王都を出た者たち

 ワールドヒーラーとエリスは王都を出て、王都の周りの魔物狩りをする事にした。


 決め手はマリナの「人、助ける」という発言だった。


 魔物狩りを続けるが、思ったより魔物が少ない。


「魔物が居る事は居るんだけど、言われてるほど多くない」


「そうですわね。おかしいですわ。まるで潜んでいるようですわね」


「だとしたら魔人のせいかもしれないですね」


「王都が魔物の大軍に攻められるんじゃない?」


 俺もそれは思っていた。


「その可能性はある」


 そこにガイがやってくる。


「元気にしてたっすか?」


「元気だぞ。魔物が少なくて運動不足なくらいだ」


「そっちもっすか。実は今王と神の手の指導者が揉めてて、魔物狩りが止まってるんすよ。だから俺とジャンヌが呼びかけて、しばらく魔物狩りをしつつキャンプ生活をする事にしたんすよ」


「王と神の手の話を詳しく聞きたいですわ」





「・・・・・と言う事があったんすよ」


「なるほど、その言い方だと、民衆は騙されますわね」


「そうなんすよ。それで、神の手が危険だから、奥さんをみんな連れて長期キャンプの魔物狩りをする事にしたんすよ。王都にこのままいるのは嫌な予感がしたんすよ」


 ガイは神の手の怖さを知っている。


 そして勘がいい。


「ガイの勘は結構当たるから、俺達が王都の外に出たのは正解だったな」


「所で、セイの方も魔物が少ないんすね」


「すくないぞ。ガイの所もか?」


「少ないっすね。まるで隠れて王都に攻め込もうとしているようっすね」


 アイラと同じ考えか。


 アイラも感覚で生きている人間だから勘がいい。


 魔人が王都を潰しにかかっていると見ても良いかもしれないな。


 俺達はキャンプ地の場所が被らないように話し合いをして別れた。






「魔物の数は少ないけど、魔物狩りを続けよう」


「そうですわね」


「魔物狩りは長くなるかもしれないから、頑張りすぎないで行こうよ」


「そうだな」


「夜はまたバーベキューだね」


 バーベキューがしたかったのか。


「夜はたくさんお酒を飲みますわよ」


 エリスは自分の子を抱く母のように酒の瓶を抱く。


 その顔は聖女のようだが、抱いているのは酒だ。


「結局いつも通りのバカンスキャンプになるのか」






 そしてその日はバーベキューをする。


 バーベキューってより焼き鳥だな。


 サーラとマリナが丁寧に串に肉を刺して、大量の焼き鳥を作ったのだ。


 野菜も焼くことは焼くが、メインは焼き鳥だ。


 久しぶりに食べる。楽しみだな。


「焼き鳥はいいですわね」


「エリスも焼き鳥が好きなのか?」


「好きですわよ。それにお酒に合いますわ」


 そっちがメインか。


 全部酒基準じゃないか。


 じゅうじゅうと焼ける焼き鳥をアイラは真剣に見つめる。


 1番最初に焼けた焼き鳥はアイラが食べるのだろう。


 狙いすましたように網から取り、アイラの口に入れていく。


「美味しいよ。これおいしい」


 うん。アイラが最初に食べるのをみんな待ってたんだよ。


 その後酒を浴びるように飲んだ。


 なんせエリスが大量に酒を買い込んでいるのだ。


 王都でほぼ酒しか買ってないんじゃないかってくらい買ってる。


 俺達はマジックハウスの1階で全員が酔いつぶれて眠る。






 ◇





 鳥のさえずりが聞こえる。


 俺は服も着ず、酔いつぶれて毛布をかぶって絨毯の上で寝ていた。


 手にはエリスの胸・・・・・。


 すぐに手を離す。


 皆無防備な恰好で眠る。


 何もやましい事はしていないはずだ。


 気分を変えよう。


「コーヒーでも淹れるか」


「わたくしも飲みますわ」


 エリスが起きる。


「服!服を着てくれ!」


「ふぇ!あ、失礼しましたわ」


 エリスが恥ずかしそうに毛布で体を隠す。


 後ろからアイラがおんぶされに抱き着いてくる。


「コーヒーまだあ?」


 アイラの柔らかい感触が・・・・・良い!


 結論が出た。


 王都よりキャンプ生活の方が楽しい。

 


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