総攻撃

 王は安堵する。


「これで殺人鬼と神の手の問題は解決できる」


 殺人鬼の正体が神の手の指導者ガンダで、しかもその正体は魔人だったのだ。


 瞬く間に噂は広まり、神の手はおとなしくなった。


 これで魔王擁護派の王が力を取り戻している。


 外套を着た男が急いで王に駆け寄る。


「魔物の軍団が!王都に迫っています!」


「到着までどれくらいだ?」


「数時間ほどです!すでに、防壁の上から視認できる所まで迫っています!」


 魔人の目的は外の見張りを王都の中に向けさせることにもあったのか!


「セイとガイを呼び戻せ!」


 王城はあわただしく動き出す。





 ◇




 魔物は王都の近くで一旦停止し、3つに分かれた。


 王と騎士隊長は眉をひそめる。


「何故真っすぐ攻めてこないのだ?」


「分かりません・・・・・まさか!この王都を完全に包囲し、一気に攻め込む気では!?」


「そうかもしれん。あのガンダが魔人の正体だったのだ。逃げることも許さず、確実に皆殺しにするのだろう」


王と騎士隊長は声を小さくして会話を続ける。


「この戦い。勝てると思うか?」


「王都の戦力だけでは無理です」


「セイとガイ達、王都の外に居る冒険者が合流したらどうだ?」


「分かりませんが厳しいでしょう。魔人が5体確認されています。魔人に対抗できるのがセイだけです」


 厳しいか。


 王は覚悟を決める。





 ◇




 魔人は王都の周りを包囲し、ガンダが雄たけびを上げると、すべての魔物が王都に突撃を開始した。


 その頃、セイの元には王の手の者が駆けつける。


「今すぐ王都に戻って欲しい!」


「どうした?いまみんなで食事中だから終わってからでもいいか?」


「すぐ来てくれ!王都が魔物に包囲され、5体の魔人が確認されている」


「すぐにガイと合流して王都を目指すのですわ」





 ガイと合流し、王都を目指すが、王都の周りを光の壁が覆う。


「あれは!王が光の壁を使いましたわ!急いで魔物を倒すのですわ!」


「光の壁があるんなら皆大丈夫なんじゃない?」


「あの力は諸刃の剣です。使えば使うほど人類に不利に働きますわ」


 ノアワールド全体を覆っている光の壁に比べれば、王都を覆う光の壁は小さいし大したことは無いように思う。


 あれを使ったくらいで何が不利になるんだ?


「良く分からないっすけど、すぐに向かうっすよ」


 その通りだ。


 考えている時間は無かったな。


 




 王都の周りを魔物が囲み、光の壁に攻撃を仕掛け続けていた。


「エリス、光の壁はしばらく持つのか?」


「あまり攻撃を続けられると、光の壁は消えますわ」


 そこにマリナが前に出る。


 魔物に魔法をかけると、魔物が同士討ちを始める。


「混乱の魔法か」


 マリナがこくりと頷く。


「今の内に、俺達で魔物を倒すっすよ!」


「「うおおおおおおお!」」


 冒険者達が混乱した魔物に突撃し、後ろから治癒士が冒険者の傷を癒していく。


 大量の魔物をハイペースで倒し、皆がその生命力を吸収していった。


 マリナの元に恐ろしく早い人影!


 いや、魔人か!


 魔人は手だけがはさみのようになっており、一直線にマリナを狙う。


 魔人に俺のメイスを叩きこむ。


 魔人はメイスを両手のはさみで掴んでガードする。


 こいつ!動きが早い!


「魔王は生きているか。出来れば人間に殺しておいてもらいたかった」


 俺はマリナの前に立つ。


「エリス!サーラ!アイラ!マリナを守って一緒に行動しろ!」


 俺はそう言うとはさみの魔人にメイスを叩きこむ。


「その攻撃はさっきも防いだ!」


「インパクトボム!」


 魔人の体が爆発するように四散する。


 セイの攻撃によりガンダは一瞬で倒された。


「すごいよ!セイ!」


「強くなっていますわね!」


「大変です!ガイとジャンヌが魔人に苦戦しています!」


「分かった。すぐ向かう」




 魔人が冒険者を倒していく。


 人間の男の姿にに羊の角を頭から生やし、指揮者のような白いスーツと指揮棒を持っていた。


「お前たち、眠るめえ!」


 魔人が指揮棒型の杖を振ると、冒険者が倒れる。


 倒れた冒険者を蹴り上げ、殴り、倒していく。


 白いスーツは血で染まっていった。


「止めるっすよ!」


 ガイが剣を打ち込むが、魔人が指揮棒を振ると、ガイは一瞬意識を失う。


 その隙に魔人が拳を打ち込む。


 ジャンヌ回復されつつガイは何度も羊に攻撃を仕掛ける。


「まずいっすよ!このままじゃ、ずっとあっちのペースっす」


 ジャンヌが叫ぶ。


「攻撃を続けてくれ!魔力が切れるまで回復し続ける!」


 ガイが攻撃を続けなければ冒険者が殺され続ける。


 そこにセイが現れあっという間に魔人を倒す。


「ガイ!ジャンヌ!みんなを守りながら後ろからついて来てくれ!」


 俺は前に出て魔物を倒す。


 後ろからエリス・サーラ・アイラ・マリナが残った雑魚を倒す。


 俺達5人はありえない速度で倒した魔物の生命力を吸収し、強くなっていった。





 ◇






 俺は前に出て戦い続けた。


 すべての魔人を俺が倒し、残った魔物も一掃していく。


 だが、王都を守る光の壁が消えた。


「ああ!間に合いませんでしたわ!」


 間に合わない?どういう事だ?











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