第19話 秘密の作戦会議②

「何すんだ! てめぇ!」



 俺は、わめくアフロトカゲの胸倉むなぐらをつかんで、ガンとマスクしに頭突ずつきをくらわせた。



「何すんだじゃねぇよ。今日、おまえんとこの部下が展示会に邪魔に入ったぞ」


「は? 知らねぇよ。が勝手にやっただけだろ」


「幹部なら下の管理くらいちゃんとしろって言ってんだよ」


「うっせぇ。どうせ、ゴミみたいなイベントイベだったんだろ。つぶれたって別にいいだろうが」


「どんなゴミだろうと、自治会のイベントには手を出さないのがラクダインのルールだろ」

 

「ヒラがケチつけんじゃねぇよ!」



 アフロトカゲが、大声を上げて反撃してこようとしてきた。喧嘩は苦手だ。けれども、激情した奴の攻撃なんて避けるのは容易たやすい。言ってもわからないらしいし、このまま物理的にわからせてやろうか。



「はい、そこまで」



 俺とアフロトカゲがヒートアップしかけたとき、ぴたりとしたタイミングでバーテンが声を発した。



「ここで喧嘩しないでください。もラクダインのルールですよ」



 そんなルールあったか?



「まだやりますか? それでしたら、私の方も規則にのっとってを用意しますけど」


「「うっ」」



 彼女の言葉で、俺とアフロトカゲはお互いに手を離した。彼女の罰ゲームは正直しゃれにならない。そのことは、アフロトカゲと共通の見解だったらしい。


 

「いいですか?」



 騒動の合間をって声があがる。ピエロ仮面が立ち上がって、こちらを向いていた。



「オークションは私とアフロトカゲくんで主催したものです。なので、私にも非があります。申し訳ありません。その違反者達は、私が探し出して処分しておきましょう。それでこの一件はおさめませんか」



 俺は、ピエロ仮面の大げさな動きを見届けてから、ふんとなるべくそっけなく顔をそむけた。



「いいよ。俺も手荒な真似をしてわるかった」


「いえいえ。アフロトカゲくんが先にあおってましたからね。おあいこですよ」



 何でピエロさんが答えるんすか、とアフロトカゲが毒づくが、それ以上にむし返すことはなかった。代わりにピエロ仮面が話を続けた。



「それにしてもクロスジくんは正義感が強いですね。まるでヒーローのようです」


「やめてくれよ。ヒーローだなんて最悪だ」


「えぇ、最悪です。今日もヒーローに邪魔されましたからね。もういっそのこと退のもありではないかと思いますよ」


「ピエロ仮面がそう言うとマジみたいだから怖いな」


「ははは、そうですか? 私はクロスジさんに期待しているのですがね」


「その期待には答えられないと思うけど、ヒーローを一回ぶっとばしてやりたいとは思ってるよ」


「その意気です。こんな優秀な部下をもって、Ms.パンプキンさんが羨ましいですね」


「ぜんぜん心こもってないんだけど」



 あとミスとさんがかぶっちゃっているから。まぁ、ピエロ仮面のキャラ付けでは仕方ないんだけどさ。言わないけど。


 

「はい。それじゃいいですか。そろそろ作戦会議を始めますよ」



 バーテンの仕切りで、やっと話が進んだ。明日の作戦はかなり大規模なものだ。きっと今日は帰れないだろう。やれやれと俺はカウンターの席に座った。

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