ポーション不足を解決する③

3回のキャンプを終え、ギルドのテーブルでサーラの料理を待つ。


 サーラが笑顔でテーブルにやってくる。


「今日は肉じゃがとご飯、ひじきの煮物です」

 

 俺の好みで肉じゃがの汁を多めにしてもらい、みそ汁無しでお願いした。


 サーラが俺の隣に座る。


 ガイがサーラの料理をおいしそうに食べつつ俺とサーラを見る。


「うらやましいっす」


「どうした?」


「俺も彼女が欲しいっす!」


 ガイは周りを見渡す。

 魔法使いの女性はリア充冒険者に独占されている。


 男冒険者の左右に魔法使いの女性がもたれかかるように身を預ける。


 ガイは木のジョッキを握りつぶした。

 シュワシュワと手が酒で泡立つ。


「魔法使いのお姉さんとイチャイチャしてるのがうらやましいっす!俺は皆を助けようとがんばってきたっす!でも助けたのはほぼ男!男にだけ感謝されてお姉さんとは話を出来ていないっす!不公平っすよ!」


 周りのリア充冒険者は女性魔法使いに世話をされる。

「ねえ、頬に食べ物がついてるよ」

 魔法使いのお姉さんは頬の食べかすを口でなめてきれいにする。


 ガイに握られ割れたジョッキは『メキメキ』と音を立て、さらに細かく割れる。


 ガイの怒りを感じる。 

 

 確かにガイは男の面倒を多く見てきた。

 ガイは戦士で指導する新人も戦士が多くなる。

 戦士は男が多いのだ。


 ガイは顔も良いし、機会さえあれば彼女が出来る気がする。


「なあ、ガイ、治癒士の女性と一緒にキャンプや魔物狩りを出来るとしたらどう思う?」


 ガイがこっちを向く。


「時期が来たら治癒士ギルドのトップと話をしに行くんだけど、もし治癒士のお姉さんが冒険者ギルドに来たらどう思う?」


「最高っすね。たくさんお嫁さんを貰いたいっす!」


 年頃の男は良く死ぬため、一夫多妻制で、冒険者ランクが上がれば結婚できる人数が増えていく。


「ガイ、目標が決まったな。もちろんガイも話し合いに来るよな?」


「もちろん参加するっす!」


 ポーション不足問題3つめの案は治癒士ギルドと話し合いをして、治癒士を派遣してもらうよう頼む事だったのだ。


 回復おにぎりは作り飽きた。


 ガイ・サーラ・俺が協力する魔物狩りキャンプもずっと続けるのは違うと思う。


 ポーションが不足している今、治癒士を冒険者ギルドに派遣してもらうのが手っ取り早いのだ。


 サーラが不機嫌になる。


「他の治癒士はセイさんとは合わないです!」


 サーラが大きい声を出した。


「お、おう」


 サーラの機嫌が悪くなり、ガイの機嫌が良くなる。








【次の日の午前】


 ギルドでエリスが声をかけた。

「治癒士ギルドのギルド長と会談の段取りが済みましたわ」


「ずいぶん時間がかかったな」


「治癒士ギルドがごたついていたようですわ。ギルド長がライガを止められないという理由で、辞任しましたの。新しいギルド長はジャンヌさんに変わりましたわ」


 ライガのせいでギルド長が辞めたのか。

 ライガが居なければごたつくことも無かっただろうな。


 ギルド長の評判は悪くなかったはずだ。


「戦う治癒士のあのジャンヌっすか?」


「治癒士なのに並みの戦士じゃ歯が立たないあのジャンヌですわ」


「セイさんと似てますね」


「俺の恩師だな」


「「え?」」


「だから規格外なんすね」


「納得ですわ」


「初耳です!」


「そうか、言ってなかったかもな」


「今日はいつ行っても会談に応じてくれるそうですわ」


「今すぐ行こうか。ガイとエリスは当然来るよな?」


「行くっすよ!」


「わたくしも行きますわ」


「わ、私も行きます!」


こうしてすぐに治癒士ギルドへと向かう。


 冒険者ギルドのギルド長は基本丸投げで表に出る事はあまりない。


 丸投げされる代わり、失敗に寛容で失敗してもいいからやって見なさいと言うスタンスがやりやすい。


「ガイ、今回の会談できれいなお姉さんの治癒士を派遣してもらえるかがかかっている」


「そうっすね。頑張るっす」


「大事な会談だな」


 サーラがジト目になる。


「さあ、早く行くっすよ」


 ガイが先頭を行く。

 町の中央部、治癒士ギルドを目指す。


 サーラが腕に絡みついてくるが、いつもより力が強い。


 治癒士ギルドにたどり着くと受付嬢が対応する。


「サーラとセイ君ね、どうぞ」


 俺達はすんなりと案内される。


 受付嬢が俺の隣に立ち、話をする。


「セイ君、久しぶりだね。背が大きくなったよねえ」


 サーラが俺と受付嬢の隣に割り込んでくる。


「サーラはセイ君が大好きなのね」


 受付嬢に頭を撫でられるサーラだが、そんなことは気にせず治癒士の女性に目を光らせ続けた。


「サーラ、何故か治癒士を警戒してるな」


「きっと、他の治癒士がセイに近づいたら居場所がなくなると思っているんですわ」


「ここだよ。さ、どうぞ」


 ギルド長の部屋に案内される。


「セイ、久しぶりだな」


 美人ではあるが騎士のような印象を受ける。

 

「まず、マリナの顔を見ていくか?」


「見たいぞ」


「マリナ!誰ですか!?治癒士ですか!」


 サーラは治癒士の女性を警戒する。


 ジャンヌが答える。

「いや、セイの育ての姉だ。すまないが会談は少し待て欲しい。飲み物とお菓子を用意してもらう」


「かまいませんわ」


俺はジャンヌにギルド奥のカプセルに案内された。




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