草原探索②
「休憩は終わりだ。先に進もう」
「もっと奥に行こう。出来れば壁まで行けるようになりたいよね」
壁、神の加護とも言われる光の壁だ。
この壁に阻まれ、途中から進めなくなる。
王都の近くの魔物は冒険者と兵士が倒している為魔物が少ない。
王都を出て壁に近づくほど人が立ち入らなくなり、魔物が多くなる。
フェイズの高い魔物との遭遇率も高くなるのだ。
壁の近くはまだ早い。
だが、もう少し奥に行く程度なら危険は少ないだろう。
「そうだな、もう少し奥に行くか」
俺達は奥に進む。
牛の魔物が20体前後、それは問題無い。
しかしその内フェイズ2の牛が6体!
フェイズ2の割合が多い。
俺は空中を走ってフェイズ2の魔物に迫る。
ビームで2体を仕留める。
残り4体をメイスで殴り倒す。
「飛んでる!」
アイラが驚愕する。
「アイラ、サーラ、残りの牛を倒してくれ!」
「そ、そうだね」
「分かりました」
アイラが牛の攻撃を受ける。
俺はすかさずヒールをかけた。
「私が回復します!」
「すまん、反射的に使った」
アイラとサーラのコンビで残りの魔物を倒す。
ストレージに魔物を収納するとアイラが駆け寄る。
「今飛んでたよね!?絶対飛んでたよ!」
「バリアの魔法を足に発生させて足場にしてるだけだぞ」
「私にもできるかな?」
サーラが首を振る。
「まず無詠唱の魔法で足場を一瞬で作り出す必要があります。更に足の裏に正確にバリアを出すのは難しいです。それにセイは足の裏だけに小さくバリアを出して魔力の消費を抑える精密な魔力発動をこなしています。その上で攻撃しつつ魔法を多重発動する能力も必要です。セイ以外に出来る人を知りません」
アイラの顔が曇る。
「そっかー。諦めるよ。後、メイスで殴った時に魔物が爆発してたよね?あれはどうやったの?」
「あれはメイスに魔力を込めておいて、インパクトの瞬間に魔力を魔物に発射してた」
「それ戦士が最後に覚えるスキルだよ!必殺技だよ!」
戦士の魔力操作は次の順番で覚える。
①身体強化
②武器強化
③武器バーストや神速剣などの必殺技
アイラは①の身体強化だけで戦っている。
サーラは祈るように前で手を組む。
「セイは素晴らしい力を持っています。この世界で最強の人間でしょう」
「最強かどうかは分からないな」
「セイにはここの魔物じゃ物足りないよね。もう少し奥に行こうよ」
「うーん、さっきから牛の魔物が多い。恐らくフェイズ3かフェイズ4の牛の魔物が居るぞ」
「そっかー、じゃあもう少しだけ奥に行って今日は終わりにしようよ」
「そうだな、少しだけ奥に行って終わりだ」
俺達は少しだけ奥に進む。
「嫌な予感がします」
「もう手遅れだな。フェイズ3のミノタウロスが2体こっちに来る。俺が前に出る。2人は後ろに下がって見学してくれ」
2体のミノタウロスが俺達に近づく。
俺は2体にビームを撃ってターゲットを取る。
ダメージは与えるが倒すには至らない。
「グウォオオオオオオオオ」
ミノタウロスは怒って俺に殴りかかってきた。
空中を走る。
メイスに魔力を込めて何度も何度も殴る。
ミノタウロスの力は強いが動きは速くない。
俺はすべての攻撃を躱し、攻撃を続けた。
2体のミノタウロスが倒れた。
ミノタウロスをストレージに入れると、振り返る。
「やっぱりフェイズ3が居たな」
「簡単に倒しすぎだよ!フェイズ3の魔物は1体だけでも大変なのに、セイは絶対Cランクじゃないよ!セイはAランク以上の強さだよ!」
フェイズ3の魔物1体と互角に渡り合えるのがBランク。
そのフェイズ3を2体簡単に倒したのだ。
セイのCランクは明らかにおかしい。そう思うのも無理はない。
「どうしてCランクのままなの?」
「みんなを助けているガイがCランクで俺がBランクになると良くないだろ?ガイがBランクになったら俺もBランクにしてもらう予定だ」
サーラはまた祈るように両手を組んだ。
「セイは冒険者ギルド全体の未来を考えているんです」
「今日は疲れたよ」
「セイの力に圧倒されるのは無理からぬことです」
「休もうか」
マジックハウスを出す。
「まだ魔物の反応があるから俺はもう少し狩ってくる。2人は休んでいてくれ」
「え?感知は盗賊のスキルだよね?」
「盗賊のスキルも習ったぞ。熟練の盗賊ほどじゃないけど、感知は出来るんだ。じゃ、行ってくる」
アイラは驚愕の表情を浮かべたまま俺を見送る。
◇
周りの魔物を倒しマジックハウスに帰るといい匂いがした。
「すき焼きか」
「おいしそうだよ」
アイラとサーラはお風呂が済んだのか顔がほてっている。
「俺は風呂に入ってくるから食べててくれ」
俺はサウナ抜きで手早く体を洗い、風呂から上がる。
髪が濡れたままリビングに戻ると、アイラとサーラが食べずに待っていた。
「食べててよかったんだぞ」
「ダメだよ!一緒に食べるのがお嫁さんお務めだよ!」
結婚してないけどな。
アイラはお預けされている犬のようにすき焼きから目を離さない。
説得力が無いな。
俺は席に着く。
「食べようか」
アイラが食べだす。
サーラは、席を立ち、俺の椅子を後ろに下げ、生活魔法で俺の髪を乾かす。
温風を当てられながらサーラが手櫛で髪を整えていく。
「助かるぞ」
「いえ、セイの髪を触るのが好きなんです」
「もう大丈夫だ。俺達も食べよう」
鍋の中身がほとんど無くなっていた。
アイラが気まずそうな顔をする。
「大丈夫です。たくさん用意してますから」
サーラは材料を入れていく。
肉のじゅ~という音と匂い、たれの香りが食欲をそそる。
春菊やキノコなどの材料を入れて鍋に蓋をする。
「10分くらいで出来ますよ」
「ごめん」
アイラが小さくなる。
「気にするな。遠慮して食べない方が良くないぞ」
「そうです。私たちは家族も同然です。同じパーティーなのですから」
サーラはたまに飛躍した事を言うが気にしないでおこう。
でも、こういうのもいいな。
マリナと一緒にご飯を食べていた頃もこんな感じだった。
◇
ワールドヒーラーはしばらくキャンプ生活を続けた。
しばらく草原で魔物を狩るが、後半は「セイが感知出来るから飲み会してもいいよね」となり、3回ほど酔いつぶれて記憶を無くした。
何故か2人は俺のグラスに酒を注ぎたがる。
全員酔いつぶれても次の日には魔物狩りをした。
サーラとアイラからは強くなろうという意思を感じられた。
「強くなってお嫁さんになる!」
「強くならないとセイのそばに居られません!」
こうしてサーラとアイラは前より強くなり帰還する。
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