第8話 幼なじみ召喚!?

 私はヴィクターに聞けば色々確かめられるだろうと、彼が来るまで大人しく待っていた。



「久しぶりね」


「あぁ。ちょっと見ない内に……どんな心境の変化だ?」



 私の事を上から下まで眺めて、彼は小首を傾げた。



 それはそうだろう。


 今日の私はこのパーティーで何かあると知っていたから、殿下の婚約者というより自分の好みを優先して、淡い水色の清楚なドレスを着ているし、全体的にそれに合わせている。


 殿下と婚約する前の私に戻しただけなのだけど、いつも殿下の婚約者としてキリッとして威厳さえ漂わせる大人びた装いを見慣れた者は驚いていた。


 だけど以前の私を知っているヴィクターからすると、なぜ私が『自分らしい本来の姿』に戻そうと思ったのかが気になるらしく、少し悩ませてしまったようだ。




「もう殿下の婚約者として認められるとか、そういうのは考えなくても良いかなって……」


「ふーん」


「似合わない?」


「似合ってるけどね……」




 まだ何か言いたそうにしているヴィクターだが、無駄話をしている場合じゃないと気が付いたようで、コホンと咳払いをしつつ話を戻した。




「それより、今まで知らんぷりしてたのに、どうしたんだよ?」


「それは……ごめんなさい」




 私は素直に謝った。


 彼の協力が欲しいのなら、まずはここから始めねばならない。


 なぜかと言えば、正直ヴィクターが面白くないと思っていると知りながら、家や王家の意向に歯向かわない事を選び、彼から距離を置いていたのは私だから……。


 そして自分が困った時にランプの精のごとく急に呼び出したので、実は無視されるかもしれないとさえ思っていたのだ。


 だから彼がこんなにあっさり協力の姿勢を見せてくれるとは、嬉しい誤算だった。




「それはもう良いから。何か聞きたいんだろ? 早く聞けよ」




 クラウン殿下が苦手で、側近になりたくなかったこの灰金髪アッシュブロンドの幼なじみは、ここでも目立ちたく無いのだろう。


 早く済ませて欲しいとばかりに急かしてくる。




「えーと、じゃあ確認だけど……チャボットって、三年前から王宮で飼育している、あのチャボットで間違いないの?」


「……そうじゃないか?」


「でも、あの子が亡くなったのは二ヶ月も前の話よ? 何で今?」


「いや、殿下は先週亡くなったって言ってたぞ?」


「え?」




 私は思わず声を上げ、慌てて口元を扇子で隠した。

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