第10話 元ヤン幼馴染とデート②
それから、良子とはちょくちょく会うようになった。家が近いこともある。大学も一緒なのだから不思議ではない。ただ原付きを見せたのが一番の理由だ。完全に足として使われている。この前などは、友達と遊びに行くから、近くまで連れて行ってだと。もちろん、めちゃくちゃ嫌な顔をしてやった。まぁ、連れて行ったけど。いや、あれだよ。たまたま近くに用事があったからだよ。
そろそろガソリン代を
「自分の
「嫌。だって
これである。とんだお
たこ焼き機をもって、うれしそうにやってきたのは一時間ほど前のことだ。これでたこ焼きパーティしよう。そう言ってから、今に
「うふふ。たこパやりたかったんだ」
「友達とやれよ」
「友達じゃん」
「女の」
「やるよ。でも、一度練習しておきたいでしょ」
「俺は練習台か」
「そうそう。いろいろ買ってきたから。ウィンナーとか、チーズとか。あと、ポテチとチョコとキムチとピーナッツと、マシュマロ」
「また微妙なところを。ただマシュマロはやめよう」
「え? もう入れたよ?」
「何で一番なんだよ。まずはタコを入れなさいよ」
「タコは買い忘れました」
「何パーティだったか思い出して?」
家庭でやるたこパでの、たこ焼きの中にタコ入っていない率は確かに高いけれども。ついに、たこ焼きってネーミングを考え直すときが来たのかもしれない。そうでないと、いずれ、ねぇ、ママ、たこ焼きのたこって何? と聞く子供達が生まれることだろう。
「ほら、できたよ。どうぞ、召し上がれ」
「味見をしろよ」
「トーシロがするでしょ」
「おまえ、普段料理しないだろ」
たこ焼きの作り方は調べてきたらしく、
しかし入っているのはマシュマロだからな。ちょっとはみ出しているし。
えーい、ままよ。
「どう?」
「あー、甘い」
「マシュマロだからね」
「マシュマロ感はない」
「溶けているからね」
「正直、塩気と甘みで何食ってんのかわからないけれど、わりとおいしい」
「へー、意外。絶対無理だと思っていた」
「おい」
「えへへ」
「ただ、たこ焼きに入れないで、普通に焼きマシュマロにした方がおいしいんじゃないかと思う」
「あ、それ、あり! あとでやろ!」
その後、チョコやらイチゴやら、スイーツシリーズが続き、飯食ってんだかおやつ食ってんだかわからんといったかんじだったが、味はさほどわるくなかった。たこ焼きというプラットフォームの偉大さに気づく一方で、やはり、タコが入っているのも一個は食べたい。
良子は、自分の皿に出来のいいたこ焼きを積み上げて、スマホで写真を撮っていた。生クリームで周りをデコるセンスについては
「そういえばさ、週末って用事ある?」
「ん? 今のところないけど、バイト先が忙しくなったら、いかなきゃいけないかも」
「じゃ、ないのね」
「話聞いてた?」
「週末、構内で絵画展があるの。知っている?」
「いや、知らん」
「そっか。大学のHPにも載せてるんだけどな」
「良子、絵に興味あるのか?」
「え? あー、うーん。ないかあるかで言えばあるかな。ほら、ピカソとか、シンパシー感じるし」
「そーか。大変だな」
ピカソ先生とか、いちばんやばい人にシンパシー感じるとか、相当生きづらいだろうなと俺は心の中で突っ込みをしつつ、まぁ、嘘だろうなと決め打っていた。
「一緒に行かない?」
「うーん、俺はあんまり興味ないんだけど」
「行こうよ。ほら、今日たこ焼き作ってあげたじゃん」
「これ、対価いるの? 材料費は俺が出したのに?」
「あのね。材料費だけで食べられるお店なんてないんだよ」
それはそうだけど、今言われるのは絶対違うと思うんだけど。
「わかったよ。ただ途中でバイトの呼び出しあったら行くかもしれないぞ」
「オッケー。じゃ、朝来るから乗せてってね」
朝から行くのか。面倒だなと思いつつも、良子がにこっと笑うと何も言えなくなる。昔からこいつは、そうやって人を使うのがうまい女だった。中学時代も、なんやかんやでこき使われたことを思い出し、俺は
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