第7話

「何だ?」


 頭上から聞こえてきた音に熊翔が上を見上げると、通路の幅が狭いのに反比例するように高い天井から小さな影がいくつも降りてきた。


 天井から降りてきた小さな影は胴体の部分が機械と一体化したような蝙蝠で、腹部にある頭部の口よりも大きな口が特徴的であった。


 熊翔は自分の頭上を飛ぶ奇妙な蝙蝠の群れを見ながら呟く。


「この蝙蝠達……もしかしなくても、コイツらが俺の『ゴーレム』か?」


 ゴーレム。


 それはダンジョンマスターに与えられた様々な力の中で最大の能力で、一言で言えばダンジョンを守るモンスターである。


 ゴーレムは自分が生まれたダンジョン内で十全の状態で戦える身体能力とアーティファクトに秘められた力を元にした特殊能力を持ち、そのダンジョンによって姿も能力も全く異なっている。そして全てのゴーレムは共通して自分のコピーを作り出す機能を持っており、ダンジョンマスターは基本的にこのゴーレムの数を増やして自分のダンジョンを守る戦力を増強するのだ。


「コイツらは一体どんな力を持っているんだ? 確かこれがゴーレムの情報だったな」


 熊翔は奇妙な蝙蝠の群れ、自分のゴーレムの詳しい情報を調べるため、自分の前にある光の板に表示されているステータス画面の【MG】の文字を指で触れる。すると光の板に表示されておたステータス画面が変化した。



【名称】???

【戦力】B+

【耐久】D-

【速度】A+

【器用】E+

【知能】E+

【繁殖】B-



「これは何と言うか……。見事なまでに戦闘に特化したステータスだな」


 光の板に新しく表示されたのはゴーレムの情報で、熊翔はゴーレムのステータスを見て思わず呟く。


 ゴーレムのステータスは、ダンジョンの【脅威】と同じくA+からE-の十段階あり、熊翔のゴーレムは彼が言う通り、敵と戦うための能力値は非常に高いが逆にそれ以外の能力値は低かった。


「しかし何でコイツらの【戦力】ってこんなに高いんだ?」


 ゴーレムのステータスにある【戦力】は敵と戦い倒す能力を表す能力値で、これには身体能力だけでなく特殊能力も含まれている。そして蝙蝠の群れの小さな身体には、とても敵を倒せるだけの身体能力があるようには見えなかった。


「やっぱり何か特殊能力でもあるのか?」


 熊翔は一度ゴーレムを見てから光の板に視線を戻すと、ステータスと一緒に表示されているゴーレムの情報に目を通した。するとやはりゴーレムには敵を倒すための特殊能力があり、特殊能力の内容を理解した彼はどこか納得した表情となる。


「あー……。なるほどなるほど? 確かにこの特殊能力なら【戦力】が高いのも納得だ。中々イヤらしい特殊能力を持っているじゃないか。……そうだ」


 光の板を見ながら一人呟く熊翔は、そこで何かを思いつき顔を上げると自分のゴーレムである蝙蝠の群れに話しかける。


「お前達の名前……『カラミティーズ』というのはどうだ? お前達の特殊能力と戦い方を考えるとピッタリの名前だと思うんだが?」


 話しかける熊翔だが当然ながら蝙蝠の群れからの返事はなく、代わりに光の板に表示されているゴーレムのステータスに一つの小さな変化が生じた。



【名称】カラミティーズ

【戦力】B+

【耐久】D-

【速度】A+

【器用】E+

【知能】E+

【繁殖】B-



 光の板に表示されているステータス画面の【名称】の欄。先程まで「???」であったのだが、今では熊翔が付けた「カラミティーズ」の名前となっていた。

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