5-1.兄王子の登場

5-1.スーリ休診中


いよいよ最終話に入ります。


全体の構成でいうと、第四話にかなり大きめの山があって、そこから降りないまま、さらに大きな山を登っておりて大団円、というのが五話の役割ですね。なので、第四話のほうがじつは書くのは大変でした。五話のクライマックス部分は最初からのアイデアで、あとは四部からのテンションをしっかりつなげることを意識して書きました。実際には五話まで書き終ってからもずーっと四話をなおしてました。


さて、ジェイデンの裏切りが発覚し、傷心中のスーリ。扉にも休診中の札をかけ、寝室に閉じこもってしまいます。心配するダンスタン。


「すべての男が怪物ではない」「だが、そう思わせることも、怪物のねらいのうちなのかもしれぬ」というダンスタンのセリフは、難解なのでアップ直前に削ろうと思ったんですが、気に入ってしまい結局残しておきました。スーリにとっては、最初の男の失敗のせいでジェイデンの真意を信じられなくなっているんですね。彼女にそう思わせるような、呪いになるような言動を「あの男」が取っていた、という意味です。


傷心のスーリはもうすこし長く書こうかなとも思ったんですが、ここは最終話ですし、あまり中だるみさせたくないのもあって、この5-1の中盤にはもう来客を迎えることになります。うまく機能しているかはわかりませんが、各話の冒頭に依頼人がやってくるという形式を踏襲したのは、結果としては気に入っています。


そうそう、来客の直前にやってくる使い走りの少年メル。「先生いそがしいのかなあ、書き取り帖を見てほしいなあ」とかわいいことを言っています。このメル、おまけにて意外な事実が明らかになりますのでお楽しみに。その事実を知ってからここを読み返すと……なんか笑えます。


さて、本題に戻って、最後の依頼人です。女性的な美貌の貴公子。そう、ジェイデンの兄ジョスランでした。第二話、イドニ城の肖像画で一度、顔と名前が出ています。(そのために出しました)


最初は会話だけで進めていたんですが、アップ直前にチェックしていて動きがぜんぜんないことに気づき、あわてて診察シーンを入れました。クライマックスの伏線回収にも使える重要パートですが、むしろなぜ直前まで思いつかなかったのか。ほんと、気をつけないとすぐ会話だけで終わらせてしまうなあ。私はたぶん会話は得意なほうだと思うんですが、そのデメリットというか、動きが入るべき場面でも会話だけで済ませてしまうことが多々あるようです。気をつけないと。

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