハーレム性活を現実化させるとまで言い出す月愛の正気を疑う俺だったが……もしかしたらあり得るかも……? いや無いな──多分、きっと……。

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陰キャの俺がクラスの美少女ギャルにダンスを教えることになったら、たまにポンコツ化して甘えてくる件〜週末のダンスバトル大会で賞金稼ぎするシスコンBBOYは、クラスのマドンナと徐々に心の距離を詰めていく〜 知足湧生 @tomotari0919

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