0ツ星と五ツ星
しばらく発散し続けた俺は少しづつ落ち着きを取り戻し、改めてリオナに泣きついている状況が恥ずかしく思えるぐらいには落ち着いた。
「あっと……わ、悪いリオナ、取り乱しすぎて…………」
「ううん、もう大丈夫?」
「も、もう大丈夫。問題ないから、落ち着いたから」
そう言って俺はリオナから離れた。
「お前もありがとな」
「クァ〜……」
ナナドラもずっと一緒にいてくれたが、なんのことか分からないと言わんばかりにアクビをしていた。
神獣というのは癒やしキャラでもあるのかね。
「ナナちゃんも自分の
「ナナちゃん?」
「ナナドラだからナナちゃん!」
「さいですか……」
勝手に愛称をつけられているが、当のナナドラはリオナに抱えられて満足そうに目を細めているから良しとするべきなのか。
「それにしてもアルはずっとナナちゃんを出しっぱなしにしてるけど心の力は大丈夫なの?確か顕現し続けている間も消費するから、最初の頃は長時間の顕現は難しいって学んだけど」
「確かに最初に出てきてから一度もカードに収納してないけど平気だな。0ツ星であまりに弱すぎるから消費量も少ないんじゃないか?」
「そうなのかなぁ」
体に特に疲労感は見られない。
あまりのショックでカードに収納することすら忘れていたが、本来は不必要な顕現は避けるようにと学園でも教わっていたし、父さんからも忠告は受けていた。
まぁ0ツ星なんて前例がないみたいだから、これらの前情報はあまり参考にならないのかもしれないが。
「リオナの相棒、改めて見せてくれよ」
「えっ……」
「俺に気を遣う必要はないぞ。リオナが五ツ星の神獣を召喚できたことは嬉しいことだって本気で思ってるんだ。だからちゃんと見ておきたい」
「…………うん、分かった!」
リオナが右手を胸の前に持ってきて祈るように集中すると、光が集まりカードが右手に現れた。
「〝
掛け声とともにカードから光が放たれ、リオナの神々しい神獣が現れる。
威風堂々とした姿に煌びやかな銀色の立髪を要する獅子、【
「やっぱ威圧感スゲェな…………」
「でも凄く良い子だよ」
ナナドラがパタパタと必死に飛んでレオニダスの背中に乗っかったが、振り落とすことなくそのまま立っている。
「確か……空になったカードを透かして見れば相手の神獣のレベルやレアリティが分かるんだよな」
「そうだね。先生が前に話してたよ」
俺はカードを手元に召喚した。
本来はナナドラの姿やステータスが記載されているが、ナナドラは顕現されているためカードは透明のケースのようになっている。
カード越しにレオニダスを覗くと【純白の獅子神】と言う名前と一緒にレアリティとレベル、さらにステータスが表示されていた。
スキルまでは表示されていないようだ。
「ステータスが分かるだけで相手の実力を推し量れるよな」
「それに自分も神獣を顕現させていないと相手のレベルが分からないっていうのも駆け引きの一つだよね。何度も神獣を出し入れはできないし」
「…………やっぱりリオナは騎士団に所属か?」
レオニダスを見ると、やはり俺との格差を大きく実感する。
きっとリオナは色んなところから勧誘を受けているはずだが、当初の選択肢は騎士団か冒険者だ。
だが恐らく、冒険者という選択肢はないだろう。
「うん……。アルと一緒に入れないなら冒険者がいいって思ったんだけど…………」
「上の人達がそれは許してくれないんだろ?」
「うん…………」
国家最高戦力に匹敵する五ツ星。
そんな逸材を国が冒険者として自由にさせるわけがない。
騎士団のような国の庇護下に置いて、今後はレベル上げをメインに大事に育てられていくだろう。
当然予想されたことだ。
「そうなると騎士団一択だよなぁ」
「でもアルは?アルはどうするの?」
「俺は…………」
ロートルおじさんは、たとえ低レアリティでも多少ゴリ押しでねじ込めると話していたが、さすがに0ツ星は予想していなかっただろう。
いくら剣術に秀でていても、エリート集団である騎士団の中に0ツ星の人間が入り込める余地はないはずだ。
そんな軋轢を生むような、不満が溜まるようなことをしてロートルおじさんに迷惑をかけたいとも思わない。
「現時点ではなんとも言えないな。神獣を使わない職業───露店売りでも始めるか」
ハハハと冗談混じりに話したが、リオナはあまり納得がいっていないようで顔をしかめていた。
「……そんな顔するなよ。何が適正あるか分からないんだ。これから色々と試していくことにするよ」
「ねぇアル……昔、初めてアルと出会った時の頃……ここで魔物に襲われた時のこと覚えてる?」
リオナが言っているのは10年ほど前、俺が父さんに連れられロートルおじさんの所へ来た時、リオナに初めて会ってここで遊んでいた時のことだ。
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