第21話 サバゲー大会①

 11月も終わりとなると夜が早くなる。既にあたりは暗くなっており、大通りには街灯が申し訳程度に光っている。構内を突っ切る形で伸びる大通り。その周囲を取り囲むように建物が乱立している。


 もう少し全体を見越して設計できなかったのかと思わざるをえない乱雑さ。しかし、それが大学っぽいともいえる。


 広間はなぜか入り組んだ道の先にある。後から植えられたであろう木々と茂みが周りを囲んでおり、なかなかに景色がよい。


 

「レディース&ジェントルメーン!」



 もう夜である。いつもであれば生徒の姿など構内にはない。けれども、今日は広間に大勢の生徒が集まっていた。


 仮設のステージに、大きなディスプレイ。学生たちには見慣れたセットが展開されており、ライトアップされている。



「本日もラクダイン主催のイベントにご参加いただきありがとうございます!」



 聞こえてくるのは、よく通る男の声。派手ながらのタキシードにピエロの仮面。彼は、小慣れた様子で場の歓声を制して、言葉を繰り出す。



「本日は大イベント! 慶星大最強は俺だ! 撃ちまくれ! 秋のサバゲ―大会です!」



 同時に構内全域がライトアップされる。ディスプレイに映ったのは、プレイヤーの姿。構内を飛び回るドローンが、各地で撮影を行っているのだ。



「ルールは簡単。2チームに分かれて銃撃戦を行ってもらい、相手の大将を倒した方が勝利です。使用される弾はペイント弾。服に付着したペイント量と位置で生存判定が行われます」



 単純なサバゲーのルール。いわゆるフラッグ戦。異なるとすれば会場か。



「エリアは慶星大学全エリア! 皆さんが日頃講義を受けている教室が、研究室が、講堂が戦場となるわけです!」



 歓声があがる。サバゲ―などどこでやっても一緒だと思うかもしれないがそれは違う。知った場所だと臨場感があるのだ。知った廊下を走り去っていくプレイヤーを見て、観客は心躍らせることだろう。



「勝利したチームにはなんと100万円を贈呈します!」



 さらなる歓声。収まるのを待ってから、ピエロ仮面は続ける。



「ですが、それだけでは見ている皆さんはおもしろくありません。えぇ、そうです。これはラクダイン主催のイベントです。もちろん皆さんにもどちらのチームが勝つかを賭けていただきます!」



 ここいちばんの歓声があがる。この賭けシステムを俺は正直よくは思っていないが、いちばん人気なのは間違いない。特にピエロ仮面のきもいりなため、無碍むげにできないのだ。


 少なくともピエロ仮面の司会で今日も大盛況でイベントは進んでいく。



「それではチーム紹介を致しましょう! まずは、見た目はワイルド! 中身はデンジャラス! 男気おとこぎと野生をあわせ持つ男の中の男達! アフロトカゲチームです!」



 構内の一般実験棟の上がライトアップされる。そこにはアフロトカゲと、そのチームメイトの姿がある。演出の効果もあってやけにかっこいい。



「さて、もう一方のチームにいきましょう。智将といえばこの女! その不気味なマスクの裏でいったい何を企んでいる! 今日も私達に魔法を見せてくれるのか? Ms.パンプキンチームです!」 



 一般講義棟の頂上に光が当たる。そこにはかぼちゃヘッドの女子が大仰に椅子に座っている。その後ろに控える者達。これもこれでかっこいいのだろうか。


 

「この二チームで争っていただきます。さぁ、どちらが勝ってもおかしくない。あなたはどちらの勝利に賭けますか?」



 ピエロ仮面の煽りにより、会場は大盛り上がりである。そして、再び、オーディエンスを制して、静まったところで注目を自分に集める。


 一拍置いた後、ピエロ仮面は、パッと両手を挙げ、宣言した。



「それではゲーム開始です!」

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