ポーション不足を解決する①

周りを見渡し、ポーション切れで魔物狩りに行けない冒険者を見る。


 早めに解決する必要があるな。


「まずポーションの代わりのアイテムが欲しいよな」


「ポーションを作るには王家の認可が必要ですわ」


「作るのはポーションじゃないぞ。でも、一回ポーションの作り方を説明しようか。料理の保存容器を持ってくる」


 最初は説明で終わらせようと思ったが、一回作ってみるか。


 俺は料理中のサーラの所に取りに行くが、ガイとエリスもついてきた。


 「サワークラフトの保存ビンならありますよ」


 サーラがビンを差し出す。

 ポーションのビンで作ってそれがバレたらかなりまずい。

 サワークラフトのビンで作ってもアウトだが、ばれにくくなるし言い訳できるようになる。


「ありがとう」


 俺はビンを浄化して生活魔法でビンに水を入れる。


「まずきれいな水に、まあ果実水でもいけるんだけどな」


「きれいな水じゃないと難易度が上がります。セイさんが特別なんです」


「これにヒールを2回込める。そして封印魔法を使えばポーションの完成だ」

 ヒールを水になじませる時ロスが出るから2回ヒールを使うけど、魔力が高ければヒールは1回で十分だ。


[あれ?今詠唱しなかったっすね?」


「そうだな、見てくれ、これがポーションだ」


 俺はガイとエリスにポーションを見せた。


「セイさんは一瞬で作りましたけど、本当は水にヒールをなじませるためゆっくり時間をかけてヒールを2回使います。セイさんが特別なんです」


「で、本題はここからだ。おにぎりにポーションの効果を付与してみたい。サーラ、おにぎりを50個作ってくれ」


「分かりました!作って持って行きます!」


 サーラは笑顔で答える。





 テーブルに戻るとガイが不思議な顔をする。


「おにぎりにポーションの効果を持たせることが出来るなら、なんでポーションで作ってるんすか?」


「それはな」


「出来ました!」

 サーラがおにぎりを持ってくる。


 サーラが大量のおにぎりを持って来たことで周りの冒険者がこちらに注目する。


「早くないか?」


「ちょうどご飯が炊けていたのですぐに作ったんです」


「ありがとう。早速やってみるぞ」


 俺がおにぎりに魔法をかけていくとおにぎりが一斉に光り出す。

 周りがざわつく。


「は、早すぎます!」


「やっぱりっす!やっぱり無詠唱っすよ!」


「無詠唱は高速詠唱より高度なスキルですわよ」


「それは良いとして、これで完成だ。」


「さらっと流しますのね。無詠唱は高等技術ですのに」


「それよりもおにぎりにヒールを添付する能力がすごいですよ!固体にポーションの効果を持たせるのは難しいんです。きっとセイさんしか出来ません!」


「だからおにぎりのポーションが無いんすね」

 ガイは納得したように頷く。


「ただ、弱点が2つある」


 皆が注目する。


「ビンじゃなくおにぎりに直接封印魔法をかけているせいで回復効果が劣化しやすい。これはストレージに入れておけば解決できる」


 ストレージに入れると時間が止まる。


 劣化を止めることが出来るのだ。


「もう一つが回復効果はポーションよりじわじわ出る。ポーションは1分かけて少しずつ回復していくが、回復おにぎりは3分とか5分かけて効果が分散して出てくると思う」


「それは問題無いっすよ。1番の問題は戦闘中に食べにくい事っすね。でもこれがあれば皆魔物狩りに行けるっすよ」


「そうか、戦闘中は食べにくいよな。だが、液体で作ると『それはポーションだろ』って言われそうなんだよな」


 というかこの回復おにぎりもグレーゾーンを攻めている。

 突っ込まれる可能性もあるよな。


「で?いくらで売るんすか?」


 冒険者全員が注目する。

 

 ガイが俺をじっと見る。


「期間限定の1個3000魔石でどうだ?おにぎりは全部サーラに作ってもらって、俺がヒールの効果を付与する。サーラの儲けが1000、俺が2000にしたい」


「おにぎりを作っただけで1000魔石は多すぎます」


 おにぎりは1個100魔石で買える。

 つまり1個900魔石の利益が出るのだ。


 100個も売れば9万魔石以上の利益が出る。


 それだけで一か月質素な生活が出来るのだ。


「言ってなかったな。サーラに販売を一任したい。販売の手間込みで1000魔石だ」


「それでも多すぎですよ」


「ですが、確かにサーラの専売にしておけば、普通のおにぎりを騙して売る者は居なくなりますわ。サーラはセイに信頼されてますわね」


 サーラが照れる。

「分かりました。やります」


「早速試しに行きたいっす!みんなで回復おにぎりを買って魔物狩りに行くっすよ」


 ガイの言葉に他の冒険者は回復おにぎりを買い、魔物狩りへと出かけていった。


 ガイの動きが早いのはいつもの事だが、他の冒険者の動きも早かった。


 お金が無くなりそうな冒険者が多かったんだろう。





 回復おにぎりは問題なく効果を発揮した。


 ガイが帰って来るとすぐに結論を言った。


「今度は1万個作って欲しいっす」


「サーラは大量におにぎりを作れるか?」


「1日1000くらいは作れると思います」


「とりあえず1000から始めてみよう」


 役に立ったのはうれしいがいきなり1万個って言われると引くぞ。


 だが、飽きるまで作ってみるか。


 俺は毎日おにぎりにヒールの効果を寄与する。


 これによりセイとサーラの評判は上がる。


 そしてライガは冒険者ギルドからの評判を更に落とす結果となる。


 




 

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