第22話 サバゲー大会②

「あいかわらずあおるのがうまいわね、あのくそピエロ。実際に裏で人身売買オークションとかやってんじゃないの?」



 Ms.パンプキンの静かな口調が無線機から流れてくる。あんな頭のおかしいかぶり物をしているのに、声はまだあどけない。そのギャップが余計に不気味さを助長じょちょうしていた。



「なぜそんな物騒なチョイスなのかは置いておくとして、まぁ、うまいのはその通りだな」


「うま過ぎてむかつくのよね。ちょっと、クロスジ、間違えたふりしてあいつに一発撃ち込んできてよ」


「やだよ。こえぇもん」


「いくじなしめ」



 なんとでも言え。誰が好きこのんで、あんなあぶなっかしい人に喧嘩を売るものか。俺は平和主義者なんだよ。オーケー?



「まぁいいわ。とりあえず今回はあのうざアフロを叩きのめすわよ」


「ヒーローが来るまでに終わらせたいから、できればシナリオ通りにって、ピエロ仮面が言っていたけど?」


「無視しなさい」


「即答かよ」



 まぁ、そこに関しては同意だけど。そもそも賭けをしているのに出来レースでは道理が通らない。


 Ms.パンプキンは、全員の回線に切り替えて告げた。



「みんな、いい? くそピエロのシナリオなんてどうせ読んでないと思うけど、そんなのまったく無視しなさい。私が許す。Ms.パンプキンの名のもとに、えばっているトカゲ共を血祭ちまつりにあげてしまいなさい」


「「「パンプキンパーティパンパ!!!」」」



 煽り上手なのはお互い様である。


 

「あ、でも、研究棟地区の中に入るのは禁止だからね。一般の実験棟は大丈夫だけど、人文学部棟のフロア2、4、7階もだめ。申請が出ているから」



 そういうところきっちりしているのが、彼女の智将ちしょうたる所以ゆえんである。冷徹で冷静。それなのに、大学構内でサバゲーしようなんて言い始める発想の豊かさも持っているのだから、最年少幹部はダテじゃない。



「ただ、人文棟の5階はこの機会にまぎれてむちゃくちゃにしてしまいなさい。徹底的に」



 ……それは何か私怨しえんが混ざってませんか?



「ところでクロスジ」



 そこで、回線が個人に切り替わる。Ms.パンプキンはこうやって同時に何人もと会話できるらしい。厩戸皇子うまやどのおうじか、と突っ込んだら、何それ? ウマ娘の親戚? と聞き返された。なので、日本人ではないのではないかともっぱらの噂である。



「あんた、前の幹部会できもアフロともめたらしいじゃない。そのせいで、私がバーテンに怒られたんだけど」


「あぁ、それはすまん。ついカッとなってやった。反省はしていない。またやる」


「いや、反省しなさいよ。頭をわよ」


こわっ! 何されるの?」


「そんなことはどうでもいいの。私が聞きたいのはその理由」


「理由?」


「オークションの日、自治会主催の展示会に戦闘員がちょっかいかけたのをとがめたのよね?」


「そうだよ。普通じゃん」


「あんた、何で展示会なんかにいたの?」


「ん?」


「展示会なんてがらじゃないでしょ」


「あー、たまたま? たまたまふらっとその辺歩いていたら、たまたま見たんだよ」


「ふーん。たまたまね。講義にもろくに出ていない不まじめ野郎が、たまたま休みの日に大学にねぇ」


「ねぇ、何でそんなこと知ってんの? プライベートでは絡みないっすよね?」



 Ms.パンプキンの素性はわからない。ただ最年少幹部だとしか。しかし、なぜか俺のことをよく知っている。もしかすると身近にいるのかもしれない。



「まぁ、いいわ。後でじっくり話を聞くから」


「えー」


「今は、あのきもアフロをぶっとばすことに集中しなさい」



 そっちが集中を乱してきたくせに。


 そう思ったわけだけど、彼女に歯向かっても時間の無駄だと、俺はヘッドギアの調整をしてから、いつものように応じた。



「オッケー。パンプキンパーティパンパ

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