第50話 悔恨

 中学時代はパソコン部。高校時代はサッカー部と銘打った帰宅部。そして大学生。どこのサークルにも属さず、特に運動もしていない。

 こんな僕の脚力なんてたかが知れたもんで、走り出してすぐに自分の足が信じられないくらい重たく感じる。

「飛鳥の家は……」

さっきまで駅前にいたんだから、バスに乗るとか、電車で最寄りまでとか、そんな選択肢も十分にあったはず。でも、後悔先に立たず。あの時のボクの頭の中には交通手段なんてものはすっぽ抜けていてあったのはただ“飛鳥に会いたい”という純粋な気持ちだけだった。

「ハァ……」

吐く息は真っ白で、生温かかった。そして一気に吸い込んだ空気は、肺から内臓全てを凍てつかせてしまいそうなほどに冷たかった。

「頼む。家にいてくれ!」

信号が変わったのを確認して、僕は四駅先にある飛鳥の家に向かって、鉛玉でも入っているかのような重たい足を全力で動かした。

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