殺人鬼の正体

 殺人鬼事件で多くの治癒士が命を落とし、殺人鬼のターゲットは治癒士だけではなく、他の民衆にも広がっていった。


 ジャンヌの呼びかけに応じず、王都に残った治癒士はほぼ殺され、ポーションの生産は止まった。


 更に王都は神の手によって王への疑念が高まる。








 ライガは冒険者になったものの、働きはパットせしなかった。


 酒を片手に街を一人で歩く。


 私は賢者なのだよ!


 私への扱いが悪すぎるのだよ!


 ライガは酒に逃げる。


「ここで何をしている!」


 数人の兵に呼び止められた。


「ただ歩いているだけなのだよ」


「聞いていないのか?殺人鬼が出没している。狙われるぞ!」


「ふん、私は賢者、殺人鬼など私が倒すのだよ!」


「危険だ!」


 横の兵士が制止する。


「止めとけ、こいつは賢者ライガだ。何とかすると言っている。ほおっておけばいい」


 ライガは嫌われている。


 兵の注意すら無視したのだ。


 ライガは殺されてもかまわないという考えも人間もいる。


「私1人で、倒すのだよお!!」


「な?ほっとけって」


 そうしている間にライガは走ってその場を離れる。


 説教はたくさんなのだよ!


 冒険者ギルドでも、ここでも説教ばかり!


 たまったものではないのだよ!


 そこに男が現れる。


 フードを目深に被り、まるで体を隠すような服装をしていた。


 だが見覚えがある。神の手の指導者。


 ガンダだ。


「ガンダか。道の前に立たれても邪魔なのだよ!」


 ガンダは口角を釣り上げた。


「邪魔ではなる!何故なら、お前は死ぬからだ。死人は歩くとこもしゃべることも出来ん!」


 ガンダの両腕がはさみに変形し、顔の形も別人へと変わっていく。


 右腕のはさみによってライガの酒瓶と腹を切り裂く。


「ぎゃあああああああ!!!!!」


 ライガは反射的に雷撃を放った。


 夜の街に電撃が光り辺りを照らす。


 雷撃の光が止むとライガは奇声を上げつつさっきの兵の元に走る。


「たああすけるのだああああ!!!!!!}


 兵が駆けつけるが、殺人鬼はライガを狙う。


 ライガは奇声を上げ続ける。


 ライガは雷撃を放ち続ける。


 兵を巻き添えにしようとお構いなく奇声を上げ、雷撃を放ち続ける。


 これによって兵士や騎士が集まってくる。


「あの殺人鬼の正体は神の手のガンダなのだよおおおおぉ!!!魔人なのだよおおぉ!」


「ガンダの正体は魔人なのか!?」


「確かに変身するのを見たのだよ!!」


 その言葉を聞いた魔人はライガだけではなく兵士もターゲットにする。


 その隙にライガは空に向かって雷撃を放つ。


「は、早く私を助けるのだあああ!!」


 ライガは自身が生き残るため頭をフル回転させ、立ち回る。


 兵士が死のうと関係ない!


 私が1番大事!


 ライガの行動によって多くの兵士と騎士が集まってくる。


「あの魔人の正体は神の手の指導者!ガンダなのだよ!」


 騎士が風魔法で音を鳴らし、上空に光魔法を放つ。


 そこに騎士隊長が駆けつけ魔人に剣撃を食らわせるが、魔人は右手のはさみで攻撃を受け止め、左手で騎士隊長を攻撃する。


 騎士隊長はバックステップで素早く下がるが、その隙に魔人は分身を使う。


 2体の分身が現れるが、魔人は屋根に上って逃亡する。


 これにより殺人鬼の正体が明らかになるが、神の手の指導者、ガンダはすでに忽然と姿を消していた。




 ◇





 ガンダは王都から脱出し、王都を眺める。


「くくくく!馬鹿な人間どもめ!これで治癒士は殺した。次の魔物の侵攻は止められない」


 ガンダは鑑定スキルと感知スキルを持ち、治癒士を容易に探し出し、始末することが出来た。


 そして民衆を煽って争わせ、妨害工作をする事で内部から王都を弱らせる。


 誤算だったのがライガのしぶとさだ。


「雑魚だと聞いていたが、最近強くなったのか?」


 実際ライガの戦闘力はそこまで高くない。


 だがライガは、自身の為なら他者はどうなっても良いという考え方から、判断のスピードが異様に早かった。


 素早く電撃を放ち、周りの兵士に魔人の正体をばらす事でライガだけが狙われる状況を防いだ。


「侵攻を始めるか!」


 ガンダは口角を釣り上げた。



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