第16話 指折り損のくたびれ儲け

「突き指しちゃった⭐︎あまりにも痛すぎてか弱い私は泣いちゃいかも。だって涙が出ちゃう、女の子だもん。」

『目をウルウルさせてぴえんの顔文字のモノマネしてるの?コモドドラゴンの目にしか見たないわよ?』

「私そんなに目がキマッてる??」

『笑顔で車道の真ん中歩いてそうな目をしてるわよ。』

「薬中以前に異常者じゃん。」

『奈緒みたいな人が街を汚すのよね。』

「血痕とかで?完全に私は一回轢かれたよね?」

『クラスでは授業中の居眠り常習犯として認知されて既に引かれてるわよ。』

「うん、その引かれ方は私知らない。でも、なんだろ。車に轢かれたレベルのダメージを精神に受けたよ。」

『奈緒が引かれるのは平常運転よ。台風来ても動く小田急線みたいなものよ。』

「確かに災害が起きても小田急線は止まらないよね。社会人泣かせとも言えるけど。」

『奈緒が居眠りしようが薬キメてようが、世界は変わらず回ってるのよ。』

「サラリと私が薬やってる感じになってるけど、やってないからね。何処にでもいるか弱い女子高生だからね私。」

『普通の女子高生は早弁するために学校にウーバーイーツを頼まないのよ。』

「今朝は何も食べてなかったんだ。たまたま近くにパートナーがいて、ラーメンを注文できたのがいけないんだ。」

『横浜家だったわよね?一限と二限の間の15分でラーメンきて、平らげてクラス中をラーメン臭に包んで世界史の授業に突入した際には誰もが授業頭に入ってなかったわよ。チンギスハンとかフビライハンとか中華料理名にしか聞こえなかったわよ。モンゴルの偉人なのに。』

「今日の私の失態は良いじゃん!というか何処まで話外れるの!?」

『外れすぎて元のレール分からないけど何の話してたんだっけ?』

「突き指だよ!か弱い私が突き指しちゃったんだよ!」

『そうね、お気の毒に。』

「待って!もっと言うことあるでしょ!」

『今朝来てたウーバーイーツのお兄さん、阿部サダヲみたいで格好良かったわね。』

「ちっがーーーう!!!!あと、阿部サダヲ似なら格好良くないわ!」

『それも失礼かと思うわよ。』

「親友の突き指だよ?言うことないの!?感じることないの!?」

『奈緒の突き指なんて気にして何のメリットがあるのよ。TVの食レポでチーズインハンバーグ食べて、"ハンバーグとチーズを一緒に食べたみたいですー。"って感想言うモデルくらいしょうもないわね。』

「そんなに私の突き指は価値が無いの!?」

『アイドル番組なのにMCのお笑い芸人だけがヒューチャーされる謎回があるじゃない?それと同じくらい興味無いわね。』

「具体的だね!私への興味の無さ度合いがしっかり分かるな!ヤバっ!泣きそう!」

『奈緒の突き指を気にするぐらいなら、夜空に見える星を数えた方が余程有意義に過ごせると思うのよね。』

「なんでちょっとロマンティックなの?ちゃん美優のような感情を失ったポンコツロボットの口からそんな言葉が出るなんて。」

『なるほど、今回は口論をお望みなのね。』

「いや、突き指したからその理由を聞いて欲しかったのに、なんでこんな遠くまで来ちゃうかな。偶々町田で川を見つけて辿っていったら江ノ島に出ちゃったみたいな感じだよ。」

『その例えも神奈川県民以外に分かるのかしら。』

「私に興味持とうよ!」

『奈緒より、消えかけている第七世代のお笑い芸人さんの行末の方が興味あるわね。三、四年しか経ってないのにこんなに勢いって死ぬのね。』

「やめてあげて!死体蹴りはやめてあげて!」

『まだ死んで無いわよ第七世代。半透明レベルの生気だけど。』

「お笑い第七世代より、目の前に私と言うJK第七世代がいるじゃん!」

『確かに、学校にウーバーイーツ呼ぶのは新しいわね。』

「次は周囲の迷惑が掛からないように、あまり臭わない寿司を頼むよ。」

『学校自体への迷惑を考えなさい!』

「突き指して箸握れないんだもんーーー!お弁当持ってけないんだよ!?」

『ウーバーイーツは食べさせてくれるサービスはしてないのよ!というか今日は痛みを我慢して割り箸使ってラーメン食べてたじゃない!』

「昨日、腕立て伏せを指一本でしようとしたらバキッて音と共に激痛が生じたの!そして私はそのまま地へひっくり返ってたの。でも、思ったより指動かせたんだよね。」

『ねえ、そんなしょうもない理由で突き指したの?というか突き指って言うのかしら?そして、そんなしょうもない理由で1700文字も使ったの?』

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