マリナはお姉さんぶる

「セイ、エリスは刺されて疲れてる」


「そうだったな。しっかり食べてゆっくり休んでくれ」


「お酒が飲みたいですわ」


「「だめ」」


 その日はゆっくり休んだ。





 ◇




【翌日】


 今日も休みにした。


 色々あり、皆疲れていたからだ。


 昼までよく眠り、しっかり休憩をとった後、皆で昼食を取る。


 アイラがエリスをおんぶしてテーブルに連れてくる。


「わたくしは歩けますわよ」


「ダメだよ!まだ顔色が悪いよ」


「そうだぞ。階段で倒れたら大変だ」


「これではまるで赤ちゃんですわ」


 俺はエリスの言葉を無視して皆で食事を取る。


 意地でも安静にさせるのだ。


「セイ、ほっぺ、ソースついてる」


 マリナが俺の顔を拭く。


「セイ、水飲む?」


「もらうぞ」


 マリナがコップに水を入れる。


 マリナが俺の髪を触る。


「セイ、ご飯が終わったら髪切る」


 エリスが笑う。


「マリナはセイのお姉さんみたいですわ」


「セイ、まだまだ子供、私が、お姉さんだから、しっかりしないと」


「ん?マリナは15才、俺は18才だぞ」


 マリナは首を横に振る


「違う、私25才、私がお姉さん」


「生まれた年ではそうだけど、カプセルで魔法使ってる時以外寝てるんだろ?カプセルの中じゃ年取らないからマリナは15才だぞ」


「違う、私お姉さん」


「カプセルで年取ってないだろ」


 マリナがため息をつく。


「そう言うの良くない、子供っぽい、セイはまだまだ子供」


「え?おれええええええ!?」


 それはマリナじゃないのか?


 その様子を見ていたみんなが笑う。


「すみません。おかしくてつい」


「どっちも似た者同士だよ。同じだよ」


 アイラに言われると何か引っかかるぞ。


 アイラも大人じゃないと思うなー。


「お似合いですわよ」


 エリスが笑いながらとどめを刺して来た。






 俺は結局マリナに髪を切ってもらった。


 気になるのは「私、お姉さんだから」というお姉さん発言だ。


 マリナの行動を振り返ると常にお姉さんポジションを絶対に崩さない。


 これはいかんな。


「セイ、膝枕する」


 これは良い!良きかな!


 俺はマリナに膝枕をしてもらう。


 だが視線を感じる。


 サーラだ。


「ずるいです!」


「サーラもセイと一緒に、膝枕する?」


「します!マリナはやっぱりお姉さんです」


「その通り」


俺は思わず起き上がる。


「待て待て!2人同時はきついだろ」


「足、伸ばす」


「どっちかが本当に膝を枕にする事になるぞ」


「私が膝で寝ます!」


 どういう心意気だよ!


 結局やってみることになったが・・・・・


「マリナ、足が痛くないか?」


「だ、大丈夫」


 うん、大丈夫じゃないよな。


 普通に足が痛そうだぞ。


 マリナは運動不足で筋肉が落ちている。


 元々無理な作戦だったんだ。


「サーラ、今回は止めておこうか」


「私はこの膝のゴツゴツ感好きです」

 そう言ってうっとりしながら俺に抱き着く。


 マリナの足が痛いって言ってるだろ!


「中止だ」


 膝枕は中止になった。





 家の1階ではアイラが家の中で寝ころぶ。


「熱いよ」


「私、涼しくする」


 マリナの魔法で冷風を発生させる。


 あっという間に部屋が涼しくなった。


「一気に涼しくなったな」


「マリナは私たちのお姉さんだね!」


 マリナが胸を張る。


「私、お姉さん」


「マリナ、凍らせたはちみつレモンが食べたい」


 アイラの要求はエスカレートする。


 洗って輪切りにしたレモンに、はちみつを魔法で圧縮させて浸透させ、氷結させた。


「あっという間に出来たな」


 しかも暑がりなアイラの為に氷結までする気遣い。


 完璧すぎるだろ。


 マリナは出来た冷凍はちみつレモンを秒で口に入れる。


「う~ん。おいひい」


 その後も風呂に入れたエリスの髪を魔法で乾かし、ベッドのシーツを変え、ベッドの湿気さえも魔法で除去した。


「マリナのおかげで助かりますわ」


「私お姉さん、頼っていい」


 こうしてマリナはあっという間にお姉さんポジションを獲得した。

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