魔獣掃除人編

騎士団

 〜3年後〜


【リオナ=ベルガード】



 アルがアトラス王国を旅立ってから3年の月日が経過していた。

 あれから音沙汰は一度もなく、アルが現在どこで何をしているのか私には知るよしもなかった。

 それでも不安になることはなかった。

 私がすべきことは変わらない。

 いつかアルが帰ってきた時のために自身の力を磨くこと。

 この3年間、相棒バディのレベルを上げることに専念し、神獣を用いた戦い方のコンビネーションや動き方というものを学んできた。

 一切手を抜くことなく邁進してきた……と思う。


「リオナ副長、団長がお呼びです」

「うん、ありがと」


 団長とはお父さんのことだ。

 王国警護騎士団団長。

 騎士団の中では父娘という垣根は無くし、一介の上司と部下という立場になる。

 それはお父さんからも直接言われたことだし、兄さん達も同じ扱いのため変わらない。


 そして今の私は王国警護騎士団第五番騎士隊副隊長という地位にいる。

 一〜五隊に分かれた騎士団のうちの一つ、そこの副隊長だ。

 騎士団に入団してから僅か3年で副隊長に上がるのは異例のスピードということで当初は親のコネだと言われもしたけど、模擬戦や魔物討伐の中で実力を見せることでそれなりの信用は得ることはできたと思う。


 これも一重にレオのおかげなんだけどね。

 レオのステータスも昔に比べてだいぶ良くなった。


 私はカードを手元に召喚した。



 ───────────────



純白の獅子神ブライダル・レオニダス】☆☆☆☆☆ Lv18


 ○攻撃力:3100

 ○防御力:2100

 ○素早さ:1800

 ○特殊能力:1400


 スキル:『自動回復オートヒール』『咆哮シャウト



 ────────────────


 防御、素早さ、特殊能力はあまり変わらないけど、攻撃力の伸びが異様に高い。

 ほとんどの魔物なら一撃でほふれる。

 神獣は申し分ないから、後は副隊長として部隊の指揮を執るための戦略を学んでいる途中になる。

 そしてそれは最近になって急務の課題となった。


「失礼します」


 私は団長室をノックし中へ入った。

 正面の席にお父さんが書類と睨めっこしながら座っていた。


「リオナか。少し問題が発生した。早急に対処してほしい案件だ」

「もしかして…………フォース国絡みですか?」

「ああ」


 実力主義国家フォース。

 私達アトラス王国の隣国に当たる国であり、血筋による王政を敷く私達とは異なり、最も神獣の強い者が代表を務める特異な国だ。

 元々は小さな冒険者達の集いだったみたいだけど、強い人の元には人脈が集う。

 そうして膨れ上がったコミニュティはやがて国家を形成した。

 他の国と比べると歴史は短く、建国してから30年ほどしか経っていないけどその勢いは凄まじく、元々私達の隣にあった国を潰してついには隣国となった。

 そして昨今になって国境沿いにおいて小競り合いが起きているんだ。


「国境近くにあるアイトヴェン町。その近くにある森林地帯において見慣れない魔物が散見されている。生半可な強さではなく、傭兵や憲兵では対処出来ないということで町長から直接要請を受けた。先に入っている情報では…………フォース国の奴らが放った魔物なのではないかと」

「どうしてそこまで争いを生むようなことをしたがるの?」

「戦争をするための口実を探しているんだよ、奴らは」

「なんでそんなことを…………」

「奴らは基本的に自分の神獣を強くすることしか考えちゃいない。手取り早く神獣を上げるのに必要なものは何だと思う?」


 神獣が大きく経験値を得ることができるのは、討伐した対象の魂が大きいとき。つまり…………。


「神獣を倒した時……?」

「ああ。そして、他国との戦争時においては神獣の殺し合いが当然発生する。かくいう私も戦時中の戦いにおいて相棒バディをここまでレベルアップさせた。フォースの奴らは正当な理由を持ってして戦争を仕掛けようとしているんだ」

「気分悪いよ…………戦争なんてしちゃいけないのに」

「リオナの言う通りだ。相手の挑発に乗って戦争が始まれば多くの人が苦しみ、そうして情勢が悪くなった時に危惧しなければならないのは…………魔獣の存在だ」


 魔獣。

 3年前にアルのお父さんを殺した悪魔。

 人の心に負荷がかけられ、闇に呑まれた時に現れる世界滅亡の可能性。

 アルはそんな魔獣が現れた時に討伐する者としての使命を負い、世界へと旅立った。


「リオナ達には森林地帯で現れるという魔物の調査を行い、討伐を行なってもらいたい」

「隊長じゃなくて私でいいの?」

「アナクロスには別件を扱ってもらう。2部隊を率いて明日には出発を頼む」

「うん、分かった」


 一つの隊に団員は約20名いる。

 神獣を用いる戦いの場合、人数が多すぎると神獣の強さによっては味方にも被害が被る場合があるため、基本的には五人一組で1部隊としている。

 つまり、今回の任務では10名を連れて討伐に向かってほしいということだ。


 私は団長室を出て、すぐに五番隊の団員に招集をかけた。

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