魔物強襲④

 セイは冒険者ギルドの近くまで走り、そこでマジックハウスを出した。

 

 マジックハウスに入るとマリナをベッドに寝かせ、新しく毛布を掛ける。


 やっと助けた。


 マリナをカプセルから助け出したんだ!


 マリナの顔を見つめ、頬を撫でる。


 懐かしい顔に目が潤む。


 俺は椅子に座ってマリナを眺めながら考える。


 これからどうするか?


 出来ればカプセルの様子を確認したい。


 カプセルが完全に壊れていれば助かるが、うまくいっているかどうかわからない。


 どんどんどんどん!


 マジックハウスの扉が叩かれる。


「セイ殿!居ますか!魔人は健在!今危険な状態です!今すぐ来てください!」


 くそ!あの魔人まだいるのか!


 行くしかないのか!?


「・・・・・分かった!すぐに向かう」


 俺は中央部へと向かった。






 俺が治癒士ギルド本部に向かうと、外では戦闘が続く。


 騎士隊長と騎士はボロボロになり、肩で息をしていた。


 俺が魔人に近づくと、魔人が俺に目を向ける。


「ぶひ!死にたがりが、また増えたか!ん?そのメイス、お前がボーンを倒したのか?」


「ボーンって骨の魔人か?なら倒したぞ」


 周りの人がざわつく。


「セイが魔人を倒したのか?」


「あいつ、やはりただ者じゃないな!」


 魔人は不機嫌になり吐き捨てるように言った。

「ぶひ!あいつは最弱の魔人!思い上がるな!」

 

 魔人は鼻をひくひくと動かす。


「ぶひー!ボーンとこのブーズを一緒にするなよ!俺は勇者に勝っている!」


 周りの者が叫ぶ。


「セイだって勝っているぞ!」


「そうだ!セイも勇者に勝っている!」


「セイ!気を付けろ!奴は2つの盾を自在に操る」


 俺はビームを撃ってみた。


 禍々しい色をした盾が攻撃を防いだ。


「これが盾か」


 次は接近戦だな。


 俺はメイスを横に振りかぶり盾を攻撃した。


 盾が衝撃を殺しきれず魔人にぶつかる。


 更にもう1撃加える。


 盾と一緒に魔人が吹き飛ぶ。


 魔人を追って今度は全方向から攻撃を繰り出す。


 5発中3発盾を避けるように魔人に攻撃を加えることが出来た。


 魔人の体が歪む。


「ぶうひー!!!切り札を見せるぞおお!」


 魔人の体が魔力で覆われ、禍々しい紫色の重鎧が出来上がる。


 更に「ハイパーリジェネイト!」


 魔人の傷が回復していく。


「ぶひひひひひ!お前の攻撃を2つの盾で防ぎ、防げなければ鎧で防ぐ!さらに万が一ダメージを受けてもハイパーリジェネイトで回復する!鉄壁の盾・鉄壁の鎧、そしてハイパーリジェネイトの3重防備!これこそが俺の最強状態だ!」


周りの冒険者が騒ぐ。


「そんな!いくらセイでもあの防御はやばすぎるぜ!」


「あんなのどうやって倒せばいいんだ!」


「あれが魔人!やはり魔人には勝てないのか!」


 いやいやいや!防御だけだろ!


 攻撃が弱すぎる!


 それにあんな大技を3つも発動させたら、回復力に優れる豚系魔人でもすぐ魔力が枯渇するだろ!


 ・・・・・だが、俺は早く帰りたい!


 今マリナを助けたばかりなんだ!


「分かった、俺も切り札の内の1つを使おう!みんな!離れていてくれ!爆発するぞ!」


 冒険者が叫ぶ。


「セイの言う通りにしろ!離れるんだ!」


 皆距離を取る。


 メイスに大量の魔力を注ぎ込む。


 メイス先端の周囲が蜃気楼のように歪む。


 通常は制御できるだけの魔力をメイスに注ぎ、インパクトの瞬間に魔物に打ち出す。


 だがこの技は制御できる量を超えるありったけの魔力をメイスに注ぐ。


 制御しきれない為インパクトの瞬間爆発し、俺自身もダメージを受ける。


 名付けてインパクトボム!


「ぶひ!なんだその禍々しい魔力は!」


 俺は駆ける!


 一直線に魔人に向かう!


 魔人は盾を2つ正面に重ね、腕をクロスさせた。


 だが知った事か!


 一直線に駆け、思いっきりメイスを振り、インパクトの瞬間に魔力を魔人に打ち出す!


「インパクトボム!」


 制御しきれず魔力が爆発し、俺にも衝撃を与える。


 魔人の盾が2つ粉々に割れ、クロスした腕をボロボロにし、胸を衝撃が襲う。


 鎧を砕き、魔人がくるくる回りながら吹き飛ばされる。


 爆発音と共に衝撃が周囲を襲う。


「ぶうひいいいいい!」


 魔人が地面に転がる。


「もう一発だ!」


 2発目で胸部に全力のインパクトを叩きこむ!


 上から思いっきり振りかぶり、叩き込む。


「インパクトボム!」


 インパクトの瞬間地面がえぐれる。


 逃げ場の無い状態からの切り札の直撃!


 魔人は回復する間も無く絶命した。


 ストレージが出てこない。


 倒したか分からないぞ。


 俺は念のため魔人をストレージに収納する。


 収納できなければ生きている事になる。


 収納出来た。


 倒した。すぐマリナの元へ向かう!


 だが騎士隊長に呼び止められる。


「王に会ってくれ!急いでいるようだが魔人の討伐をすぐ王に報告せねばややこしい事になる!」


 王への報告、断るのはまずい。


 行かなければ最悪マリナも巻き込まれる!


「すぐ終わらせたい!」


「善処するが、王次第だ。約束は出来ない」


 騎士隊長の正直な発言に誠実さを感じたが、今だけは速く終わらせたい。


 マリナが目覚めたら不安に思うかもしれない。


 カプセルから急に見知らぬ家に運ばれたんだ。


「すまない。すぐに事前の話は通しておく。入浴と着替えも早く終わらせるよう手配する」


 俺の服は傷み、髪の先が焦げたように傷んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る