フェイズ3との戦い
「セイに教えてもらったおかげで私は強くなれました」
サーラが俺にお礼を言う。
「サーラの努力だぞ」
「それもありますが、セイのおかげで皆強くなれたのですわ」
「そうだよ、セイが居なかったら、強い魔物に殺されてたよ」
「私の弟、優秀」
マリナが得意げになる。
みんなかなり頑張ったと思うぞ。
本人の意思無くして強くなれないんだ。
「所で、今まで黙ってたんだけど、フェイズ3のカニの反応だと思うんだけど、7体ほどこのマジックハウスを監視してるぞ」
フェイズ3ともなると、知恵をつけ始め、まっすぐ襲ってこなくなるタイプも出てくる。
「提案なんだけど、アイラが1体、マリナが1体、サーラとエリスで1体と闘ってみて欲しい。残り4体は俺が倒すぞ」
恐らく、アイラとマリナはBランク以上、フェイズ3を倒せる力を持っている。
フェイズ3の魔物1体と互角にやり合えることがBランクの条件だ。
そして、サーラとエリスはBランクまでは行かないが、強くなっている。
「やるよ!」
「やる!」
「私に出来るでしょうか?」
「自信がありませんわ」
サーラとエリスは自信なしか。
「大丈夫だ。倒せなくても生き延びるだけでも良い経験になるぞ。すぐに4体を倒して援護に向かう」
こうしてみんなでフェイズ3を倒す事にした。
◇
フェイズ3のカニは人間に近い形はしているが、体が青っぽく、手は大きなはさみになっている。
顔は、カニというよりセミに近い。
言葉は話さないが「ふぉ、ふぉ、ふぉ、」という不気味な奇声を発する。
「逃げられるかもしれないけど、最初に俺が突っ込むぞ。後から出てきてくれ」
俺はフェイズ3に突撃する。
1体をメイスで5発殴って確実に仕留めた。
フェイズ3の6体がはさみを広げて青い冷凍ビームを撃ち出す。
俺はそのすべてを躱して2体目を仕留めた。
マリナがフェイズ3に向かって炎を発生させ、フェイズ3の2体を火柱で焼く。
体を焼かれ、膝をついたフェイズ3にアイラが迫り、身体強化と武器強化の更に上位のスキル、アーツを使う。
「疾風剣!」
とにかく高速で動き、斬撃を何度も叩きこむ技だ。
アイラのアーツでフェイズ3が倒れる。
「まだだよ!疾風剣!」
マリナが焼いたもう1体も疾風剣で仕留める。
そこで残ったフェイズ3がスキルを使う。
残ったフェイズ3の横に2体の分身が現れる。
残った3体が分身し、計9体がアイラに狙いを定めて迫った。
まずい!アイラが狙われている!
アイラは疾風剣を使って剣は振るわずとにかく高速で後ろに下がる。
うまい!高速で動いて包囲されるのを防いだか。
マリナが3つの火柱を発生させ、分身もろとも焼き尽くす。
はずだったが、焼いたのは分身も含め6体だけ。
いや、焼いたのは全部分身だった。
3体のフェイズ3が迫るその刹那、俺は1体をメイスで殴り倒す。
2体のフェイズ3は勢いを止めず、アイラに襲い掛かる。
マリナの魔法攻撃を警戒し、マリナに張り付くように攻撃を続ける。
マリナはアーツを使いすぎた為、もうアーツを使えない。
俺は後ろから1体を殴り倒し、最後の1体を吹き飛ばす。
「サーラ!エリス!戦ってみてくれ!もう分身は使えないはずだ!」
「バリアショット!」
サーラのバリアショットを二丁拳銃で2発分発射する。
更にエリスは連続で銃撃を浴びせた。
サーラのバリアショットを右のはさみで受け止めようとするが、受け止めきれず、右のはさみから体液が流れる。
「バイアショット!」
更に2発目のバリアショットを撃ち込む。
勝ちを決めに行く攻撃!
だがその攻撃をフェイズ3は躱す。
サーラはノーマルショットに切り替えてエリスと一緒に弾幕を浴びせる。
フェイズ3は左右に動きながら銃撃の狙いをブレさせ、傷を負いながらも左のはさみから冷凍ビームを撃ちつつ、サーラとエリスに迫る。
サーラとエリスは後ろに下がりながら射撃を続けた。
俺は笑う。
完全にこっちのペースだ。
だがフェイズ3は予想外の動きを見せる。
2体の分身を作り出し、その分身2体を盾にして前に迫ったのだ。
なんだと!奴は魔人になりかけの個体なのか!
サーラとエリスに迫り爪を繰り出すその瞬間!
サーラは無詠唱でバリアを使って見せたのだ!
バリアにぶつかり、3体の動きが止まる。
その一瞬をサーラは見逃さない。
「バリアショット!」
2体の分身が消える。
「バリアショット!」
決まった!
これで勝ちだ!
その決め手となる止めの攻撃をフェイズ3は躱した。
エリスは躱した相手の太ももに射撃を全力で撃ち込む。
終わったな。今度こそ終わった。
片足をやられ、得意のスピードを生かせなくなったフェイズ3は、サーラとエリスの弾幕によって倒される。
「や、やりました!」
「魔力がギリギリでしたわ」
みんなでサーラとエリスに駆け寄る。
「良かったぞ!サーラ、無詠唱を覚えてたんだな!」
「バリアだけですが、何とか」
「すごかったよおお!」
アイラが2人に抱き着く。
「2人とも、やればできる子」
「これで、全員Bランクを狙えるな」
「ふぁ!む、無理ですよ!さっきも疲れたフェイズ3を2人がかりでやっと倒したんですよ!」
「そうですわ!ギリギリの戦いでしたのよ」
「あのフェイズ3は魔人になりかけだったと思うぞ。カニのフェイズ3の分身だけど、あれは1回しか使えないのが普通だ。だが奴は2回使ってきた」
「そうだよ、最後の敵は強かった気がするよ」
「マリナとアイラはBランク上位の強さを持っている。後はエリスとサーラをBランクにするだけで全員Bランク以上になれるぞ・・・・・ん」
「どうしました?」
「人の気配がする」
「敵ですか」
「分からないが、盗賊ジョブっぽい動きだ」
どっちだ?王の使いか?神の手か?
「念のため皆後ろに下がってくれ」
「味方ですわ」
皆が外套のフードを脱いだ。
「また定期連絡か?」
「いや、今回は違う。すぐに王都に戻って欲しい」
「理由は何ですの?」
「王都の周りの魔物の出没頻度が急増しているのです」
「それだったら王都の周りを一周するか。帰る必要は無いよな」
「いや、他にも理由はいくつかある。1つは王がエリス様の事を気にされている。王がうるさ・・・・・王にエリス様のお顔を見せることで、王のお心を落ち着かせたい」
「なるほど、王がうるさいからエリスの顔を見せておきたいんだな?」
男は目を逸らしたまま話を続ける。
「うるさくは無いが、王のお心を落ち着かせたいのだ」
絶対うるさいって思ってるだろ?
深くは突っ込まないけどさ。
「2つ目の理由は?」
「魔人と思われる目撃情報があった。しかも2体確認されている。ぜひ、直接王と会って話をして欲しいのだ」
「場所さえ教えてもらえれば、俺が魔人と闘うぞ。王都に入るとマリナが危ない。入るならもっと力をつけてからにしたい」
「最後の理由だが、神の手は王城内部に及んでいる可能性がある。人払いをして王自らがセイと話をしたいとの事だ。王都まで来てほしい」
うーん、王都は危険だってことじゃないのか?
行きたくないが、王と話はしておきたい。
「王はこうも言っていた。王都内に来てくれればこちらから出向くと」
「セイ、王都に向かうのですわ。前のようにマジックハウスで出迎えるのですわ」
「でもなー。人通りが少ない場所を選んでも、誰が敵で誰が味方か分からないだろ」
「わたくしに考えがありますわ。マジックハウスを設置する場所の周りを立ち入り禁止にして、そこで王と会談をするようにするのですわ」
「なるほど、立ち入り禁止エリアに入ってきたら敵だよな。襲ってこられても対処しやすいか。だが王も危なくなるだろ?」
「おじいさまは命を懸けていますわよ」
確かにそうか。
王は常に護衛され、危険な立場ではある。
「分かった。向かおう」
俺達は王都に向かった。
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