第18話
パルコーからダンジョンに侵入者がやって来たという報告を聞いた熊翔が光の板を呼び出して下の階の様子を映させると、彼は光の板が映し出す光景を見て思わずうめき声を出す。
「おいおい……! なんだかメチャクチャ数が多いんだけど、どういう事だよ?」
熊翔が言う通り下の階にいる侵入者はすでに数十人おり、それどころか新しい侵入者がゲートから次々と現れてきて、侵入者の数が百人に届きそうになったところでレオーラがあることに気づく。
「この侵入者達が着ている鎧……確かエーメイ公国の兵士の正式装備ですわね」
侵入者達は全員同じ鎧を着ており、レオーラはその鎧に刻まれている紋章を指差して断言する。
「エーメイ公国?」
「はい。私達がいた世界にあった国で、私達がこのダンジョンに転移したゲートの情報を得たのもエーメイ公国でした」
「加えて言えば、エーメイ公国の大公は余命が短く、寿命を伸ばす薬や魔術などに深い関心があると以前から聞いていますわ」
熊翔の質問にパルコーが答えて、それにレオーラが付け加えて言うと、彼は目に見えて苦い表情を浮かべた。
「……それって何か? 死にかけの国王が不老不死のお宝の噂を聞きつけて、それを手に入れるために兵隊達をここに送ったってことか?」
「まず間違いなくそうですわね」
レオーラが頷く熊翔はいよいよ頭痛を感じて頭を抱えた。
「〜〜〜! ふっっっざけんなよ、マジで! このダンジョンのアーティファクトはそんな都合の良い物じゃねぇんだよ。アレがこのダンジョンから解放されたら、冗談抜きで世界の一つくらい一時間で滅ぶぞ? レオーラもパルコーも下の兵隊達も、どいつもこいつも自殺志願者なのかよ?」
「あ、あの……旦那様? 私もレオーラさんも詳しく知らないんですけど、このダンジョンのアーティファクトってそんなに危険なんですか?」
光の板に映っている侵入者の兵隊達を見ながら苛立った言う熊翔だったが、恐る恐る聞いてくるパルコーの言葉に、彼は彼女とレオーラがアーティファクトについて半分以下の情報しか知らないことを思い出す。
「……ああ、そうだ。いい機会だから二人に教えておく。
このダンジョンに封印されているアーティファクトの名は『
遥か昔、こことは別の世界に存在した光と生命と災いを司る神が創造したとされる、鏡のように磨かれた青銅の全身鎧。
装着者は光を浴びている限り永遠の命と若さが得られるが、鎧が反射した光を受けた全てのものはありとあらゆる厄難と病と呪いと毒が襲いかかってきて瞬く間に死滅する。実際にそれが原因でこれまでにいくつもの世界が滅んでいる。
だからこのダンジョンは一切の光を通さない暗闇なんだ」
ダンジョンとはアーティファクトの封印をより強固なものにする目的で、アーティファクト自体の力とダンジョンマスターの魂の形を利用して創造した建造物である。そしてダンジョンはアーティファクトと同じか正反対の属性を持つことで、アーティファクトの力を無効化するのが基本であった。
熊翔のダンジョンは、アーティファクトと逆の属性を持ったダンジョンの分かりやすい例だと言えるだろう。
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