パーティーメンバーの危機

 マリナをパーティー【ワールドヒーラー】の正式メンバーに加え、俺達は魔物討伐へと出発する。


 今回は、ガイ、ジャンヌ、勇者、騎士隊長の他に、エリスも参加する。


 大勢の兵士と冒険者が参加する大規模討伐となった。


 行き先は草原の牛狩りだ。


 エリスが声をかけてくる。


「最近黒ずくめの集団がセイのマジックハウスの周りをうろついていましたわ」


「俺も変な気配は感じていたけど、気のせいじゃなかったか」


「ジャンヌさんをマリナの護衛につけますわ」


「それは助かるな。ジャンヌなら安心だ」


「それともう一つ」


 エリスは自身が装備していた守りの腕輪を外し、マリナに渡す。


「エリスの守りの腕輪、無くなる。危険になる」


 守りの腕輪は致命傷を受けた時命を守ってくれる魔道具だ。


「ご安心を」


 エリスは腰からアサルトタイプの銃を両手に構えた。


「いざとなったらわたくしも多少は戦えますわ」





 ◇




 ワールドヒーラー、ジャンヌ、エリスで集団を離れて歩く。


 目的は暗殺者が出てくるか見極める為だ。


 それは良んだが、今マリナは俺がおんぶしている。


「マリナ、前より体力が落ちてるよな」


「しょうがないですわ。何年もカプセルに入りっぱなしだったのですわ」


 そこに5人の冒険者が道を塞ぐ。


「出て来たか」


「やはり狙われていましたのね」


 冒険者は武器を構え、マリナにターゲットを絞った。


 ジャンヌとアイラがマリナを守るように構える。


 マリナが魔法を発動させると、冒険者5人は痺れて動けなくなった。


「無詠唱だよ!」


「効果も高いです!」


「魔法には自信がある」


 マリナは元々優秀な魔法使いだった。


 魔王のジョブを得てからはカプセルに入れられ、毎日状態異常の魔法を使い続ける生活を続け、高い魔力と無詠唱のスキルを手に入れたのだろう。


「出て来たか。何事も無いのがベストだったんだがな」


「恐らく彼らは様子見ですわ」


「だよな。俺達を監視していた人数を考えると、5人は少なすぎる」


「ごめん」


 マリナが謝る。


「気にするな」


 だがこれでマリナの危険が確定した。





 ◇





 討伐ポイントには牛の大軍が現れる。


 俺達は後方で守りを固めるが劣勢に陥る。


「ワールドヒーラーにも参加していただきたい!」


 まずい!思ったより数が多い!


 今俺達が前に出れば後ろからマリナが狙われる可能性があるぞ。


「私とアイラが前に出ます。皆は前に出ず、後ろに居てください」


「すまない!頼む」





 ◇





 アイラとサーラは前線で戦い、何とか魔物を8割以上倒した。


「これで一安心だね」


「久しぶりに全力で戦いましたね」


 そこに勇者が走ってくる。


「アイラ!援軍に来てくれ」


 アイラが身構える。


「アイラ、行っては駄目です!」


 アイラとサーラは疲弊していたが、勇者は汗一つ掻かず、装備も汚れていなかった。


「いいから来るんだ!」


 周りに居た冒険者が勇者に口を出す。


「いくら勇者だからって横暴だろ!こっちはみんな疲れてるんだ!」


 冒険者は勇者に斬られた。


 勇者は口角を釣り上げる。


「大丈夫。気絶させただけだよ。さあ、アイラ、来るんだ!」


 サーラとアイラが武器を構える。


「誰か!セイを呼んできてください!」


「分かった!俺が呼んでくる!」


 冒険者が走り出す。


「ひどいじゃないか。勇者である僕に武器を向けるなんて」


「私たちにかまわないでください!」


「君に用はないよ。用があるのはアイラだけだ」


 勇者が武器を構える。


 サーラとアイラがアイコンタクトをして、後ろに下がろうとした瞬間、勇者がアイラに斬りかかる。


 サーラの銃撃を盾でガードし、アイラと剣を交えた。


 アイラとサーラは疲弊していた為、アイラの身体強化が切れ、サーラの銃撃も連発出来なくなっていた。


 勇者の剣がアイラに直撃する。


 その瞬間アイラの体がビクンと跳ね、地面に倒れる。


「何をしたのですか!?」


「この剣は【痺れの剣】さ。斬られた者の自由を奪う。お仕置きをするだけだから安心するんだ」


 状態異常解除の魔法を使おうとするサーラを勇者が斬りつける。


 勇者はサーラが倒れた事を確認すると、アイラを担いで奥に消える。





 ◇




 アイラは人気のない場所に連れて行かれ、液体をかけられる。


 アイラは恐怖した。

 何これ!何これ!体が痺れて熱い!


「さあ、これで抵抗できないよ」


 助けて!


「アイラ、勇者である僕の言う通りにするんだ」


 セイ!助けて!


「おとなしくしていれば気持ちよくしてあげるよ」


 お願い!セイ!助けて!


 勇者の顔にビームが放たれた。


「ぎゃああああ!目が!目がああああああ!」


 勇者が地面に転がる。


 セイが無言で勇者にキックを食らわせた。


 勇者に馬乗りになって何度も何度も殴る。


「や、やめろ!僕は勇者だぞ!どうなるか分かって」


 勇者が動かなくなるまで殴る。


 騎士隊長が現れ、全力で止めに入る。


「セイ殿!止めるのだ!」


 勇者は特権を持ち、数少ないBランクの戦闘能力を持っている。


 騎士隊長が止めに入るのは当然の事だった。


 騎士隊長の言葉でセイは止まり、アイラに回復魔法をかけた。


 そして勇者を蹴り飛ばす。


 セイは頭に来ていた。


 アイラは号泣してセイに抱き着く。


「来てくれた!セイが来てくれたよ~!」


 セイには何度も守られた。


 大洞窟で守られて、その後も何度も守られた。


 アイラは震えていた。


 しばらくしてからサーラを迎えに行き、3人でマリナたちの元へと歩く。

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