第35話 禁忌の地での戦い
アキラはあの妖精と楽し気に話していた、やれ出口はどこだのなんだのと......知らないのだろうか、それともあの伝説はウチの故郷だけの話だったのか。
『妖精は気まぐれで無邪気、故に恐ろしい存在』
妖精と契約をした人は力を得る代わりに妖精からお願いを頼まれる、そのお願いというのは容易なものから実質死ねと言っているようなものまで様々で妖精によって起こされた悲劇のお話というのも知っている。
だから妖精は怖い存在と聞いて来た。
「へぇ、じゃあアキラは急いでここから出ないといけないのね?」
「そう、みんな心配しているはずだ」
ディア=キルクナン、どうして接触してきた?
「ディア?」
「なにかしら?」
勇気を振り絞り、ディアがどうしてついてきてたのか聞いてみる。
「そうだった、なんか俺たちに近づいてたよな」
ディアは思い出したように話す。
「理由なんて、アキラの魔力から懐かしいものを感じたから、何だろうって」
「懐かしいねぇ......お前年齢は?」
「うーん何歳かしら、竜がふんぞり返ってた時代だから、1000は超えてるけど、数えてないからわからないわ」
「1000歳以上、はぁすごいなぁ」
1000年前、ということは――
「――じゃじゃあ、レギアについて、レギアの
ウチが子供の頃に聞いた伝説のアイテムたち!
「......へぇその名前、久しぶりね」
「シメト、その
それを一つでも売れば3代にわたり遊んで暮らせるとも言われるし、そのアイテムを利用できれば国を相手にしても勝てると言われる。
【灰の祭壇】が主に狙っているのだってその
「教えてあげたい所だけど、今どこにあるのかはわからないわ......」
「1000年前の戦争とその後の戦禍でどっかに消えたものね、まぁそれ以前に
レギア王家に精通しているこのディア=キルクナン、一体なにものだろう?
「その
アキラが問う。
「魔道具はただの道具だけど
「そりゃ早く帰りたい、みんな心配してるはずだ」
「そうなのね、わたくしが助力すればすぐに帰らせることも出来るけど――」
◆◇◆◇
「アキラっどうしてあの妖精のお願いを聞いたんだよ」
「なんだか可哀そうだろ?」
「ウチは妖精と約束する前に忠告したぞ、迂闊に約束するなって!」
シメトはグチグチと文句を言っていた、曰く妖精は怖い噂が絶えないとか何とか......
とはいえディアの協力があった方が早く帰れるだろうから俺は彼女の依頼を受けた。
『ここには多くの遺跡があるの、大切なものも多い、だから人が入らないようにしていたのに最近になって人が侵入しているわ、彼らを追い払ってほしいの』
「......それに遺跡に人が入ってるって......ここは禁忌の地、入ってる訳がないだろうにさ、大体妖精なんだから自分で何とか――」
シメトは不満が絶えない様子でディアから聞いた場所まで移動していく。
「でも、武器貰えたぞ、結構良い武器らしいし」
依頼を受けるにあたり、ディアから剣を貰った。
「ウチは貰ってないけどなッ」
「グチグチ文句言ってたからな、嫌われたとか?」
「んなこと......あるか......」
そんな風に話ながら目的地まで歩いていった。
■
シメトは口元を両手で塞ぐ、俺も音を出さないようにどうにか隠れる。
「......」
目的地に着いたと思ったら緑色の鎧を着ている奴がうろちょろしていて咄嗟に隠れた。
「(嘘だろ......ありゃコゴートの兵隊だッ)」
「(なんだって?)」
なんでそんな奴がこんなところに......。
「(に、逃げようアキラ!)」
「(逃げようっつったって......)」
「――む?」
一人がこちらに向く。
「「(ッ!)」」
とにかく息を殺すしかない。
「......我ら以外にいるわけないか......」
兵士はそのままこの場を離れていく。
「......」
俺はシメトと一緒に木陰から出る。
「行ったみたいだ」
「今のがコゴートの兵士か?」
「そう、故郷で嫌って程見た」
「なんでこんな所に......」
コゴートは北の国のはずだろ?
「レギア跡地の北部はコゴートにも隣接しているけど......普通じゃないこれ、何考えてんだか」
シメトは何かを考える。
「......あいつらがディアの言ってた遺跡荒らし?」
数十人はいる、流石に二人でこれは荷が重い。
「おい、流石にこんな数は無理だぞ」
「ん~そうだなぁ......」
シメトが俺を揺らしながらそういう、まぁ少し分が悪い、一旦戻って――
「――見つけた」
「ぁ――」
背後から聞こえた声と後頭部に響く衝撃――しまった、後ろを突かれた。
「――ッ」
咄嗟にシメトの服を引っ張りそのまま距離を取る。
「大丈夫か、おい!?」
シメトは当たり所が悪かったのか意識を失っている。
「......クソ」
まぁこっちも頭を思いきり殴られた所為でめちゃ痛いがな。
「......少々手加減をし過ぎたか」
男は手の籠手を何度も握りしめてこちらを見る、奴は緑色の鎧を着て紺色の髪をなびかせる。
「さて、投降しろ」
いきなりすぎる、大体後ろから籠手で俺たちの頭を殴りつけてくる奴なんて怖くて投稿なんて出来ないな。
「断る......それでだ、今回の見なかった事にするから見逃しては?」
「答えはわかっているだろうに」
籠手から魔力が溢れている、だろうと思った。
「......」
気が付けば辺りにも兵士が集まって来た。
「こいつの相手は俺だ、他の者が手を出す事は禁ずる」
一対一で良かった、と思っていたら――
「――『聖滅』」
拳を俺に振るうとそれは光の衝撃波となって俺に襲い掛かる。
「――」
間一髪、身体を反らせどうにか避ける。
「ここは禁忌の地なんだろッ目的はなんだ」
「ふん、同じく聞こうか、お前は何故ここにいる」
「なんでいるって、ただの事故ッ!」
姿勢を奴の腰まで下ろしながら一気に間合いを詰め――
「――『ファイアボール』」
下から顔面に魔法を撃つが――
「――『崩拳』」
「ッ」
俺の自慢の魔法火力を相殺どころか貫通して叩き潰さんと殴り落としてくる――
「――ぐあ!」
咄嗟に剣で防御態勢を取る――
しかし、奴に剣の防御は意味がなかった、その剣から伝う衝撃は俺の全身を痛めつける。
「う、ぐぐッ」
「中々の魔法火力だ、正直驚いた、だが――」
「――『ファイアボール』」
ファイアボールですぐに距離を取る。
「甘いな、お前戦闘慣れしていないな?」
「はぁ......はぁ......」
「剣を人に立てる度胸がない、何処か躊躇してしまっている」
「......はぁ......だったらなんだよ」
「いや、構わない、それで俺に勝てるというのならな?」
奴は拳にしかも両方に魔力を込め始める。
そうだ、確かに躊躇していた、今まで人と戦う事はあったし、だけど慣れないと思ってしまう、何処か避けたいと考えている自分は確かにいる、が。
「度胸がないとか好き勝手抜かしやがって、殺したくないって思って何が悪いッ!」
ディアから貰った剣『斬魔の剣』魔力の出力を高め殺傷力を高める剣、さっきのは初めてだったから、上手く出来なかったがもう大丈夫だ。
「ほう、変な剣だな――が、無意味『廃滅』」
両方の籠手に貯めた魔力は黒く染まる襲い掛かる。
「そんな剣如きで、全てを破壊するこの拳を――ッ」
バキンッ
剣と拳が対峙する。
「まさか止めるとは、だが――」
奴の方が上手ッ、アイツ籠手だけ剣と渡り合ってやがる。
「我が拳はコゴートで№1だ、お前のようなよくわからん奴に負ける拳はしていない!」
「そうかよ、どうでもいいッ」
「――ッ舐めるなよ」
俺は押されている、それは確かだ、だが残念ながらこの剣は妖精の貰い物だ、なんでもこの世界の妖精はすごい存在らしいし、そんな存在から貰った武器だ。
お前の籠手、そこまで耐久あるのか?
ピキピキッ
「――ッ!?......ありえない、たかだか剣のぶつかり合いで我が籠手が――」
「これは妖精からの貰い物だッ」
「妖......妖精ッだとッ!?」
「――今だッ」
「しまッ――」
瞬間明らかに奴は動揺しその隙を突くように――
「――『魔光破』」
そのまま胴体を魔力の衝撃波で吹き飛ばすッ!
「――くッ!」
奴は咄嗟に防御の構えを取るが、籠手と奴の鎧は粉砕しそのまま吹き飛ばされていった。
恐らくまさかの敗北に周りの兵士共も動揺を隠せていない。
「なぁ、今回は穏便に済ませないか?妖精と約束したんだよ遺跡にいるお前らをどうにかしろって、別に殺せとか言われてないしさ」
俺はとりあえず説得する、正直、これ以上の戦いは避けたいし体力的にキツイ。
『斬魔の剣』思った以上に魔力を消費するようだ。
「待てッ」
そう叫ぶのはさっき俺が吹っ飛ばした男だ、復活が早い。
「お前、お前の名は......」
「う~ん言っても良いものか......まぁいいか、俺はアキラ、アキラ=フジワラ」
「......俺はイルルク=メルジオ」
イルルクは既に戦える状態ではなさそうだ。
「今回はお前に華を持たせよう」
イルルクがそういうと辺りの兵士は困惑した表情をする。
「......どうしてここにいたんだ?」
「......言えんな」
だと思った、国家レベルの話なんだろう。
イルルクは兵士を連れて帰っていく、あの感じからしてレギア跡地の地理に詳しいのだろう、恐らくあいつは嘘をついてまた戻る......という性格ではないはず。
イルルクは最後にこちらへ向いた。
「......お前とはもう一度戦いたいものだ」
「......え」
嫌です。
■
コゴートの兵士たちがいなくなり、シメトは――
「お前ふざけんなよ、コゴート兵士との接戦を眠りこけて見てなかった癖に今度はおぶれとか」
「きついな、きついなぁ」
こいつは頭を殴られた時の傷で上手く歩けないと言っていた、しかしこれは嘘だ、こいつは意識戻ったとき普通に歩いてたし、なんかもう一度寝てあぁ起きられないとか抜かしたのだ。
「良いじゃんか、少しくらい」
「俺がおぶられたいくらいだよッ!」
「あぁ頭痛い、お腹空いた」
「俺もなッ!」
結局シメトをおんぶしてディアの元まで歩く羽目になった。
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