マリナの強さ

 サーラとの特訓で日数を重ねるとエリスが回復する。


 俺達は全員で魔物狩りに出かけた。


 マリナはまだ体力が回復しておらず、移動中俺が背負う。


 マリナは魔力が異常に高く、魔法も強いけど、体力が無いよな。


「私、魔法で移動する」


「それやると魔力が減るだろ」


「平気、私魔力高い」


「魔物が出て来たよ」


「プラントトレントの群れですわね」


 全員が武器を構える。


 マリナは無詠唱で岩を飛ばして瞬殺する。


「「え?」」


「マリナ強いよ!」


「Aランクの強さはありそうですわね」


「確かに強いが、やっぱり体力が無いよな」


 Aランクかどうかは微妙だな。マリナの体力の無さがネックだ。


「でも、倒した」


 俺は見ていた。


「マリナ、魔法攻撃をする時に風魔法で自分の体を固定していたよな。体力が無い証拠だ」


 魔力と体力のバランスが悪すぎて、魔力の衝撃を体で受けきれないのだ。


 体力が無いと魔法攻撃に支障が出る。


 魔法攻撃が主と言っても体力は大事なのだ。


「最低限の体力は必要ですわね。マリナは魔力だけが極端に高すぎますわ」


「それはセイも同じ」


「確かにそうだけどマリナほど偏ってはいないし、俺は今体力をつけている所だ」


「マリナはお姉さんなのに体力をつけないんだね」


 アイラの言葉にマリナが反応する。


「そんな偏った事をしていたら弟のセイに悪影響が出ますわね」


「マリナはお手本になるべきです」


 マリナが俺の顔をじっと見る。

「体力、つける」


 こうしてマリナの体力向上計画が発動した。






 マジックハウスで作戦会議が開かれた。


「一番手っ取り早いのは、俺がマリナに魔力を流して身体強化を強制的に発動させることだ。筋肉痛になって筋力は上がるぞ。ただ、痛いけどな」


「それがいいよ」


「それにしましょう」


「わたくしは見学しますわ」


 ただ、マリナだけが納得いかないようだ。


「痛い?」


「あれ?マリナはお姉さんなのに怖いんだね。私とサーラはやったよ」


 アイラの直球発言でマリナが観念する。


 アイラの直球発言は攻撃力が一番高いぞ。


「私、やる」


 すごい効果だ!アイラの直球発言が強力すぎる。





 マリナがベッドにうつぶせに寝て、俺がマリナに跨る。


「本当にいいのか?結構痛いし、終わった後しばらく筋肉痛になるぞ。その分効果は出やすいけどな」


「やって」


「分かった。」


 俺はマリナに魔力を流し、強制的に身体強化を発動させる。


「あ!あああああああああああ!」


「きついか?」


「もっと、来て」


 その後マリナは必至で口を押えて耐える。


 俺は魔力を強める。


「んがあ!あ!あ!」


 マリナが痙攣する。


 そろそろ限界だ。


 俺は魔力を止める。


 マリナはベッドで少し震えていた。


「きついだろ?」


「マリナには厳しかったかな?」

 アイラの直球発言は相変わらずだ。


「私も何回もやりましたが、マリナには厳しいかもしれません」


「で、できる。次もやる!」


 マリナは意地っ張りだった。


 特にお姉さんポジションは絶対に譲らない。


 妹扱いのサーラとアイラが出来て自分は逃げ出す。


 そんなことは許されないのだ。


 それを許すという事はお姉さんポジションを手放す事を意味する。


 絶対に負けられない戦いがそこにあった。


 そこでエリスが手を上げる。


「わたくしにもお願いしますわ」


「痛いぞ」


「わたくしはこれでもたくさんの試練を受けて来ましたわ!弱音は吐きませんの!セイの魔力訓練、乗り越えて見せますわ!」





 ◇





「あん!ああ!んああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 エリスはビクンビクンと痙攣し、目をウルウルさせる。


 吐息は荒く、顔を真っ赤に紅葉させる。


 俺は魔力を流しているだけだが、妙に色っぽい。


「エリス、止めておこう」


「はあ!はあ!んぐ!ひー!ひー!ふー!だ、大丈夫ですのよ。来てくださいませ」


「でも、一番反応が酷いぞ。皆と明らかに反応が違う」


 質ではなく反応があまりに大きすぎるのだ。


「分かった分かった。後にしよう。もっと魔物を倒して生命力を吸収して強くなってからだ」


 魔物を倒して強くなれば大分マシになると思う。


「大丈夫ですわ。続けてくださいませ」


「・・・・・分かった」


「んおおおおおおおおん!」


 エリスの声を聴いているとドキドキしてしまう。


 しかも今エリスに跨っている。


 エリスの柔らかい感触とウルウルした表情、これ以上は俺が持たないぞ。


「終わりだ」


 俺が離れようとするとエリスが俺の腕を震えながら掴む。


「もっと来てくださいませ」


 !俺は本能を必死で抑えながら魔力を送る。


 頑張って耐えた自分を褒めてあげたい。


 夕食の準備が出来るがマリナは子羊のように震えながら1階に降りてくる。


 エリスはアイラに背負われて病人状態に弱戻りだ。



 皆がテーブルに座ると、何故かアイラがうずうずしている。


「えい!」


 アイラがエリスの胸と脇腹をつんつんする。


「んああああああああああああ!」


 次はマリナだ。


「ふぉお!だ、ダメ!」


 アイラがニマニマしながら言う。


「エリスが1番反応がいいよ」


 またエリスにつんつんしようとする。


「アイラ、止めろ」


「良くないですわ。そう言うのは良くありませんのよ!」


「アイラダメ!良くない!」


 アイラは止めるがまだうずうずしている。


「今日はチキンステーキですよ。たくさん食べて力をつけましょう」


 サーラナイス!アイラの興味を食事に変えたな。


「はい、アイラもたくさん食べて大きくなりましょう」


 アイラは自分の胸と周りの胸を見比べる。


 アイラにも胸はあるが他の3人が立派すぎるのだ。


「もう一回くらいつんつんしてもいいよね」


「やめろ!」


 アイラは諦めて食事を始めた。


 マリナとエリス、特にエリスは腕を震えさせながら食事を取る。


「きついだろ。全身筋肉痛でしばらく治らないぞ」


「ですが、強くなっている気がしますわ」


 こうしてマリナとエリスは何度もセイの魔力を流されることで、体力をアップさせ、身体強化を覚えた。


 だが、それまでの間2人はアイラに何度もつんつんされ、そのたびに地面に膝をつくことになる。






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