第23話
私は、化け物ーーーー。
醜悪な本当の私が、今もワタシを紐で操っているだけ。
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冷たい雨が降っていた。傘は持っていたけど、私は濡れることを選択した。
「どうした? 風邪引くぞ」
この中学で、初めて私を拒絶しない人に出会った。前田さん………。彼の傘の中は、とっても温かくて……涙が溢れた。泣くことしか出来なかった。
「私と…いると……あなたも不幸になっちゃうから……だから……」
「不幸ってさ、一人だとなかなか抜け出せないだろ? でも二人なら、何とかなるかもしれない。いつでも手を貸すから。だから、大丈夫だよ。心配するな」
「私は……あなたを助けられない……」
体から漏れだすタールのようにねっとりとした黒い自分が、彼の体を容赦なく包み込む。
やめてっ!!
彼だけは、不幸にしないで。
何でもする。だから………彼だけは……助けて……。
お願い………。
闇の中。それでも彼は、絶対に傘から手を離さなかった。体はガクガク震え、もう話すことさえ出来ない。
「どうし…て……?」
あなたは、こんなにーーー。
震えている彼の手を両手で握り、一緒に傘を支えた。氷のように冷たい手……。
「もう逃げない」
初めて、真っ黒な自分を正面から睨み付けた。
絶対に、この手は離さない。
離したくない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
気絶した彼は、悪夢にうなされていた。
「大丈夫。大丈夫だよ……」
しばらく彼の頭を撫でていると、やっと落ち着いた。
「代わろうか? 疲れたでしょ?」
ちょこんとソファーに座っていたネムちゃんが、心配そうにチラチラこっちを見ている。
「ネムちゃんも、こっちに来て」
反対の手でネムちゃんの小さい頭を撫でた。
「いい子、いい子。優しい……いい子」
「みゅぅ…………鮎ちゃんの手、あったかいから好きぃ……」
「私も好き」
前田さん。
あなたのおかげで。
やっと雨がやんだよ。
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