俺達が世界を癒す

「なんだ?意味が分からないぞ?」


「恐らくあれは女性型ドラゴンですわ。女性型は魔法使いと同じで遠距離型ですが、人型のまま戦うのは後期型の証拠!同じドラゴンでも最後に作られた後期型は強力ですわ!」


「ドラゴンは味方じゃないのか?」


「邪神の子に操られているのでしょう!」


「恐らくその通りですわ!倒さねば、ノアワールドが崩壊しますわ!」


「行ってくる!」


 俺は空を走って空中に居る女性型ドラゴンに迫った。





 俺が迫ると、女性が目を向け、手から光を放ってくる。


 俺はギリギリで躱し、【デスモード!】を発動させる。


 デスモードで強制的に加速し、女性型ドラゴンに迫る。


 俺は禁じ手を使った。


 【デスモード】と【インパクトボム】の重ね技だ。


 一定時間能力を超ブーストさせるデスモード。


 更に必殺技のインパクトボム。


 この2つを同時に使えば体が耐えられない。


 だが、関係ない!


 俺はミシミシと骨がきしむのを感じながら敵を叩き落した。


 地面に轟音が響き敵が落ちてクレーターを作る。


 さらにそこにもう一発叩き込む!


「インパクトボム!」


 ドラゴンが動かなくなった。


 腕は無事。

 インパクトボムとデスモードを同時に使っても腕がある。


 俺は自身の成長を実感した。


 俺は自身の体をヒールで一気に回復させた。





 エリスは歓喜した。


 セイが一瞬でドラゴンを倒した。


 神話の時代、【ドラゴン】【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】【魔王】すべての英雄が解析され対策を取られて来た。


 だがセイの戦い方はあまりにも特殊!


 それが邪神を倒す切り札になるだろう。


 英雄の中で最強の力を持つドラゴン。


 その中でひときわ強い後期型をあっさり倒したのだ。


 私が、私が命を使ってでも、セイを助ける時!


 セイならドラゴンすら使い魔に出来る。


 その為ならわたくしの命は安い!








 俺の元にみんなが駆け寄ってくる。


「そのドラゴンと契約するのですわ!使い魔にする事で、魅了を打ち消すことが出来ますのよ!力を持つセイだけが出来ますわ!」


 使い魔契約は使い魔より主人が強くなくてはいけない。


 エリスが俺とドラゴンの手を取って魔法を使う。


 俺の左手の甲とドラゴンの左手の甲に紋章が浮かび、使い魔契約が成立した。


 エリスが力を使い果たして倒れる。





 ◇





 目を覚ますと部屋の天井。


「わたくしは、生きていますのね」


「エリスが起きたよ!」

 アイラの大声で皆が集まり、アイラは抱き着いて来た。


 セイが私にデコピンをした。


「こら!お前死ぬつもりだっただろ?魔力の流れを見れば分かるんだ」


「何故、生きているのでしょう?不思議ですわ」


「王都の周りの魔物を倒した時に生命力を吸収して大幅に能力が上がった。それが原因だろう。俺の力も上がっている」


 セイは自分の手を握った。


「ああ、ほっとしたらお酒が飲みたくなりますわ」

「駄目!エリス悪い子!病人、お酒駄目」


 あまり言葉を話さないマリナが怒ってくる。

 でもそれが居心地いいい。


 マリナは怒った顔とは裏腹に私の手を両手で握っていた。


 涙が出てしまう。


「そう、ですわね。それでは、フルーツを頂きますわ。喉が渇きましたの」


「今日はゆっくり休め」





 ◇






【次の日】


 後期型女性ドラゴンが目を覚ました。


 俺は使い魔にした後すぐドラゴンに回復魔法をかけたが、危なく殺す所だった。


 黒目黒髪で頭の2本角と腰から生える翼以外は人と同じ姿で、20才ほどに見える。


 非の打ち所が無いほど見た目が良く、ほほ笑む姿も魅力的だ。


「僕が操られて迷惑をかけてしまったようだね」


「知っている事を教えてくれ」


「え~。自己紹介の前にそれかい?」


 そう言われて全員が自己紹介した。


「うん、よろしくね。僕の名前が無いから、ご主人様のセイが名前を付けてよ」


「ご主人様!」

 その言葉を聞いたサーラが何故か叫んで吐息を荒くした。


「じゃあ今からドラコな。知っている事を教えてくれ。俺も含めて外の世界が気になっている。皆に知らせる必要もある」


 ドラコはまじめな顔になった。


「うん、名前の付け方は適当で気になるけど、外の様子を話すよ。と言ってもどこまで知っているんだい?」







「……という認識ですわ」


「なるほどねえ。外の世界の邪神の子4体はいまだ健在で、ノアワールドの故郷の国【ヤマト】は全滅さ。でも残った国がまだ抵抗を続けているよ。と、いっても負けるのは時間の問題だと思うよ」


「外に人が居るのか!」


「いるよ。でも人の領域は世界の3割以下になってるんじゃないかな?」


「いや、全滅していないだけで十分だ」


「それと、このノアワールドは邪神の子1柱にすぐ攻められる可能性があるよ。僕が戻らず、おそらく今はここを監視してるんじゃないかな?」


「そうか。準備する余裕はなさそうだな」


「セイ、おそらく、邪神の子を倒せるのはあなただけですわ」


「僕も手伝うよ。と言うより僕を駒のように使ってよ」


「はあ、はあ、駒のように」

 サーラが吐息をあげる。


「所で、凄いね。ここに居るみんなから強力な魔力を感じるよ。ノアワールドの人間は皆強いのかい?」


「いや、ここに居る者が最強戦力だろう」


 魔物の総攻撃で一気に俺達は強くなったのだ。


 エリスですら勇者を超える力があるかもしれない。


「はあ、邪神の子4柱か」


「大丈夫、死ぬまで僕が盾になるよ」


 俺のため息にドラコが俺の手を握った。


「私も一緒に戦う!」

「わたくしも居ますわよ」

「セイ、私が、助ける」

「私も喜んで奉仕します!」


 みんなが手を握ってくる。


「ちょ!多い多い!」


 でも、気がまぎれた。


「夜のお供も大歓迎さ!」


 みんなが騒ぎ出してしばらく収拾がつかなくなった。





 冴えない人生だと思っていたけど、いつの間にかみんなに囲まれて、世界を癒す戦いが始まるようだ。


「邪神の子を倒すぞ!」


「「おーーーーー!!」」


 それはまだ続く、神話の物語。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「笑えばいいと思うよ」と倒れるまで【笑顔で回復魔法】を強要されるブラック治癒士ギルドを離れ、冒険者になったら、覚醒して、ハーレムまで作れたので、幸せすぎてどうしたらいいか分からない ぐうのすけ @GUUU

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ