4-10.ジェイデンの騎士たちについて

4-10.手紙は記憶を語る


前半、ある登場人物のもとにあらわれた悪魔が「イエス、イエス」となぞの肯定をします。ブラッド・ピットが美しい死神を演じた映画『ジョー・ブラックによろしく』の作中シーンの模倣です。悪魔じゃなくて死神ですけど、あんまりべらべらしゃべらず、人物の欲望にスポットがあたっているのがおもしろいと思って記憶に残っていました。


さて、だれの欲望、だれの魔法なのか。5-10まで読めばわかると思います。


もともとは後半のシーンだけの回でしたが、尺があまったので付け足したシーンです。第一部の大ボスが、なぜ作中の犯行にいたったのかの理由づけのひとつとして、ちょうどよかったんじゃないかと思います。


後半はスーリのもとにドレスを返しに来るヨハンナが、彼とうまくいきそうだと話してくれます。従騎士は、騎士や貴族階級の子弟が修行のため騎士に仕えるものなので、村娘にとって彼との恋は前途多難。もしかしたらひと夏ならぬひと秋の恋で終わるかもしれないというあきらめものぞかせています。それでも、思いを伝えられたからいいというヨハンナ。けなげ……。


このふたりの恋は主役カップルとの対比にもなっているので、スーリは自分とジェイデンとを重ねています。このあたりは、気に入っている箇所です。


最後、気になる情報を打ち明けてくれるヨハンナ。騎士たちがこの家にちょくちょく来て、スーリのことも知っているといいます。これがスーリには衝撃だったのですが、読者にはわかりづらいシーンだったかなと反省。


まず、ジェイデンが騎士たちをイドニ城につれてきていることがどこにも書かれていません。なにかことが起こったときにはフィリップの兵やオスカーの率いる巡察隊、祭で出会った男たちwなどを動員しているので、彼が自由に動かせる兵士はいないように感じますよね。


じっさいには騎士たちは数名いて、従騎士も2、3名いるわけです。でも、フィリップの領地で自分の騎士を率いてうろうろすると警戒されてしまうし、ジェイデン自身もふだんからつきあいの多い騎士たちより当地で交友を深めたいと思っているので、彼らの出番がなかったというのが背景になります。でも、ふだんから騎士たちを出してしまうとものものしいし、ジェイデンの立場を意識しすぎる気がするんですよね……。(軽妙な会話につなげにくい)


さらに、フィリップの兵士たちはジェイデンやオスカーとともにたびたびここにやってきているので、「何度も来たことがある」のがならこの情報はべつになんの不思議もないわけです。ふだんは別行動をしていてここに来たことのないはずの騎士たちだからスーリは危機を感じたということで。


地の文でさらっとどこかに書いておこうと思いますが、説明してみてやっぱりちょっとわかりづらそうな気がしてきました。ここでは、スーリが危機を感じて手紙をチェックし、そこからジェイデンの裏切りに気づくところが肝なので、もっといい流れを思いついたら変えるかも。やや無理がのこる展開でした。

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