第12話 元ヤン幼馴染とデート④
「何で俺の作品が展示できないんだよ!」
ハル先輩がため息をつきつつ走っていったので、俺達は思わず後を追った。
向かった先では、ちょっとした騒動が起きていた。数人の男女が、一人のスタッフを問い
「そんなこと私に言われましても」
「おまえら自治会が
「いえ、私は今日受付で来ただけで絵の選定はしていませんから」
「そんな言い訳が
いや、通るだろ。頭に血が
詰め寄っている奴らは、自らの作品を
「俺はな! この作品に命を込めているんだよ。なのに、ちょっと過激だからって展示できないって何だよ! そんなのおまえらの主観じゃねぇか!」
なるほど。絵が過激だったから、展示できなかったというわけか。個展ならばまだしも、自治会主催の展示会では検閲があるのは仕方ないだろうが、納得できない気持ちもわかる。
彼は作品をバッと見せながら
「なぁ、教えてくれ。何で、俺の”
いや、だめだろ。
「いや、これはだめでしょ」
自治会スタッフもやけに冷たい目をして同じことを言った。この女性スタッフの気持ちはわかる。そこに
次に自治会スタッフに詰め寄ったのは女だった。
「そっちのド変態イラストはわかるけど、私のはどうしてだめなのよ! 私の”地獄の
うん、BLだね。BL自体はわるくないけどね。
「これは、だめです。けど、一枚写真いいですか?」
自治会スタッフは、いささか苦しそうに告げた。もしかすると同類なのかもしれない。とりあえず、
さらに割って入ったのは、短髪の男だった。
「どっちもどっちじゃないですか。エロが規制されるのはわかります。けれども、僕のは違うじゃないですか。僕の”新訳ももたろう~鬼が島の
主張は立派だけど。
「あの、私、血はちょっと」
目の前にさらされた絵から、自治会スタッフはめいっぱい顔を
それぞれの主張を胸に詰め寄る美術部員達に
「こらこら、君達。この子に言っても仕方ないでしょ」
「ですけど、部長! 俺達、納得できないっすよ!」
「この件については散々話し合ったじゃない。だいたい検閲の会議には私も参加している。文句なら私に言いなさい」
「部長だって文句たらたらだったじゃないっすか! ”ハーピィお姉さんのショタっ子ゴブリン性育日記”が検閲にかかったとき、自治会の奴らの穴という穴を〇してやる! ってぶち切れてたでしょ!」
え? 何その欲望に
「仕方ないわ。私達は先にいき過ぎている。世の中が亜人オネショタを受け入れるのはまだ先なのよ」
来ねぇよ、そんな日は。
ハル先輩が仲介に入って、美術部員は少しだけ落ち着いたようで一歩だけ引いた。しかし、まだ収まらないらしく、美術部員は声を荒げる。
「でも、納得できないですよ、俺」
「そんなこと言わない」
「くそっ! やっぱり自治会はだめだ。こうなったら秘密結社の方に」
「こら、自治会の前で
美術部員の発言を、ハル先輩は
「もう、遅いっすよ」
「え?」
「俺、頼みましたから、秘密結社ラクダインに!」
次の瞬間、外で大きな音が鳴った。
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