第13話 ヒーローショー①
「それでこの集まりだったのか」
俺は外に出て、一般講義棟前の大通りを見下ろした。道路の中央には桜の木が植えてあり春にはきれいに咲いている。しかし秋はただの寂しい裸の木。それはそれで
ただ、そんな秋の静けさは今はない。
あるのは
「レディース&ジェントルメーン! ラクダイン
仮設されたステージ。そこに立つピエロ仮面の男が、盛大に
「では、さっそくいきましょう! 一点目はガバガバちゃんの”ケダモノふれんず”です。五千ダインから!」
誰が何を描いているんだ。怒られるぞ。
「一万ダイン! 一万五千! 二万!」
入札が活発だね。すっごい欲しいんだね。
仮設ステージの上にある大型スクリーンに絵が映し出される。だが、そんなに大きく展示してよいものか。ケモミミ女子のあられもない姿がそこに映っていた。いや、でも、すごいな。これを描いた奴はわかっている。いや、何がとは言わないけれど。
「ねぇ、トーシロ。見過ぎじゃない?」
「ん? いや見てないよ。こう、ぼーっと全体を見てる」
「ん!」
「痛っ!」
良子はがんと足を踏むと、いらっとした顔を俺に向けた後、同じくらいの怒り度で、ステージの方を睨みつけ、
「
と
「良子もあいつらを知っているのか?」
「半年もこの大学に通っていればね」
良子は
「秘密結社ラクダイン」
そんなふうに言うと大きな組織のように思えるが、実際には、
基本的に、慶星大学では自治会の許可なしにイベントはできない。だが、自治会が関与するとどうしても検閲が入る。これは、まぁ、仕方がない。
そこで立ち上げられたのが、秘密結社ラクダイン。
エロやグロ、危険だなどという理由で自治会から認可を得られなかったイベントを強行する。それだけの組織だ。もちろん非認可の組織なので自治会から目をつけられている。
「どうしてあんなくだらないことをするのかしら? 理解に苦しむわ」
「理由はさっき部員達が言っていたろ。自治会の検閲が厳し過ぎるんだよ。不満を持つ奴らがあーやって反発している」
「だったら自治会に文句を言えばいいじゃない」
「言ってどうにかなる問題じゃないだろ。自治会の権力はそのくらい大きい」
「何よ。トーシロは
「別に。あんなのに興味ないよ」
「ふーん。ほんとでしょうね」
「俺はバイトで忙しいんだ。大学のいざこざに関わっている
「それはそれでどうかと思うけど」
俺がテキトーに応えると、良子は少しほっとしたようだった。しかし、どうもラクダインが嫌いのようで、階段の下で熱狂するオークションを見下ろしながら、ひたすら
「そんなに
「そうだけど、遅くない? いったいどこで
苛々と
「ごめん、トーシロ、私、ちょっと、その、お腹が!」
「ん? 減ったの? 食べ行く?」
「そうじゃなくて! 痛いの! トイレ行ってくる!」
そんな大きな声で言わんでも。女の子はもう少し恥じらいを、と思ったけれど、そういうのも古くさい考えなのかしらね。俺は、急いで走っていく良子の後ろ姿に、いっといれ、と手を振った。
良子が戻ってきたら、飯にでも行こうか。いや、お腹が痛い女子はその後にすぐ飯を食べるだろうか。もう帰りたいかもしれない。だったら、送って帰って、その後、俺は牛丼でも食べに行こうか。
俺は、非認可オークションを見下ろしながら、
「ほら、噂をすればやってきた」
オークションが
「そこまでよ! ラクダイン! 私がやってきたからにはもう好きはさせない!」
タイトな全身スーツコス。青色で、青色で、青色な、とにかく青いその全身スーツ女子は、華麗なポーズをとってから、よく通る声で告げた。
「自治会戦隊ホシレンジャー! ブルー参上! 私が正義である限り、
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