魔物強襲③

 魔人が中央部の治癒士ギルド本部を目指す。


 耳と鼻だけは豚と同じ形で、後は小太りの人間に見えた。


 避難先にいきなり魔人が現れ、民衆はパニックとなる。


 そこにライガが現れる。


 兵士はライガに駆け寄った。


「流石賢者ライガ殿!魔人の接近に気づいて援軍に駆け付けたのですね!魔人はあそこです!お力をお示しください!」


 民衆はライガに注目した。


 ライガは何も言わず逃げ出す。


 そこに勇者が現れた。


「ライガ!どこに行くんだい!」


 ライガは走り去る。


 兵士と民衆は叫ぶ。


「それでも賢者か!」


「ライガ!戦え!」


「ここで逃げるならなぜ今まで偉そうに人を顎で使ってきたんだ!役目を果たせ!」


 そこで勇者は両手を広げて叫ぶ。


「僕が魔人と闘おう!クズ賢者には後で罰が与えられる!今は魔人を何とかすべきだ!」


 勇者コールが巻き起こるが、勇者は歓声を浴びたまましばらく動かなかった。



 


 

 魔人は治癒士ギルド本部に居る治癒士を惨殺して回った。


 ギルド本部に居る治癒士達は、ジャンヌの呼びかけに応じず戦場に赴かなかった者達の集まりだ。


 当然戦闘力は低く、一方的に魔人に倒されていった。


 魔人は口角を釣り上げる。


「ぶひひひ!人間どもめ、面白いように陽動に引っかかってくれたものだ!状態異常の魔法の元を辿ってみれば、雑魚の治癒士どもが居る」


 魔人はハナをひくひくと動かし嬉しそうに治癒士を倒していく。


「治癒士を倒し、更に魔法の元を叩いてしまえば、人間どもなど我らに倒されるだけのただの雑魚だ!」


 魔人はカプセルを目指した。


 奥に入ると中央にカプセルがあり、周りには見慣れない設備が並ぶ。


「ぶひひひひ!ここか!ここから魔法が出ている!ここを叩けばすべて終わりだ!」


 そこにセイが到着する。


「ぶひ!なんだ貴様は!」


 さらに魔人の後ろから気配がする。


「魔人め!この勇者ボムズが相手になるよ!」


「勇者か、このブーズ様とやり合う気か!面白い!」


 俺が会話に割り込む。

「勇者と魔人が戦うのか。俺は人を避難させる!存分に戦ってくれ!」


「ふ、分かっているじゃないか」


 セイはカプセルを割って中の人を毛布で包み、担ぎ上げる。


「それと、このカプセルと周りの設備は、アーティファクトだ。完全に壊されると王都中央を魔物から守る状態異常攻撃が出来なくなる。出来るだけ壊さないようにしてくれ」


 そう言って俺は撤退する。


 魔人がこの部屋の設備を全部壊してくれると助かる。



 



 魔人ブーズと勇者ボムズが部屋に残されると、お互い構えた。


 勇者は剣と盾を構え、魔人は両手持ちの斧を構えた。


「魔物なのにどうやって入ってきたんだい?この中央部は魔物に状態異常の効果を及ぼすはずだよ」


「ぶひひ!俺のスキルは状態異常完全耐性!俺に状態異常は効かない!」


「はっはっは!状態異常耐性!!僕と闘うには貧弱すぎるよ!」


「試してみるがいい!」


「場所を変えないかい?ここじゃ戦いにくい」


 魔人ブーズはアーティファクトを破壊して勇者を挑発する。


「ぶひひ!断る!貴様などアーティファクトを破壊する片手間に相手をしてやる!」


「なめるなよ豚がああ!炎の魔装!」


 アーティファクトが溶けていく。


「爆炎撃!」

 勇者が変を振ると、剣から炎が飛ぶ。


 魔人の体全体を余裕で覆い、炎の衝撃波が魔人を包む。


「回避できないようだね!口ほどにもない」


 炎が止むと、魔人のいた場所に大きな盾が発生していた。


 濃い紫色の禍々しい盾が魔人を守り、魔人に炎は届かなかったのだ。


 魔人の周りの壁や床がめらめらと燃え、壁がボロボロと落ちてくる。


「何かしたか?」

 魔人は勝ち誇ったように勇者を見下した。


 勇者はもう一度同じ技を使う。


「無駄あああああ!」


 魔人の盾が炎から魔人を守る。


 炎が止むと勇者は走って逃げだした。


「ぶひ!?・・・・・逃げるなあああ!」


 魔人と勇者は建物の外に飛び出した。


 勇者は口角を釣り上げた。


「罠にかかったようだね。ここなら僕のスピードでその盾を潜り抜けて攻撃出来る。もう壁を背にして戦うことは出来ないよ」


「ぶひひひひひ!やってみろ!お前に俺のスキルを敗れるとは思えんがな」


「なめるなああ!」

 勇者が魔人の周りを動き回る。


 盾の無い側に回り込み炎で覆われた剣を叩きこむ。


 そこにもう1つ盾が発生した。


「ぶひひひ!誰が盾を2つ出せないと言った?」


 2つの盾はくるくると魔人の周りを回転し、宙を浮く。


「ぶひひ!それともう1つ、この『鉄壁の盾』は、このように攻撃も可能だ!」


 2つの盾が飛んで勇者の両脇に迫る。


 勇者は剣と盾で攻撃を防いだ。


「がら空きだな!」


 魔人は正面から斧を振り下ろす。


「ぐう!」


 勇者は後ろに飛んで直撃を躱したが、胸に斧の衝撃を受けた。


 いつの間にか勇者と魔人の周りに人が集まっており、騎士隊長もそこにいた。


「まずいぞ!セイ殿はどこだ?」


「は!治癒士を避難させているとの事です!」


「すぐ呼び戻せ!」


 兵士と騎士が急ぎセイを探しに行く。


「ぶひ!どうしたどうした!」


 魔人は見かけによらず2つの盾と斧、そして足技まで使い勇者を追い詰めていった。


「いかん!勇者を守れ!」

 騎士隊長が前に出て、それに続くように4人の騎士も加わり突撃する。


 魔人は騎士隊長に狙いを絞った。


 騎士隊長は両手持ちの大剣を振るが難なく盾に防がれ、魔人の連撃にさらされる。


「ぶひ!お前も勇者程度の力しかないか」


 その隙に後ろから騎士が斬りつけるが魔人は余裕で防ぐ。


「ぶひ!無駄だ!」


 騎士隊長は笑う。

「無駄ではない!勇者を救出した」


 勇者は騎士に背負われ,退却していく。


「ぶひーーー!調子に乗るなよ!」


 騎士隊長と3人の騎士は魔人を囲むが、魔人に傷を負わせることが出来ず、逆にボロボロになっていく。

 

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