セイVS勇者
【演習場】
俺と勇者は演習場の中心に立ち、魔道ライトで演習場が照らされる。
周りにはサーラ・エリス・アイラ以外にも多くの冒険者が集まってくる。
新聞記者は魔道カメラを構える。
勇者は口角を釣り上げながら俺に話しかける。
「僕の圧倒的な力で君は倒れる。その様子を撮影してもらえるんだ。記念になるだろう?この勇者ボムズと戦い、敗北を味わう事で良い経験になるよ。僕と闘えた事を一生光栄に思いながら、この世界にはどう頑張っても勝つことが出来ない圧倒的な強者が居るという事実を君は今知ることになる。だが、それはある意味幸せな事でもあるよ。君の冒険者生活の大きな教訓になるんだからね」
こいつずっと自慢話してるぞ。
しかも同じような事しか言わない。
「来ないのか?」
「早く楽になりたいのかい?それじゃ、いかせてもらうよお!」
勇者ボムズは右手に盾、左手に剣を構えて俺に斬りかかる。
俺はひたすら勇者の攻撃をメイスではじく。
「はははは!手も足も出ないのかい?」
勇者は連撃を続ける。
冒険者は焦りだす。
「くそ!セイが防戦一方になってやがる!」
「やはり勇者には勝てないのか?」
俺は何度も何度も勇者の攻撃をはじく。
何度もはじく。
【10分後】
勇者は息を切らす。
「もうあきらめるか?俺に1回も攻撃を当てられないだろ?」
「ふ、ふん!防戦一方の君に、はあ!はあ!負けるわけ、無いじゃないか」
勇者の息が乱れる。
冒険者が酒をあおる。
「セイの奴、ワザと攻撃しなかったのか」
「勇者よりセイの方が強いんですね」
勇者のこめかみに力が入る。
「防戦一方の分際で!余裕ぶられても困るよ!悔しかったら攻撃してくるんだ!もっとも攻撃が僕に届く前に君は倒れる!!」
俺は勇者に歩いて近づく。
後3歩で間合いに入るタイミングで走って勇者のみぞおちにメイスを叩きこんだ。
勇者が吹き飛び、地面を転がる。
新聞記者はシャッターをカシャカシャと鳴らす。
「う、ごほ、ごほ、はあ!はあ!カメラで撮るな!」
自分が呼んだ新聞記者だろ。
「卑怯だぞ!君は実力を隠して急に本気を出してきた!」
「間合いに入る時に走り出すのは普通だろ。それに手加減してる」
「もう許さないよ!僕の奥の手を見せる!」
勇者の剣と体が炎に覆われる。
地面があまりの熱に黒く焦げていく。
「これが僕の奥の手、炎の魔装だよ。この状態になった僕は危険だ!死にたくなければみんな離れることをお勧めするよ」
「あちい!離れるぞ!」
冒険者はあまりの熱気で勇者から距離を取った。
「その炎の魔装はどんな効果があるんだ?見かけだけじゃないんだろ?」
「ふ、この炎の魔装によって僕のスピードと攻撃力は大幅に上昇するよ。更にこの炎の魔装でフェイズ3の魔物を何度も倒してきたんだ。」
「フェイズ4の魔人は倒してないのか?」
「機会があれば倒すさ」
「大洞窟で逃げ帰ったんじゃなかったか?逃げたならまだ難しいんじゃないか?」
周りの冒険者も乗ってくる。
「俺も勇者が逃げ帰ったおかげで大洞窟に閉じ込められて死にかけたんだ」
「勇者は臆病者だって聞いたぞ。怖かっただけかもな」
「逃げてない!今逃げたって言ったのは誰だあ!!!」
冒険者の言葉に勇者が反応する。
「でも、陽動に出ていた俺達を無視して帰ったんだろ?逃げたんじゃないか?」
今度は反対側から冒険者が口を出す。
勇者は振り返って反論した。
「今誰が言った!デマを流すなよ!」
新聞記者はカシャカシャとカメラを鳴らす。
「お前は撮るな!」
勇者の奴、嫌われてるな。
「はあ、はあ、君を倒す」
「大丈夫か?その炎の魔装は疲れるんだろ?」
「き、君の卑怯な作戦に屈する僕じゃない」
何もやってないぞ。
勝手に外野に反応して疲れただけだろ。
「俺も魔法を披露しよう」
俺はセイントビームを無詠唱で放つ。
勇者に直撃し、勇者は転げまわる。
「ぎゃあああああああ!」
「降参するか?」
「ま、待つんだ!なんだその魔法は!?」
「ただ光を束ねて撃ってるだけだぞ。名前を言わなきゃわかりにくいよな。セイントビーム!」
「ぐああああ!そういう問題じゃない!遠くから卑怯だぞ!」
俺は勇者にメイスを叩きこむ。
勇者の体がくの字に曲がり吹き飛ぶ。
「近接でも離れてても手も足も出ないよな。勇者の負けで良いだろ?」
「まけていない!僕は負けない」
俺は勇者の顔を殴り飛ばし、勇者は気を失う。
「セイが勝ったぞー!」
新聞には勇者惨敗の記事が1面を飾った。
勇者は嫌われている。
元々嫌われていたが、大洞窟の陽動を見捨てて撤退した件で更に評判を落としていたのだ。
もちろん勇者はまだましで、一番嫌われているのは賢者ライガだ。
ライガは今後さらに追い詰められる。
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