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 そうだとしたら緊張するぞ。

 迂闊な思考はしない方が無難だ。


 いやいや、思考しないとか無理だろ。


「にっ、日本語・・・話せる・・んですか?」


 やはり答えない。

 本当に、こい・・この方が話したのか?


 何がなんだか分からない。

 今、宇宙人・・さんと目が合っているのかすら分からない。

 突然現れて一歩も動くことなく、ただ突っ立っているだけだからな。

 得たいの知れない恐怖を感じる。

 万が一にも暴れ出す恐れもあるし、迂闊な行動や言動は出来ない。


 慎重にいこうとか、そんな思考も読まれているのかな?


「ど、ど、どうして私の家へ・・来たんですか?」


 宇宙人さんは答えてくれない。

 愛子の件もあるが、僕には今、宇宙人さんとの意志疎通が大事だ。

 これは・・・・もしかしたら、僕が望んでいた事かも知れない。

 平々凡々な退屈な毎日に嫌気がさしていた僕に、非日常的な物語の前触れでは無いだろうか?


 こんな非現実的な事はそうそう起きない。

 いやいや、普通に暮らしていても間違いなく起きないだろう。

 

 高揚しているのが分かる。

 不謹慎とかモラルとか、そんな建前なんかより好奇心が前へ出ている。

 僕は心なしか浮き足だっていた。

 平凡な毎日に終止符を打つような気がして・・・


 望んでいた現実。

 平凡で退屈な毎日が終わるような感覚。

 愛子が亡くなって・・・・いや、そうじゃない。

 愛子が死んでくれて解放された気持ちでいる。


 宇宙人さんの言う通り、僕が望んでいた事なのかも知れない。

 愛子の事は嫌いではない。

 性格に多少の不満はあるものの、憎いとかそういった憎悪的になる程では決してない。

 多少、腹が立つ事案もあったりはするが、別れたいとか、死んで欲しいとか、そんな風に大袈裟には思ってはいないし、考えた事もない。

 冗談の範疇で軽はずみに死ねとか思う事はあっても、本気では思っていない。


 だけど、結婚して、その先の未来を想像すると、どうしても気持ちが沈んでいた。


 感情がスカスカと抜けていく感覚。

 後の未来を考えるだけで絶望していく。

 子供を作り、育て、不景気になっていく日本で裕福とはいえないが当たり障りの無い平々凡々な毎日を送る事に負の感情が滲み出る。


 そんな未来に、そんな普通の人生に何の価値があるのかと考えてしまう。 


 それが普通。それが現実と誰が決めて誰が納得しているんだろう?

 発想が鬱よりだからこんな考えに至っているんだろうかと疑問に思う事もあるが、それでも前向きに捉える事が出来ない日々。

 

 そうだ。あいつもこんな心境だったのかも知れない。

 ふと思いだした。

 

 前橋築希マエバシキズキの存在。

 高校の頃、仲が良かった友人の築希が不意に頭に浮かんだ。

 イケメンで周りからも慕われいた、僕には過ぎた友人。

 本来なら、この前の飲み会にも参加していたであろう友人の築希。

 チョクよりも前に仲が良くなり、意気投合して友達になった高校時代の友人。


 そいつは自殺した。

 自殺の意思を一切感じられなかったから、止めようが無かった。



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