第22話

一度召喚に成功したゾンビは、それ以降、運の消費なく、自由にカードから出し入れ出来た。そして、僕の命令は必ず守った。ゾンビには、二人を襲わないことを約束させた。


今、そのゾンビに廊下の掃除を任せている。その様子を腕を組んで、離れて見ていたネムと鮎貝。早速、新しい玩具(ゾンビ)で遊び始めた。


「あら、ゾンビ~。ちゃんと働いてるぅ? 相っ変わらず、顔色の悪い子ねぇ~。…………まぁ、いいわ。 私達は、これからお城で舞踏会だからしっかり終わらせるのよ。いいわね? サボったら、夕飯抜きだから!! さぁさぁ、行きましょ! お姉様」


「そうですね。ネムさんのドレス、とっても素敵ね。似合ってるわ」


「いえいえ、お姉様ほどではありません。あの王子も姉様の美貌には、メロメロになるはずです」


『アァ~~、アァ~~』


………………ってか、いつまでやってんの? この茶番。


召喚から二時間以上経つよ? 暇人過ぎるだろ。


二人に遊ばれるゾンビが、哀れに思えた。


………………………。

…………………。

……………。


玩具をやっと手放した二人を連れ、リビングでミーティング。


「色々考えたんだけどさ、有力候補はこの三枚。本命は、コイツかな」


「ふ~ん。まぁ…………妥当な線だよね~。今度のレース、芝とダートどっちだっけ?」


「…………配当、少ないかも」


「こっちは、命懸けなんだよ!! 頼むから、真面目にやってくれ………」


一人目は、懸賞金2000ルックの闇商人 バンバ・オサ。

ふた……二体目は、懸賞金3000ルックのブラックゴブリン。

三人目が、懸賞金3500ルックの堕天使ミリア。


今の運の量から計算して、ゾンビの十倍までなら大丈夫だろう。つまり、闇商人とゴブリンの召喚なら死なずに出来るはず。

堕天使で、ギリギリ……アウト…か?


「よし、決めたっ! 闇商人を召喚する。ネムと鮎貝は、危ないから離れてて」


「うん。分かったぁ」


「……無理しないでください」


闇商人のカードを持ち、見つめる。震えている左手を右手でしっかりと支えた。


シュゥゥーーー!!


始まった。運が、カードに吸われていく。


それに伴い、カードから闇商人が現れ始める。カードから召喚した商人は、辺りをキョロキョロ見回していた。


「……………あれ?」


カードが、手から離れない。それだけでなく、まだ運が凄い勢いで吸われていた。


「えっ、えっ、何!? どうして」


ネムと鮎貝も慌てて、カードを僕の手から剥がそうとしたが、逆にカードの不思議な力に弾き飛ばされた。


「あのっ! ! このカードから今出てきましたよね!?」


「そうだけど……キミは、誰かしら?」


「かしら? えっ、いや、呑気に自己紹介してる場合じゃない!」


「怒りっぽいわね~。でも可愛い顔してる」


僕に近づく小太りの男。いきなり、頬を撫でてきた。


「な、なんだ、あんた!! ってか、ヤバイヤバイ。運が底をつく」


その時、カードから小学生くらいの年齢の少女がヌルッと出てきた。



そして、やっとーーー。


カードは、手から離れた。


「はぁ………はぁ……ぁ…はぁ……し、死ぬかと……思った………」


闇商人より、明らかにこの謎の少女の方に大量の運を喰われていた。


「そっかぁ。坊やは、勘違いしてたのね。私は、商人だから一番のお気に入りは、常に側に置いてるの。まぁ、この子は非売品なんだけど」


そう言って、少女の頭を優しく撫でるオヤジ。少女は目を閉じ、気持ち良さそうにしていた。



ネムが、耳元で囁く。


「あの子……生物兵器のララだよ。世界大戦で最大の犠牲を出した激ヤバい奴」


「は? 生物兵器?」


「現在の懸賞金は確か、20000ルック。これから、もっともっと額は上がるはずだよ」


情けないことに、また気絶してしまった。

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