5-9.ラスボスに驚いてもらうためには/失敗から学ぶ

5-9.凶行


パトリオとのバトルは前回でほぼ終了していますが、今回もすこし引っぱっています。その次の、フィリップとジェイデンのバトルにつなげるためのワンクッションですね。スーリが聞く石たちの言葉とか、超自然的な描写とかは、わりと(アイデア的には)おもしろく書けているんじゃないかと思います。石が人間と意思疎通するとしたら彼らの目的はなにかとか、人間と違う視点はどのあたりかとか、そういうのを考えるのが好きなんです。このへんは、自分の読書ベースがファンタジーよりもSF寄りだからかもしれません。


さて、本題のフィリップ対ジェイデン。

ここにいたるまでに伏線を張ってきたので、読者さん方にはここではびっくりしつつも「あー、やつがラスボスだったのか~!」って思って楽しんでもらえればうれしいわけです。わりと複雑な話にしがちなので、今回は意識して要素を削って、読者さんに「そうかもしれないと思った~」くらいの印象を持ってもらえていれば成功だな!と思ってます。どうでしたか?


いただいたコメントを見るに、あんまり成功してないな~という感じでしたね。


そもそも、ゲストキャラをのぞいたレギュラー陣はスーリ・ジェイデン・オスカー・フィリップ・ダンスタンの5人です。急に出てきてあやしさ満点の兄ジョスランもくわえても、ラスボスになりうるのはフィリップかジョスランくらいでしょう。ダークホースでオスカーを入れてもいいですけど。これくらい舞台設定がシンプルでも、コメントくださった方はほとんどが意外に思われたみたいなので、ちょうどいいあんばいに伏線を張るというのはかなり難しいことだなと痛感しましたね。


コメントを書いてくれる人というのはほとんどの場合、かなり読みこんでくれている人なので、この方たちには予想できる範囲くらいで書けるのが一番理想に近いかなと思いました。つまり、もっと積極的にヒントをちりばめていくべきということですね。このメイキングを読まれている作家さんは私より熟練の方が多いので言わずもがなかもしれませんが、自分が思っているよりも伏線まわりの情報はしっかり、読者につたわる形で書くようにもうひと押しを意識するといいかもしれませんね。


こういうことを書くと、「いやいや、自分の読解力が……」と謙遜けんそんする方もおられるんですけど、でも、やっぱりここは読者の呼吸にあわせて伏線を出していける能力というのが小説には大事なんだと思うんですよ。だって、フォロワーさんの小説を読んでると、ちゃんと「ああ! 私も怪しいと思ってた~!!」みたいな感じで犯人を出してくるタイプの小説もありますもん。そういうのが、やっぱり、うまい小説なんだと思います。


そういうわけでここは改稿の余地があるな~と自分で思っているパートでした。


肝心のバトルについては、わりとシンプルでわかりやすく書けているかなと思っているところです。フィリップは、まず毒殺をもくろんでジェイデンにワインをすすめ、断られたのでいきなり実力行使に出たという形ですね。このあたりの不器用さが、フィリップの人間性をあらわしているんじゃないかなと思って気に入っています。本来は、正々堂々としたタイプで、あまり卑怯な手を使うのは苦手なひとなんですよ。


不器用だからこそ、実の息子ジョスランに愛情をかけられなかったし、その隠れみのとしてかわいがっていたジェイデンに情が移ってしまったし、かといってジェイデンがそのまま王になるのをよしとしない思いもあって……みたいな。男としてはロマンがありますが、恋人としてはめんどくさいタイプの男なので、ジェイデンの母が彼を見限ったのもそのあたりが理由だったのかもしれません。




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