第25話 サバゲー大会⑤

「一つ残念なお知らせがある」



 いきなり観客を大いに盛り上げた俺達だったが、その熱狂を冷やすかのようにミギマガリからの無線が入る。



「囲まれている」



 だよねー。


 俺達の情報源は三つ。自身の視界、それから無線で共有されるチームの視界、そして観客のためのカメラの視界。


 今、注目されている俺達の戦いは複数のドローンにより中継されていた。とすると、当然、相手チームに俺達の居場所はだだれだ。サバゲーにとって、それは致命的。



「派手にやってくれたじゃねぇか!」



 アフロトカゲチームの奴らが図書館の屋上を取り囲んでいた。計五名。タマノコシが苦々しげに顔をしかめる。



「くそっ! 罠やったか」


「うん。わかっていたけどね」


「こんなアホづらしておるくせに、とんだ策士やわ」


「うーうん。見え見えだったよ」



 伸びているオッドアイを蹴ってから、タマノコシは俺と背中を合わせ死角を減らす。けれども、四方を囲まれていては、あまり意味がないかもしれない。



「どうすんの、クロやん」


「どうするって言われてもな」



 ダメもとで俺はミギマガリに尋ねてみる。



「いや、ここからじゃ当てるのは難しいな。スナイパーライフルじゃないんだぞ」


「ちょっと引き付けてくれればいい」


「一人か二人ならなんとか」


「そうか」



 それでも今よりマシ。できれば彼らの視線を奪ってくれるような目立つ出来事が起こってくれればいいのだが。


 俺達にとっては絶望的な状況だが、観客には絶好のエンターテインメントである。ここぞとばかりにピエロ仮面が口を開く。



「さぁ、一転してタマノコシのピンチ! 囲まれてしまいました! 主導するのはエレファントノーズ! アフロトカゲチームで一番の怪力野郎です! まぁ、今回は怪力関係ないですけどね! ちなみには象というよりネズミらしいです!」



 その情報いりますか? というか、下ネタすか。そっちもいけるんですか、ピエロ仮面さん。マジぱねぇす。



「これは絶体絶命か、タマノコシ! ん? あれは何だ!?」



 ピエロ仮面の驚きは自然なものだった。本当に驚いたのだろう。街灯がいとうの上に立つ人影。サバゲーというゲームにおいて、悪手としかいえないムーブをとっている。


 さかさずライトアップされる。すると、そこに立つ男。女性もののパンティを履いた半裸男の姿があらわになった。



「パンツ一枚あればいい」



 彼の声をドローンのマイクが拾う。絶対、拾う必要ないけれど。彼の声を聞いて観客から悲鳴があがる。無駄にマッチョなボディ、もっこりパンティ、そして、顔を隠すようにブラジャーがななめにかけられている。



「股間に愛を心に夢を! パンティ男爵だんしゃく登場!」



 どかん! と観客ゾーンの映像にエフェクトが入ったことであろう。実際に心の目にはエフェクトが見える。そのくらいに、派手な登場であった。


 とりあえず、ここはお約束なので、俺とタマノコシ、それだけでなく、アフロトカゲ一派、観客一同が声を揃えて突っ込んだ。



「「「変態だ!!!」」」

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