愚かな賢者は衰退する⑤
賢者ライガは治癒士ギルド本部に到着すると怒りに震えた。
魔人の襲撃により、本部は荒れ、内部は廃墟のようになっていたのだ。
掃除はされず、物が散乱していた。
何と言う事だ!
掃除もしない状態で引き渡すとは!礼儀知らずどもめ!
ライガは『現状引き渡し』という条件に納得して治癒士ギルド本部の物件を購入した。
だがライガは自身の失敗を認めず、相手のせいにした。
掃除するしかないのだよ。
ライガは他の治癒院に乗り込んだ。
乱暴に扉を開け、すぐに怒鳴る。
「治癒士ギルド本部の掃除をするのだよ!」
治癒士が感情を殺して対応する。
「
ライガは手に電撃を纏わせた。
「掃除をするのだよ」
そこに男が現れる。
腰にショートソードを装備し、明らかに戦いに身を置いた戦士の目をしていた。
「ライガ、治癒士を脅すのは辞めてもらおう」
「黙るのだよ。私はこの治癒士と話しているのだ」
ショートソードを装備した男はライガの顎を殴り、両腕を拘束した。
「城まで来てもらおう」
ライガはマークされていた。
王からライガが何か問題を起こせばすぐに納めるよう命令を受けていたのだ。
ライガは1日牢に入れられる。
◇
牢から出るとライガは不機嫌なまま治癒士ギルド本部へと戻る。
まったく!私は賢者なのだ。
何度言ってもそれが分からないようだ。
ライガは渋々掃除を始めるが、掃除が出来ない。
今まで1度も掃除をした事が無いのだ。
私が掃除をするのは間違っている!
そこに国の者がやってくる。
「税の徴収をしにきた」
「待つのだよ!まだ準備が出来ていないのだよ」
「税の支払いは今月だ。準備が出来ていないというのは払えないという事か?」
「私は賢者なのだよ!」
「払えるのか?払えないのか?」
「私に不遜な態度を取るのは辞めるのだよ!」
「質問に答えろ。答えなければ税を払えないと判断する」
「不遜な態度は辞めるのだよ!」
◇
こうしてライガは数日で治癒士ギルド本部を追い出された。
賢者の特権をはく奪され、金も失ったライガに今までのような横暴は通用しない。
むしろ今まで周りから恨みを買っていたせいで並みの人間以下の扱いを受けるようになっていた。
ライガはテント生活を始める。
昔買ったテントを設置しようとするが、半日かかった。
使い方を忘れ、思い出しながらの設置になったのと、風が強くテントが何度か飛ばされそうになった為だ。
このままではまずい。
ライガは本格的に追い詰められていた。
治癒士を脅して魔石を徴収しようと試みるが、すぐに兵が出てきて鎮圧された。
ライガはテントで考える。
なんとかせねば。
それにしても、
虫がうるさい。
暑い。
体がかゆい。
腹が減った。
・・・・・もう寝よう。
ライガは疲労し、眠りについた。
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