覚醒

俺は皆を逃がした後大洞窟で戦い続けた。


 みんなを守らず全力で戦える。


 この大洞窟で俺はどんどん強くなっている。


 倒した魔物の生命力を吸収し、どんどん力が増してくる。

 

 治癒院で働いている時に比べ、俺は前向きに考えられるようになっていた。


 何日も何日も戦い続けた。


 しばらくすると、俺の目の前に魔人が現れた。


 魔人に目をやる。


 魔人はストレージを使い椅子を出し、そこに座った。


 訳が分からないぞ。


 全身ガイコツにローブを纏い、左手には黒いメイスを握る。


 まるで王様のようにふるまっている?のか?


 魔人がしゃべりだす。


「ぐふふ、治癒しか能の無い治癒士か。楽しませてもらおう」


「「あの治癒士を殺すのだ!」」

 まるで大勢で叫んだかのように声が反響する。


 大量のスケルトンと大量のレイスが通路のいたる所から現れ、俺に向かってくる。


 俺は力を抜いてメイスに光の魔力を流し込む。


 レイスとスケルトンをメイスで倒していく。


 魔人は座ったまま動かない。

 右手で頬杖を突き、左手には黒いメイスを地面に突いたままこちらをただ見ている。


 俺はしばらく戦い続け、大量の魔物を倒し尽くす。


 魔人はパチパチと手を叩く。


「ふむ、すべて倒したか、弱き治癒士にしてはやるようだな。褒美に好きなだけ攻撃させてやろう。もっとも貧弱な治癒士に我を倒せるとは思わんがな」


 俺は必至で魔人にメイスを撃ち込むが、何故か魔人は一切抵抗せず笑い続けていた。


 ガイコツの頭部が砕け、確実にダメージを与えていく。


 魔人が倒れると、時間を巻き戻すように起き上がり、魔人のダメージも修復された。


「ぐふふ、我はアンデットの長にして108の魂を持つ者、我を108回倒さねば勝利は無い。絶望したか!ぐふふはははは!」


「何だって!」


「絶望したか!その顔が見たかった!ぐははははは!」


「経験値を稼ぎ放題じゃないか!セイントプリズン!」

 魔人を光の牢に閉じ込め、その光が魔人にじわじわとダメージを与えていく。


「強がりがいつまで続くかな?ぐふははは・・、何だこの威力は!?」

 魔人の体が崩れていく。


 更に、「セイントビーム!」

 収縮された光が魔人を焼いていく。


「何だその魔法は!?ぐおおおお!」

 魔人が倒れ、また復活する。


「セイントビーム!」


「だから何だその魔法は!見た事が無いぞ!」

 魔人が倒れ復活する。


「ただ光を圧縮して打ち出しただけだぞ。セイントビーム!」


「ぎゃああ!おま!ちょ!ま、ま待てよおおぉ!」


 こうして魔人を何度も倒し、大量の経験値を得ていった。


「好きなだけ攻撃出来るぞ!セイントビーム!」


 力がどんどん増してくる!


 セイントビームの威力が上がっている!


「ぐおおおお!もう終わりだ!好きなだけ攻撃するのは終わりだ!」


「えええええええ!まだ好きなだけ攻撃出来ていないのに!」


「ぐふふ!調子に乗るなよ!奥の手を見せてやる!スケルトンヘル!」


 魔人を中心に地面が黒く染まっていく。


 地面から大量のスケルトンが黒い闇から這い出てくる。


 まるで地獄絵図だ。


 俺は大量のスケルトンに囲まれる。


「セイントビーム!」


 俺はひたすら魔人を中心に攻撃を続ける。


 正直スケルトンが多くても脅威にはならないな。


 迫ってくるスケルトンをメイスで倒していった。


 どうやら魔人は攻撃を受け続けるとスケルトンヘルを使えないようだ。


 そして魔人が復活する瞬間は無防備になっている。


 つまり、魔人を集中攻撃すれば一方的に攻撃出来るぞ!


 しかもスケルトンの魔人に光の魔法はかなり効く!

 

 



【魔人討伐30回目】


「貴様のやり方には致命的な弱点がある。それは魔力の枯渇だ!」


「そうか、セイントビーム!」


「ぐおおおおお!」


 俺は魔人を倒し続けた。






【魔人討伐50回目】

「貴様、なぜ魔力が尽きない!そ、そろそろ貴様との戦いも飽きてきた。貴様が撤退しても見逃してやろう」


「魔力には自信があるし撤退は断る!セイントビーム!」


「ゴオオオ!聞けよお!」


 俺は魔人を倒し続けた。






【魔人討伐??回目】


「あれ?何回倒したか忘れてしまったな」


「も、もうあきらめて帰ったらどうだ?いや、見逃してやらんこともない」

 魔人は明らかにおびえていた。


「帰らないぞ。セイントビームに飽きてきたな」


「は?何を言っておるのだ?」


 メイスに光の魔力を送り、メイスで魔人を撲殺する。


 魔人は時間を撒き戻すように復活するが、俺はその復活に逆らうようにメイスを何度も何度も振る。


 魔人のストレージが開き多くのレアアイテムが出てくる。


 これは魔人を完全に倒したことを意味する。


 治癒士学校で戦闘の訓練を続け、治癒院時代には魔力が大幅に上昇し、3年近くにわたる冒険者時代には魔物の生命力を吸収し、力を高めてきた。


 魔物を倒すことで力が増す。

 魔物の上位の存在である魔人も例外ではない。

 魔人を108回討伐し、俺の力は急速に上昇した。

 大洞窟での戦いは閉じ込められ連戦を続ける事で俺の技量も急速に上がった。


 魔人のストレージはレアアイテムがあった。

 

 だが一番の収穫は魔人が持っていたメイスだ。

「良い武器持ってるな!」

 使わせてもらうぞ。


 魔人の誤算は俺の魔力が尽きると思っていた事だ。


 思い込みは良くないな。


 俺は治癒院時代に魔力と魔力回復量が大幅に上がった。


 その状態で大量の魔物と魔人を倒す事でさらに魔力が上昇する。


 俺は魔力の『超回復』と『超容量』を併せ持つに至った。


「さて、もう少し魔物を倒してから帰るか」


 俺は大洞窟の魔物狩りを再開した。



 





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