第6話

「ここが俺のダンジョンか……」


 ゲートを使い自らのダンジョンに転移した熊翔が周囲を見回すと、そこは先日見た夢と同じ石造りの通路だった。通路には明かりの類いが見当たらず一切の光が無いのだが、それでも彼には周囲の様子がはっきりと見えていた。


「暗闇でも見える目……いや、自分のダンジョンの様子を認識しているのか? これもダンジョンマスターとしての力ってやつか。だったら次は……」


 そこまで呟いて熊翔が目の前の空間を見て意識を集中すると、空中に光の板らしきものが出現する。この光の板もダンジョンマスターが持つ能力の一つで、自分のダンジョンの様子や能力を表示するというものであった。



【迷宮】???

【主人】小森熊翔

【秘宝】厄病呪毒若命鏡鎧

【階層】1

【成長】3/10

【脅威】C-

【MG】???(18/18)

【CG】0

【FG】0/0

【設備】光と癒しを否定する闇

【称号】新たに産まれた迷宮

【道具】なし



「まるでゲームのステータスだな……。ダンジョンコアを作ったのって、地球が誕生する前の人間だったよな? 一体どれだけ時代を先読みしているんだ? まあ、分かりやすくていいけどさ……」


 苦笑しながらも熊翔は、光の板に表示されている自らのダンジョンの情報に目を通して、インターネットで知ったダンジョンの能力に関する知識を思い出す。


 まず光の板に表示されているステータスの上にある【迷宮】と【主人】に【秘宝】は、ダンジョンとダンジョンマスター、そしてアーティファクトのことだ。【迷宮】の部分が「???」となっているのは、まだ熊翔がこのダンジョンの名前が決めていないからだろう。


 次に【階層】はそのダンジョンに何階層あるかを意味していて【成長】は後どれくらいでダンジョンが成長するかを表している。ダンジョンは成長すれば内部の構造が変わり階層も増えると、ダンジョンアイランドで生活しているダンジョンマスターがインターネットに書き込んでいた。


「この【成長】の欄にあるこの三と十の数字……左にある三が十になればダンジョンが成長するってことか? ……しかし、できたばかりのダンジョンだから【階層】が一なのは分かるが、何で最初から【脅威】が『C-』もあるんだ?」


 ダンジョンのステータスにある【階層】と【成長】の欄を見て腕を組んで考えていた熊翔は、次に【脅威】の欄を見て思わず呟く。


【脅威】とはダンジョンがどれだけの脅威であるかを示す欄で、これが高ければ高いほど迷宮が攻略困難な上で危険であるとされている。ダンジョンマスターが書き込んだインターネットの知識によれば【脅威】は上からAからEの五段階を更にプラスとマイナスに分けた十段階があり、インターネットに書き込んだダンジョンはこの【脅威】をゲームに例えて分かり易く説明していた。


 E…序盤で挑む初心者用ダンジョン。


 D…序盤から中盤の境目、初心者から中級者への登竜門的なダンジョン。


 C…中ボスと戦ったりするなどの重大なイベントがある中盤から終盤辺りで挑戦するダンジョン。


 B…ラストボスが登場するラストダンジョン。


 A…裏ボスが登場するラストダンジョン攻略後に挑戦出来る隠しダンジョン。


 そして誕生したばかりのダンジョンの【脅威】は「E-」か「E+」ばかりで良くても「D-」のはずである。最初からダンジョンの【脅威】が「C-」のダンジョンマスターは、今まで聞いたことがなかった。


「【脅威】がいきなりC-てことは、このダンジョンには敵が入った瞬間に即死するような罠があるってことか? それとも『ゴーレム』がよほど強力なのか……ん?」


 熊翔がそこまで言ったところで、彼の頭上から鳥の羽音のような音が聞こえた気がした。

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