マリナの真実

 俺は走ってマジックハウスへと戻る。


 人の気配がしない!


 すぐに2階の寝室を空ける。


 居ない!


「マリナ!居ないか?」


 そこにサーラとアイラが走って入ってくる。


「は、早すぎるよ!追いつけない」


 2人は息を切らす。


 俺はかまわず家をくまなく探す。


「マリナ!居ないか?」


 どこに行った?


 なぜ居なくなった?


 いや、理由は分かっている。


「セイ?どうしたんですか?」


「意味が分からないよ。マリナってなんなの?」


「すまん!出かけてくる!」


 俺は走った。


 俺が子供の頃作っていた秘密基地の洞窟に走った。


 そこに居る。そんな予感がした。


 マリナは秘密基地の洞窟でうずくまる。


「マリナ、俺はセイだ!あれから10年立ったけど分かるか?」


「分かる」


「一緒に帰ろう」


「帰れない」


「分かった。一旦俺の家で話をしよう」


「それ、帰るのと同じ」


 マリナは悲しそうに俯いたまま話す。


「私がカプセルに戻らないとセイもひどい目に合う」


 でもマリナはカプセルに戻らなかった。


 カプセルに戻るのも嫌なはずだ!


「カプセルはもう無いみたいだぞ。さっき聞いて来た。戻ろう」


「ダメ!戻れない!」


「マリナが帰らないなら、俺もここに泊まるぞ」


 俺がマリナの隣に座ろうとするとマリナが逃げ出す。


 俺は素早くマリナを捕まえ、引き寄せた。


 マリナを抱っこしたまま座る。


 マリナから言葉が溢れる。


「私、皆に良く思われてない!」


「皆、私を怖がる!」


「皆、私に死んでほしいと思ってる!」


 マリナが泣き出す。


 俺に抱き着いてしばらく泣いた。






 マリナが泣き止み、何も話さなくなると、俺は口を開く。


「昔は、こうやってマリナに抱っこしてもらった」


「今じゃ俺の方が大きくなった」


「でも、あの時の事は覚えている」


「マリナのおかげで俺は大きくなれたんだ」


「マリナ」


「俺強くなったんだ」


「魔人を倒せるくらい強くなった」


「だから安心してくれ」


「もしマリナがマリナじゃなくなったら、・・・・・俺が」


「俺がマリナを殺す」


「だから帰ってきてくれ」


 マリナが俺の顔を見つめる。


「本当に?」


「本当に、殺してくれる?」


「約束しよう」


 マリナはまた泣き出した。





 マリナが泣き止むと俺はマリナをおんぶしてマジックハウスへと帰った。


 俺は満たされていた。


 だが、ライガとすれ違ったことだけは嫌だった。


 ライガの目が俺達を捕らえるが俺は無視してマジックハウスに戻った。


「お帰りなさい」


「お帰り」


「ただいま」


「良く分からないよ。何があったの?」


 マリナが俺から降りて前に出た。


「私、私の」


「マリナ、無理に言わなくていいんだ」


 マリナは首を横に振った。


「私のジョブは、魔王」



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