「07」来たけれど

 タクシーに揺られること数十分──。

 程なくして尼崎遊園地に到着した。

「ご乗車、ありがとうございました」

 運転手さんに遠隔でドアを開けてもらい、俺はタクシーから飛び出すように外へ出た。


『ようこそ! 尼崎遊園地へ!』

 掲げられた看板の横を通り抜け、正門へと向かう。

 どうやら入場にお金が掛かるらしくチケット代六千八百円をそこで係のお姉さんに支払った。


「それでは、行ってらっしゃい!」

 係のお姉さんが地図の載ったパンフレットを渡してくれたので、俺はそれを受け取り入場ゲートを潜った。


 園内はそれなりの広さがあった。

 ジェットコースターに観覧車、メリーゴーランドにコーヒーカップ──他にも売店やレストランなどの建物が並んでいて、定番のものはそれなりに揃っているようだ。

 とは言え、地域の遊園地だからか人の往来も少なく、まばらであった。


 お陰で、移動はスムーズにいけた。

 俺が遊園地内を走っていても、それを気に止める人は誰もいなかった。


 娘のために、俺はひたすらに走った。

 だが、具体的な監禁場所を特定出来ている訳ではない。ただ、がむしゃらに走って園内巡りをしただけになってしまう。


──どこだ?

──何処に居るんだ?


 本当に、この遊園地内に居るのか──此処まで来ては見たものの、この先はノープランだ。

 はて、どうしたものかと俺は頭を悩ませたのであった。

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