ポーション不足を解決する②

俺は毎日おにぎりにヒールの効果を付与した。


 飽きてきた!


 俺はエリスの前に行く。


「合宿だ!」


「急に大きい声を出してどうしましたの?」


 おにぎり回復薬はみんなに行きわたったはずだ。

 合宿するのだ。


「ガイと俺、サーラで合宿しつつ魔物狩りをする企画をしたい」


「良いと思いますわ。早速詳細を詰めていきますわ」


 ガイとサーラも協力的であっさりと事が運んだ。


 俺は3つ案があると言った内の1つしかやっていない。 

 2つ目の案も実行に移すべきだ。


 正確には後1つは確認待ちで止まっているので、出来ることが回復おにぎりか合宿しかない。


 回復おにぎりにヒールを寄与するのは飽きたのだ。


 あっという間に依頼が完成する。


 俺は依頼書を確認する。


______________________________


【キャンプで魔物狩り実施!】


期間 7日


人数 先着100名


必要な物 7日分のキャンプ用品と戦闘武具。魔石(サーラのお料理購入費として)


詳細


・賢者ライガにポーションを売ってもらうのを邪魔されているので、ガイ・サーラ・セイの3人がサポートしつつ森で魔物狩りキャンプを実施します。


・キャンプ地で『サーラの手作りお料理』を販売します。


・戦闘中はガイが『挑発』スキルでサポートいたします。


・魔力が続く限りセイとサーラの『ヒール』を無料で使い続けます。



_______________________________



 依頼書の下には楽しそうにキャンプをする絵が描かれる。


 更に合宿という修行っぽい言葉は使わず、キャンプという自由っぽい文字に変えてある。


 そしてライガの評判を落とすのも忘れない。


 冒険者はすぐ集まり俺達はすぐに森へと向かう。





 ◇





 道中サーラの料理は好評だった。


 おにぎりと汁物というシンプルなものだったが冒険者は喜んだ。


 サーラのおにぎり作りのレベルは上がり、大量のおにぎりをストックしてあるらしい。


「この豚汁うめえぞ!」


「サーラに渡してもらうのセットでご褒美だよな」





 魔物との戦闘も捗った。


「プラントトレントの群れだ!」


「俺が引き付けるっすよ!挑発!」


 プラントトレントのターゲットがガイに向く。


「今の内に倒すっす!」


 俺は無詠唱で皆にヒールをかけた。

 冒険者が100人居るのだ。

 あっという間に魔物は全滅した。


「すげえぜ!安全に進める!」


「これならいつもの数倍は稼げるぜ!」


 キャンプ予定地の周りを一周する。


「またプラントトレントだ!」


 サーラは拳銃を取り出す。

 バレルが長めで、命中精度が高いタイプだ。

 拳銃に魔力を込め、詠唱中のプラントトレントを優先して攻撃する。

 これにより詠唱を邪魔できる。


 サーラは射撃の腕を上げているな。

 ターゲットの判断も良い。的確に魔物の詠唱を邪魔している。


 その隙に他の冒険者が魔物を倒す。

 近くにいる全員に経験値が入るが、魔物の素材は倒した者が手にする仕組みだ。


 冒険者が叫ぶ。


「フェイズ2のプラントトレントだ!」


「フェイズ2が3体いるぞ!」


 フェイズ、魔物の進化を示す言葉だ。


 フェイズ1は豚やプラントトレントなどの普通の魔物。


 通常の冒険者なら問題なく討伐できる。


 フェイズ2は巨大化した魔物で、通常の魔物より戦闘力が上昇している。


 並みの冒険者でも命の危険がある。


 俺とガイが駆け出す。


 俺はフェイズ2のプラントトレント2体をメイスで殴って倒す。


 ガイの方を見ると、残り1体のプラントトレントを、確実に攻撃していく。


 問題無く倒せるな。


 ガイの直撃を受け、プラントトレントが倒れる。


 冒険者が沸き立つ。


「ガイとセイが居ればフェイズ2も安全だぜ!」


「ああ、今回は死亡者無しになるかもな!」



 みんなこぞって魔物を倒していく。


 俺はヒールをかけてみんなを癒す。


 俺は安堵した。

「すべて順調だな。このペースなら皆十分魔物の素材を手に入れられる」


「今日はキャンプするだけっすね」


 俺はマジックハウスを取り出す。


 ハウスが一瞬で姿を現すと入り口に立札を建てる


【風呂サウナ無料】


「良いっすね。太っ腹っす」


「まあ、大勢が使うには狭いんだけどな」


 風呂もサウナも大人数で入るには狭い。


 だが、文句を言う者は居なかった。


 冒険者は各自酒を持ってきており、焚火をしながら盛り上がる。


 中には大樽の酒を持ってきて、1ジョッキ500魔石で売り出す者も居た。


 自由だな。


 マジックハウスの1階はサーラの飲食店になる。


 お祭り感が出ていた。


 マジックハウスの2階は風呂とサウナで常に誰かが使っている為俺はテントで休む。


 サーラが入ってきた。


「ん?」


 サーラが俺に添い寝する。


「私頑張って射撃の練習しました。見ていてくれましたか?」


「そうだな。強くなってたぞ。というかテントなら他に何個か持ってるぞ」


 急に抱き着いてくるからびっくりしたぞ。

 むにゅっと肌の感触が柔らかい。


「そろそろ私をパーティーに入れてくれませんか?」


 あれ?俺のテント持ってるよ発言無視されてない?


「パーティーはまだ少し待ってほしい。あと一人近接系が居れば安定すると思うんだが考え中だ。テントならサーラの分もあるから出すぞ」


 俺が動こうとするのをサーラが更に抱き着いて止める。


「まだ頑張らないといけませんね。それでは一緒に眠りましょう」


 サーラは目を閉じる。


 俺の顔にサーラの胸が来るように抱き着いてサーラが眠る。


「サーラ、気を使って抱き着かなくても良いんだぞ」


「テントが狭くてくっつかないと不自然です。今日はこのまま眠りましょう」


 俺の理性はフル稼働した。


 欲望を抑える為に!


 



 次の日の朝になると俺は理性の勝利を自分で祝う。


 頑張った自分を褒めてあげたいです。


 その日も魔物を余裕で倒す。


 みんなを余裕で癒す。


 ガイが叫ぶ。


「フェイズ3のプラントトレントっすよ!」


 フェイズ3、冒険者を何度も亡き者にしている危険な魔物だ。


 フェイズ4になると魔人化し、最終段階になると言われている。


 フェイズ3は最終段階の1歩手前。


 魔人に迫る力を持っている。


 フェイズ3は体が人と同じ程度と小さくなる。


 しかし邪神の因子を強く受け、人と魔物の中間のような姿となる。


 人間に、木の特徴が合わさった化け物。


 体は人と同じような形だが、手から触手のように枝が伸びうねっている。


 体は木で出来ているが、中途半端に人に似ている為、気味の悪い見た目だ。


 本来は大隊を組み、大勢で包囲して戦っても多くの犠牲を出す魔物だ。


「ガイ以外は全員下がれ!」

 俺は叫ぶ。


「セイ!俺がひきつけるっす!挑発!」


「分かった!本気で倒す!」


 フェイズ3のプラントトレントがガイに迫る。


 俺は本気でメイスを何度も振る。


 フェイズ3のプラントトレントがあっけなく倒れ、体はボロボロになっていた。


 冒険者が唖然とする。


「お、おい!今のセイの動き、見えたか?」


「いや、気が付いたらすべて終わってた」


 ガイが駆け寄る。


「流石魔人殺しっすね!」


 冒険者がさらにざわつく。


「フェイズ4の魔人を倒しているのか!?」


「だが、あの動きをみると、嘘とは言えないぜ」


 俺は話を切り上げる。


「この調子でガンガン行こうぜ!」


「は、はははは!行けるぞ!今がチャンスだ!どんどん狩っていくぞ!フェイズ3も怖くないぜ!」


「僕もたくさん狩って母さんにお金を渡します!」


「次に行くっすよ!」


「「うおおおおおおおおおお!」」


 今日も魔物狩りは安全に終わる。


 だが夜のテントだけはうまくいかない。


 俺はサーラ用のテントを設置するがサーラは見事に無視して俺に抱き着いて寝ている。


 俺の理性はフル稼働し、更にブーストをかける。


 サーラの吐息が聞こえる。

 

 テントの中が少し熱く、サーラの肌は吸い付くようにしっとりしている。


 この無防備な寝顔が可愛い。


 すべてが強力!


 俺はぎりぎり理性を保ったまま朝を迎える。


 俺は高ぶっている。

 

 少し疲れよう。


 魔物を倒して疲労するべきだ。


 フェイズ3の魔物を何体でも倒せる気分だ。


 ガイの元に向かう。


「ガイ、そろそろ本気で魔物を倒したい!」


 俺とガイはフェイズ2とフェイズ3の魔物を倒す以外は、皆を守ることを優先していた。


 ヒールを使っても全く魔力が尽きない。


「いいっすね!俺も暴れたいと思ってたんすよ」


 この様子を周りの冒険者が観察する。


「ついにあの二人が本気をだすか!」


「伝説が幕を開けるのかもな」


 こうして俺達は本気で魔物を狩ることにした。


 プラントトレントの群れが迫る。


 森はプラントトレントが多く生息するのだ。


 ガイは挑発を使い近づく魔物を1撃で仕留めていく。


「すげえ!あれがガイの本気か!」


 俺は光のビームを飛ばし遠くの魔物を倒し、近くの魔物はメイスの1撃で倒す。


「動きが早すぎる!」


「気のせいか?今飛んでなかったか?」


「飛んでるって言うか、空中を走っている感じだったな」


「やっぱ俺達の為に2人とも力を抑えてたんだな」


「ああ、ストレスがかかるだろうに。申し訳ねーよな」


 あっという間に魔物を全滅させる。


「皆、まだまだ行くっすよ!」


「ガンガン行こうぜ!」


 ガイとセイの言葉にみんなが雄たけびを上げる。


「「うおおおおおおおおおおお!」」


 ガイとセイの戦いに触発され、皆本気で魔物を倒す。





 ◇






 その日の夜、キャンプは静かだった。


 冒険者は疲れ、早めに眠る。

 

 俺結構魔物を倒したと思うんだけど、疲れない。


 サーラが俺の隣で寝ているけど俺は元気だ。


 俺は瞑想し続けた。


 夜のサーラに苦戦する。




 昼は余裕で魔物を倒し、皆を回復させる。

 だが、夜のサーラには苦戦し続け、キャンプは終わる。




 ◇





 ギルドに帰ると冒険者はこぞって魔物を換金する。


「お、お待ちくださいませ!今魔物素材の受け入れを急いでおりますがしばらくお時間を頂いておりますわ」


 ギルドの処理能力を超える魔物が一気に納品されたのだ。


「これは落ち着くまでかかるっすね。俺達は後で納品するっすよ」


 キャンプ参加者は皆小金持ちになった。


 冒険者の宴会が始まる。


「へっへっへ!一か月は毎日酒を飲んで贅沢に暮らせるぜ!」


「ああ、装備も新しいのを買えるぞ」


「おーい!酒と特大ステーキを頼む!」


「魔法使いの姉ちゃんをおごってうまい酒を飲もうぜ」


「しかし、プラントトレントの群れが一斉に迫ってきた時はすごかったよな」


「はっはっは!ガイとセイの無双っぷりな。ありゃレベルが違うわ」


 冒険者達はキャンプ参加者ネタで盛り上がる。



 俺達はその様子を見つめる。

「景気良さそうな話をしてるな」


「でもおかしいっす。嫌な視線を感じるっすよ」


「キャンプに参加してない冒険者が縋るような目で見てますね」

 

 サーラとガイが周りを見渡す。


 キャンプ参加者は景気良く盛り上がる。


 だがキャンプに参加出来なかった者は捨てられた子犬のようにこちらを見つめる。


 光と影が色濃く映し出される。


「ガイ、サーラ、2回目も来てくれるか?」


「行くっすよ」


「セイさんについて行きます」


 こうして7日キャンプして3日休むサイクルを3回続けた。


 キャンプはとても好評で3回とも無事終わった。

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