第9話 そんな…… ドニ視点(3)

「はぁ、とことんおめでたいヤツだな。頭を使えば解決できると、本気で思ってやがる」


 思考回路が悲鳴をあげる寸前まで頭を酷使していたら、大きなため息と嘲笑がやって来た。


「ドニ・リートアル。お前は彼女に、どんなことをした? あの日自分がやったことを、分かっていないのか?」

「分かっているとも――分かっております!! だからこそ心より反省と後悔をしっ、こうしてまずは誠意を伝えようとしたのです!」


 地面に落ちている100本の薔薇と、300万もする指輪が入った箱。それらを一瞥して、再び顔を上げる。

 そうして――


「だか」

「だからこそ、まずは誠意を? 違うだろ? おかしいだろ、それは」


 更に続けようとした俺の声は、低くなった声に遮られてしまった。


「なあ、ドニ・リートアル。お前は反省と後悔を、したんだよな?」

「あ、ああ――ええっ! しております!」

「だったらよ、どうして『まず』なんて言えるんだ? 『説明もなしに一方的に婚約を解消する』『その際には、選択ミスの挽回などと暴言を吐く』――。こんなことをしておいて、どうして関係を修復しようと思うんだ?」

「そっ、それは! さっき申し上げたようにっ、真に愛する人だと気付いたからでっ! 今度こそリゼットを幸せにしたいと強く思ったからで」

「違うな。アンタは、自分が幸せになりたいだけだ」


 また遮られて、っっ! さっきよりも更に低く、鋭さが増した声になった……。


「兄さんと義姉さんの時と、おんなじだ。自分が愛したいからそうしているだけで、相手の気持ちなんてどうでもいい。押し付けなんだよ、それは」

「そうじゃない!! 俺は愛する人にっ、世界一の幸せを与えてやりたくて――」

「そう、それだ。そいつが、その証なんだよ」


 それが、あかし……? なにを、言って……?


「『与えてやりたくて』。なんなんだ、その上から目線は? 幸せってのは、ものなのか?」

「こ、これはっ! 言葉のアヤのようなもので――」

「言葉のアヤでも、ついでも、本当にその人を想ってるんなら出るはずがないんだよ。大切な人を下に見るような言葉はな」

「っ、それは貴方の私見でしょう!? 真実を語ったような素振りはやめていただきたい!!」


 こんなの、揚げ足取りだ! リゼットが更に幻滅してしまうように、俺を利用しているだけだ!!


「恋にはっ、愛には様々な形があるのですよ!! 俺の感情に余計な口を挟まないでいただきたい!!」

「…………そうか。ま、そうだよな。会話で解決できるようなヤツなら、こうなってはいないよな」

「なっ、何をブツブツ言っているのですか!! ご理解いただけたのであればっ、そこをおどきください!! 俺は俺の方法で、リゼットを幸せにするべく関係修復の術を――なっ!? なんなのですかこれは!?」


 突如大柄の男が5人現れ、あっという間に取り囲まれてしまった。

 な、なんなんだ!?

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