第3話 徴の贖罪
ハルバラの母星に還ってからの日々は、ひたすらに永かった。彼女は、王宮の一室に幽閉させられた。彼女は、鉄格子の嵌まった窓のうちで、はじめは抵抗と憤慨を露わに暴れ、やがて諦めが心が満ち満ちると、その日その日をただ漫然と暮らした。
翻って、新惑星の植民は難航を極めた。未知の生物や流行り病が、新天地を踏んだ臣民を苦しめた。それでも、帝国は女王の威光に掛けて、その星に人々を送り込むことを止めなかった。半ばそれが強制となっていく過程で、いつしか、臣民の新天地への失望は、帝国への叛逆の息吹と姿を変える。
それが革命の狼煙となって、帝国全土に発火したのは、あの
王宮になだれ込んだ民衆は、刃物で王宮に仕える人々を切裂きながら、女王を探しあてようと躍起になり、鬨の声を上げる。
外の様子も知らされることもなく、永い時放置されていたハルバラは、その状況を知るよしもなく、聞こえてくる激しい物音やかつての同僚の断末魔に、ただ、怯え、幽閉された部屋の隅で震えていた。
やがて、唐突に部屋のドアが破られ、民衆がハルバラを取り囲む。
「なんだ?! この女は?」
「王宮の者だろう、構わない、斬っちまえ」
民の刃物に追いかけ回されながら、老いたハルバラは必死に叫んだ。
「違います、私は、私は、ずっと助けを待ち望んでいました……!」
革命軍のリーダーである青年は、ハルバラのあの
新天地での
「そうか、お前は犠牲者でもあるのだな。だが、欲に溺れて、自らの身を売り、民を欺いた罪は重い。お前がその役目を断れば、今日に至る歴史も変わっていたかも知れぬ」
ハルバラの顔色がさっ、と青く変わった。彼女は必死に抗弁する。
「そんな……断ったら、きっと、私に、命の保証はなかったのです……!」
「そうだな、ならば、俺も命までは取らぬことにしよう。だが罪は罪だ。その報いとして、その罪深い両足を切り取ることで償いとしろ!」
青年の声は容赦無いものだった。そして、呆然とするハルバラに、彼は過酷な宣告を告げる。
「明日、女王をギロチンに掛ける。あの女の隣で、お前も民に許しを請え。女王からは、首を、お前からは、足を、その刃で奪い、もらい受ける。そして、あの懐かしい
半狂乱になったハルバラが連行されていく。その後ろ姿を見て、革命軍のリーダーは、ただその場に一人だけ残した年長の腹心に零した。
「まさか、あれが、彼女の足跡だったとはな。しかし、あの新惑星での
「それが人間の歴史というものですよ、リーダー。あまりお気になさらず」
青年はそれを聞いて、静かに頷くと、明日の
徴(しるし)の罪状 つるよしの @tsuru_yoshino
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