おとり捜査
「王に会う?話が飛びすぎじゃないか?」
ただ俺達が王都を出るだけだ。
王と何の関係があるんだ?
エリスは違うとばかりに首を横に振った。
「セイはすでに王都で最強の戦闘力を持っていますわ。セイが抜ける事で魔物への対応に支障が出るのですわ」
「王がマリナの事をどう思っているか分からない。このまま出発したい」
「王はマリナさんの事を悪く思っていませんの」
「何でエリスに分かるんすか?」
ガイは素直に疑問を投げかけた。
エリスが1回深呼吸した。
「王は私の祖父ですわ」
「「え?」」
初耳だぞ。
なぜ今まで言わなかったんだ?
冗談じゃないよな?
「冗談ではありません。わたくしが王族とばれると殺される可能性がありましたの。だから誰にも言わず黙っていましたわ」
俺の考えを見通すようにエリスは答える。
俺ってそんなにわかりやすいのか?
王族が一人で行動していれば殺される可能性はある。
上の者は黙っていても恨みを買うものなのだ。
「びっくりしたよ」
「驚きました」
「急な話で飲み込めてないっす」
「今まで黙っていたことは謝りますわ。ですが、おじいさまはマリナさんの事を悪く思っていませんの。それだけは分かって欲しいのですわ」
「分かった。会おう」
エリスの覚悟が伝わった。
危険は無いと思う。
「それでは王とお話してきますわ。出来れば早めに呼んできますの」
「送るっすよ」
ガイとエリスは家を出ていったが、呼んでくるって言ってたか?
俺らが出向くの間違いだよな?
「エリスがお酒を置いて帰ったよ」
アイラが驚く。
「王はセイの事を大事に考えてるんですね。流石セイです」
サーラは誇らしげに胸を張った。
マリナは黙っていた。
人見知りなのだ。
◇
【次の日の朝】
気配を感じる。
100名ほどか。
外を見ると騎士と王、それとエリスが居る。
王と騎士は揉めていた。
アイラが不思議な表情をする。
「何を言ってるのかな?」
「俺が話を聞いてくる」
もしマリナが狙われていたらまずい。
俺1人で王達の所に向かう。
「何があったんだ?」
俺はエリスに話を聞く。
「護衛の騎士を置いて王がセイの家に行こうとして揉めているのですわ」
「そう言う事か」
王は誠意を見せる為護衛を連れず俺の家に行こうとしたが、騎士からすれば護衛無しで王が動くのはありえない。
揉めるよな。
王が俺に気づき声をかける。
「セイか、今から家に上がらせてもらう所だったが、少し待っていて欲しい」
「マリナに被害が無くて、信頼できる護衛なら家に入れても大丈夫だぞ」
「では護衛4名とエリスを連れて家に行こう」
「俺は部屋をを片付けてくる」
俺が家に戻ると家は綺麗になっていた。
王とエリス、そして4名の騎士だけで家に入る。
王は挨拶を済ませるとすぐに謝ってきた。
「今までマリナをカプセルに閉じ込めすまないと思っている。カプセルに閉じ込め、状態異常の魔法を使わせ、カプセルの力で魔力を回復させる生活を続けさせた。苦しい思いをさせた」
マリナは俺の後ろに隠れたまま言葉を返す。
「大丈夫。こうして出られた。それにカプセルに入って無かったら殺されてた」
魔王のジョブを持つマリナは誰に狙われてもおかしくはない。
「マリナが言った通り、カプセルから出た今、マリナが狙われる可能性がある。俺達は王都を出ようと思う」
「うむ、確かにマリナが狙われる可能性はある。だが、私としては王都の安全を守る為、魔物討伐に協力して欲しい。それに王都の外は魔物の縄張り。王都の外で生活するのは現実的ではない。そして、王都の外に出ればそれはそれでマリナの命を狙われやすくなるのではないか?」
確かに王都の外は兵や騎士が居ない。マリナを狙う者は動きやすくなる。
「提案なのですが、兵士と冒険者合同の討伐依頼に参加するのが良いと思いますわ」
「え?マリナが狙われてるかもしれないんだよね?そんなことしたらマリナが危ないんじゃない?」
アイラが首を傾げるが俺はエリスの意図を理解した。
「ワザとマリナを狙わせて暗殺者が居たらあぶり出す作戦だろ?」
「その通りですわ。わざとマリナさんを参加させる噂を広めて暗殺者が出てきたら一網打尽にするのですわ」
危険だが、その方が敵が居るか居ないかが分かりやすくなるか。
ベストなのはマリナが命を狙われる事無く討伐任務が終わる事だ。
だが、もしマリナが狙われたら、マリナの危険が確定する・・・・・。
「リスクはあるが、討伐依頼に参加すれば相手の動きが見えやすくなるか」
「そうですわ。動いた方が長い目で見ればリスクは少なくなりますわ」
こうして話し合いはしばらく続き、俺達の討伐任務への参加が決まった。
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